第2話【理不尽】

 悪魔の教えを授かる事の出来る、恐らくは最後の集会へと参加する機会を掴み取って、間もない日の朝だった。

 私はその時……実家から此方へ来ていた兄弟を適当に宿へあてがい、

 一旦家に戻り支度をし終えて、仕事先へと向かう途中に、違和感を感じた。

 微かに不自然な寒さを覚え、加えて鈍い腹痛を覚えたのだ。

 今思えば、あの時に直ぐ医者へかかっておけば、こうはならなかったかもしれない。

 だが時間の無かった私は、兎にも角にも出先へと向かった。

 予定よりも1時間半以上掛けて。

 そこからどの様に仕事を済ませて帰ってきたのかは今も思い出せない。

 否。正確には、次の日の記憶も朝から医者へ駆け込んでから先が無い。

 それから私は、もう何日になるだろうか、ずっと寝込み続けている。

 気の触れそうな腹の痛みと万力で潰されているかの様な頭痛、

 そして何時ぞやかのアルバイト先で上司の嫌がらせにより上着も無しに閉じ込められた、

 冷凍庫での十数分を思い出させる様な寒さが、延々と私を拷ずる。

 何の謂れがあって、斯様な苦しみに喘いでいるのか。

 私が何をしたというのか。

 分からない。当然身に覚えも無い。

 何時だったか聞いたことがある。

 人の生なるものは、幸福と不幸の天秤が平等になる様な造りになっていると。

 然れば私はこれから宝クジでも当たって、何億円か貰えるのか?

 否。そんなものを買った覚えは無い。

 ではいよいよ何処かの出版社から御声を頂き、私は晴れて職業作家の仲間入りでも出来るのか?

 もしそうなれば、この苦しみにも意義が見出せるというものだ。

 では。

 これは、悪魔へ魂を売った私への、神が下した天罰か?

 冗談がきつい。というより、仮にそうだとすれば、私は心底神を憎む。

 小さい頃からあれだけ救いを求めていた私を無視し続けておいて、鞭だけはしたり顔で振り下ろすというのか?

 そんな事をする様な毒親が神だというのなら、私は喜んで悪魔に帰依したい所存である。

 ただ、薬も一向に効いている様子は無いし、何時になれば治るのかすら分からない今、それが出来る見込みもまだよく分からないところではある。

 流石に2月の20日迄には治ってくれているとは思うが、それでも私は、この苦痛による不安が拭えず、故にこれをしたためた。

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