16 姉

 最初に精神病院に投獄されたのは姉を殺したからだ。

 わたしは殺したと信じているが姉は今でも時々見舞いに来るのでクローン培養が間に合ったのかもしれない。

 姉はわたしに殺されたというのにわたしに対して寛大なので訳がわからない。

 既に成仏しているからわたしに対する憎しみがないのだろうか。

 姉を殺した理由は簡単だ。

 姉がわたしにとって代わろうとしたからだ。

 姉はまずわたしの偽者になってその後わたしの本物になるつもりだったと思う。

 見舞いに来た姉はわたしがあんたなんかになりたいなんて思うわけないでしょうと申し開くが幼い頃から姉はわたしに美しさの上で劣等感を抱いていたから信じられない。

 それでわたしを亡き者にしようとしたのだ。

 だがそれを姉に言うとあんたは確かに綺麗だけど綺麗過ぎて男も女も友だちがあんまり出来なかったからそうではなかったわたしを単に羨んでいただけなのよと姉の属している側の世界の理屈を捲くし立てる。

 わたしが薬に負けているときにはそれが正しいと惑わされることもあったが今では違うと知っている。

 友だちなんて必要ない。

 愛する者が一人いれば十分だ。

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