第12話【無駄】


 いつも僕はそうだ。

 余計なことをして人を怒らせたかと思えば、

 必要なことをせず人を怒らせる。

 でも、その違いが判らない。

 周期的にそういった精神状態になる時が必ず来てしまう。

 自分で何を言っているのか。

 自分が何をしているのか。

 全く分からなくなってしまう時期が。

 これでは駄目だと分かっているけれど、

 それでも僕は何も出来ない。

 ……僕は遂に、行き場を失う日がきっと来るだろう。

 そう遠くないうちに。

 あらゆる社会から放逐された時、僕はどこへ行けばいいのだろう。

 そう、僕は午後13時の市立図書館で、ぼんやりと不安に駆られながら思う。

 何を読もうという気にもなれない。

 耳に聴こえるのは、何かから逃げる様に目まぐるしく……いや。

 耳ぐるましく? 音が走り回る音楽。

 英雄を弾劾するそうだ。

 大した志だ。でも、僕はつまるところ、

 奏者の眼中にも入れない程度の人間という事だろう。

 報われない人生には慣れたつもりでいたが、

 それでも僕はこの苦しみを未だ苦しみと感ぜられる。

 それも、求めていない苦しみだ。

 ……教えてほしい。

 僕はこのまま生き続けても、惨めに死へと引きずられ続けるだけなのか?

 目を合わせた人々から、石と罵詈雑言を投げつけられ続けるのか?

 成功することなく、苦しみながら死んでゆくのか?

 不老不死には、なれないのか?

 恐ろしい。

 老いてゆく宿命が。

 死してゆく宿命が。

 誰か助けてくれ。

 僕は永遠の命が欲しい。

 それさえあれば、僕はどれだけの苦しみがあろうと耐えられる。

 気の済むまで呆け続けて、

 気が済めば書を漁るのだ。

 気の済むまで。

 そして、ぼんやりと創作活動を続けてゆくのだ。

 永遠の命さえあれば。

 永遠の命さえあれば。

 焦って腐る事もないのに。

 僕は期限と謂う概念を心底憎む。

 そう、例えば、

 あと4時間13分で僕をここから放り出す、この施設のルール。

 ルールを作るに至った、時間。

 時間を作るに至った、物理法則。

 物理法則は……誰が作った?

 否。

 ソースエンジンじゃないんだから誰かが作ったものではない。

 結局のところ、つまるところ、僕はそういう事なのだろう。

 この世界で生きてゆくことに向いていなかった。

 嗚呼、早く死にたい。




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