24 Z

 そういえばわたしも祭の場で母の真似事をしたことがある。

 ときどきわたしの耳元でささやく幽霊の父に言わせれば実際にはしていなかったわたしの行為のひとつだろうが。

 それはともかく中学生のわたしには母の祭にすんなりと入っていける術がない。

 それ以前にわたしの家の広くて厳重な奥座敷に集まった男の子たちの関心は一身に母に注がれていてわたしにはまったく向けられない。

 祭の場ではわたしはただの壁の花で襖の染みで天井の模様だ。

 闘う前に敗者になっていたわたしをZが哀れに思ったのかどうかわたしは知らない。

 背は高いが華奢なZには母との神技が大変過ぎただけかもしれない。

 それでもZがわたしに近づいて来たときわたしはねっとりとした視線でZを見つめる。

 彼を誘ってZの性器をわたしのそれに貫通させる。

 祭りの空気がわたしを酔わせて興奮したZがやがて精を放つとわたしがそれを受け止める。

 座敷の中は芳醇な栗または木蓮の香りで満ちていて普通に息をするだけでむっとするようだ。

 母との交合を待つ男の子たちの中にわたしとZの行為に気づいたものがいて僅かに興味をそそられたようだ。

 昨年までのわたしは本当に壁の花で襖に描かれた画のような存在だったので少しは女として成長したのだろう。

 だが母の怒りを畏れてかわたしに近づくものはZの他に誰もいない。

 わたしは母がそんな些細なことで怒るはずがないことを良く知っているので笑ってしまう。

 だから興味があるのにわたしに近づいてこない男の子たちに少し腹を立てる。

 もう少し勇気を持てば多くのことが得られるのにと哀れみを覚える。

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