その7
【おねーちゃん】 早速お友達が出来てるみたいで、お姉ちゃん嬉しいわ。
【史勇】 男の方だったら友達じゃないし、女の方だったらまだそこまでいってないと思うんだが。
その日の夜、オレは姉とケータイのメッセンジャーでやりとりをした。本当は昨日のうちに色々と言っておきたかったが、入学式以後色々ありすぎて、とてもじゃないが姉に伝える暇を取れなかった。
【おねーちゃん】だけど、まさか女の子になっちゃうなんて思わなかったわ。
【史勇】オレだってこんな事になるなんて思っていなかったよ。
【おねーちゃん】可愛いからいいじゃない。写真見せてもらったけれど、女の子になっても私の好みよ。
正直、褒められても嬉しくない。オレが男だからと言うのもあるが、姉はオレがわかるくらいにオレに対して甘いからだ。
姉は人型ロボットの研究者で、あと何十年はかかるだろうと言われていた人型ロボットの実用化を、姉が学生の時に成し遂げた。だから二十七歳という若さながら、姉は世界的な権威となっている。
そのためオレが幼い時から講演やら何やらで世界を駆け巡っており、家にいない事が多かった。だがたまに家に帰ってきた時が、オレにとって悪い意味でたまらないものだった。
大量のお土産、それも何に使うかわからないようなものをくれるのはまだマシな方で、オレの宿題を全て代わりにやろうとしたり、オレの通学を憂慮して護衛用のドローンを飛ばそうとしたりした事もある。もちろん全部断った。
酷い時はオレが風呂に入っていた時に、「身体を洗ってあげる」とか言い出して全裸で風呂場に入ってきた事もあった。当時のオレは十歳で、当然ながら姉とはいえ女性の裸に対してそういう目で見られるようになっていたから、本気で困って慌てて追い出した。
とはいえ両親の過保護から解放してくれたのも、オレをこの学園に行くように勧めたのも姉だ。その事については感謝している。
【おねーちゃん】でも、おかげでこっちではちょっと予定変更が必要だわ。
【史勇】どういう事だ?
【おねーちゃん】今はまだ秘密。話せる時になったら話してあげる。
一体何を企んでいるんだ。オレにとって良い事であればいいが、そうじゃない可能性の方が高い。だいたいオレの性別が変わった事で変えなきゃいけない予定って何だ。嫌な予感しかしない。
【おねーちゃん】ところで、女の子になったのなら、今度帰国した時に一緒にお風呂に入ってもいい?
【史勇】絶対にダメだ。
【おねーちゃん】残念。
こういう事が余計にオレを悪い方向に考えさせるんだ。
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