30 胎児
その昔子供の頃のわたしは何度も幻想の(伯父との)子供を産み落としていたはずなのに当時はその事実に気づかず毎回それらの子供を殺している。
今となってはどこまでが本当のことかわからないが高校に入学するまでにわたしは二十体近くの幻想の子供を殺害している。
最初の子供はエイリアンのような口をしていて次の子供はもしかしたら本当にGとの幻想の子供だったかもしれないが蛇の形をした青い血の流れる胎児だ。
その次の子供は小学校六年生に上がってからでこけしに似ていてすごく硬かったので燃やして殺す。
中学一年生のときのあのレイプ事件の後にもわたしはお腹を下してトイレに駆け込んで醜いヌルヌルを産み落とす。
それまでにもわたしは数体不連続に胎児を産み落としていたのでかなり慣れてはいたがその子供は緑色をしていてかなり気色が悪かったことを思い出す。
死んだ上級生はあのとき逝っていなかったはずだからあいつとの幻想の子供だとは思いたくないが実際のところはわからない。
そういえば母の祭のときのZとの子供かもしれない幻想の子供はあろうことか蟹に似ていて甲殻類が苦手なわたしはぎょっとして産み落とした直後にびっくりして遠退く。
けれどもどうしても殺す必要があったので声にアドバイスを求めると潰せというので慌てて公衆トイレから外に飛び出して石かコンクリートブロックを探して見つけたブロックの欠片を蠢く胎児の上に載せてその上に足を掛けて圧し潰す。
ブロックの下からじくじくと流れ出てきた胎児の体液は不思議と綺麗な七色をしていてキラキラと輝きながら天に昇って虹となる。
やがてそれが雨の雫となって降って来たから子供は成仏して土に還ったのだろう。
そういう奇妙な例があったとはいえわたしが産み落とした胎児はいずれも悪夢を具現したような姿形をしていて人間とは少しも似つかない。
石があれば卵があって魚があれば鳥がある。
華があれば蟲があって臓器があれば外骨格がある。
それら産み落とされた子供たちはヴァリエーションに事欠かない。
そのままの形でデッサンして映像関連のプロデューサーにでも持ち込めばすぐにでも採用されるかと思われるほどに奇怪なのだ。
だがそのときのわたしには自分の記憶の欠落とそれらを関連付けるという発想が欠けている。
その他に分類されるメジャートランキライザーには以下が残っている。
クロフェクトン/塩酸クロカプラミン(顆粒10%1g有り、10mg錠、25mg錠、50mg錠)
デフェクトン/カルピプラミン塩酸塩 (散剤10%1g有り、25mg錠、50mg錠
ホーリット/オキシペルチン(散剤10%1g有り、20mg錠、40mg錠)
ロドピン/ゾテピン(細粒10%1gと50%1gも有り、25mg錠、50mg錠、100錠)
最後のロドピンは非定型抗精神病薬の一種でセロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)であり構造的には硫黄原子を含む三環系だ。
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