19 叔母

 最初は町の娼婦館を利用していたらしいが最終的にそれを引き受けたのが叔母だ。

 叔母は母の七つ違いの姉だったが当時既に夫に先立たれていて未亡人。

 母とは違って人形のようではなかったが普通に美人でパーツの一部が母ととてもよく似ている。

 それで父は止む無く叔母を選んだのだろう。

 叔母の気持ちをわたしは知らない。

 家族や親戚の多くはその関係に気づいていたようだが敢えて口を出すような真似はしない。

 叔母は雇われお針子の仕事をしながら父の援助を受けて細々と町のアパートで暮らしている。

 婚家にも実家にも居辛かったからだが田舎ではまったく仕事がなかったので町に出る。

 その町だって小さなものだがそれでも田舎よりは人口が多いし世間も広い。

 わたしが生まれたのは母が十七歳の終わりの頃だから当時の叔母はまだ二十四歳か二十五歳のはずだ。

 当時父は三十歳になっていたので叔母との方がお似合いの夫婦だったかもしれない。

 セレネース/ハロペリドール(細粒1%1g、液体0・2%1mLも有り、0・75mg錠、1mg錠、1・5mg錠、3mg錠)は一九五七年にベルギーの薬理学者ポール・ヤンセンがアンフェタミンによる運動量昂進に拮抗する薬物として発見したブチロフェノン系の抗精神病薬だ。

 主に中枢神経のドーパミンD2受容体を遮断することで作用するが統合失調症の治療薬として多く用いられているもののひとつ。

 統合失調症以外にも躁鬱病/譫妄/ジスキネジア/ハンチントン病/トゥレット障害などで処方される。

 副作用としてパーキンソン症候群/急性および遅発性ジストニア/急性および遅発性ジスキネジア/悪性症候群/高プロラクチン血症などがあるがこれらは本来の標的である中脳辺縁系以外の神経伝達を遮断してしまうことによって生じる。

 例えばパーキンソン症候群や高プロラクチン血症の場合はそれぞれ黒質線状体系/下垂体漏斗系のドーパミンD2受容体を遮断することでそれが生じる。

 父が母の身体を抱けなくなったのは母のせいだが元々は父のせいだから父は叔母のことを母には申し訳なく思っていたようだ。

 もちろん母は父のことなどまったく意に介さず日々を父のセックスレス人形として過している。

 その間母と伯父との間に交渉があったのかなかったのかわたしは知らないが少なくともわたしに簡単に知られるような交渉はなかったはずだ。

 高尚とは学問/技芸/言行などの程度が高く上品なこと=気高くて立派なこと或いはそのさまのことだがこれが哄笑になると大口をあけて笑うこと/どっと大声で笑うこととなりまたこれが公娼になると日本では昭和二十一年(一九四六)に廃止された公に営業を認められた売春婦の意味になる。

 わたしの中学の制服についているのは校章で文字の文化のない民族の神話は口承で語り継がれる。

 口証とは口頭で証明すること或いはその証言のことで交渉ならば以下の二種の意味となる。

 特定の問題について相手と話し合うこと/掛け合うこと。

 交際や接触によって生じる関係/かかわり合い/関係。

 わたしと声との関係は姦計でも環形でも還啓でも鑑継でもなくやはり関係のようらしい。

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