ACT.34 愛と憎しみの輪舞曲《ロンド》


━━近しい者ほど、擦れ違う。その溝は深まるばかり。吐き出すとき、思わぬ刃となる━━




……イヴリーテさん、仕方なしに回復をしてくれました。大丈夫ですよ。かなりの人がいますし、敵さんも少なからず減らされているでしょう。戦えない人ばかりじゃないはずですし。


咲哉たち、実はまだ、三人に話してないことがあります。チャリオットさんとイヴリーテさんと和巳さんですよ。和巳さん、しゃべりませんけど。


非常識区分セレクター生還リセットが利かない発言。死ぬわけではないのはわかっています。しかし、明らかににはなり得る。その部分は説明していいとは思うんですが、ヴェノムたちも100%の確証がないためか、口をつぐんでいます。


ここに非常識区分セレクターは三人。このゲームは20年続いている。ということは、近い非常識区分セレクターがやってきている可能性がある。モブになって倒された人、魔王になった人、ヴェノムの元婚約者と合わせて六人。では、後の四人は?……それとも、非常識区分セレクターはこの六人だけなのか。

チャリオットさんたちはこの件に関して何も言いません。今のところ、クリストファーくん以上の情報は期待出来そうにないですね。




塔に近づくにつれて、人が疎らになってきました。強制送還デスペナルティも数多くでているかもしれません。活性化のためならば、かなり鬼畜仕様に拍車が掛かっています。

塔に入る頃には、あまり見掛けなくなりました。あ、数人いました。しかし、獣騎兵に丁度倒されました。こちらに気がついた人が、恨めしそうにこちらを見ながら消えていきます。

おせーよ!てめぇらがのんびりしてるからだろ!的な感じでしょうか。責任転嫁はよくないですな。あくまで同じプレイヤーですから、あくまで。


「……リザードマン?」


咲哉の興味は獣騎兵のようです。カラフルなリザードマン風の鎧来た、二足歩行をしている人外モブですね。黄色、赤、青、緑、灰色、白、ピンク、オレンジ、紫……これ、色だけ?目に痛いんですが。


「目がチカチカしやがる……。」


ヴェノムさえ、頭を抱えています。視覚に訴えすぎですよ!


「噂には色々聞いていたんだけどねぇ。これは酷い♪」


「あたしの視界から早く消して、チャリオット。」


「はいはい、仰せのままに~♪」


姫と騎士みたいな茶番劇を交わしながら、チャリオットさんは踏み出します。

……しかしそれより早く、チャリオットさんの横を何かが高速でひゅんひゅん通りすぎました。


こ、これはまさか!?


振り向くと、無表情で次をつがえてる咲哉がいたー!振り向き、咲哉だと認識した瞬間、鈍い音がいくつもヒットを告げました。直ぐ様、皆振り返り直します。

視界にいる獣騎兵10匹、見事脳天直撃!一瞬にして霧散しました。


「……咲哉、弱点知ってたのか?」


「いいえ、ただドラゴン系は頭のバランス第一だから崩してみただけ。」


一発目で無力化を測ろうとしたら、たまたま弱点だったと……。恐ろしい子!なんてゲーム中毒者ジャンキー


「ほ……、本物だわ。」


「ここまでとは、予想以上だね♪」


「……咲哉の鍛練は、並大抵じゃないからな?」


うさぎ跳で山登り、その山に置き去り……エンドレス。じいさん、捕まってしまえ。






最上階間近になるころには、カラフル部隊以外いない状態に。咲哉は空気を読んで、皆に見せ場を作ってあげてましたよ!

チャリオットさんは槍で突いたり、剣で切りつけたりと切り替えが鮮やか。これで本領発揮できる場ならば、更に大活躍ですね。

ゲオルグさんは敵さんの攻撃を一身に受けながらも、涼しい顔で切りつけたり、あの厨二じみた魔法を上手く使い分けてます。

和巳さんも心底だるそうにしながらも、魔球を次々と命中させていってますね。流石、腐ってもプロですな。

一番軽やかなのは、やはり体長の短いヴェノム。小さな体を駆使して、動き回りながらも重い一撃必殺を咬ましていってます。すばしっこいですね!まるでおさるさんのようです!


……ん?褒めてるのか、ディスってるのか?もちろん、ムサイ男衆におべっかなんか使うわけないじゃないですか。カッコいいと思わせる表現なんてしてやりません。




最上階の扉前。

色々割愛してきましたが、現場前です。チャリオットさんとゲオルグさんが両扉をギィっと開けます。

……透かさず、戦闘中何もしていなかったイヴリーテさんがお行儀悪く、クリストファーくんを蹴り出しました!雑!


「うわっととととと………!」


バランスが取れず、そのまま扉の中に顔面スライディング入室。

……クリストファーくんの視界が暗くなります。




『おお!そなたが助けに参ったか!感謝する!』


如何にも王様ってなりのおっさんが立っています。


『褒美を取らせよう。ランク+3を!』


テロテロリン♪


腹が立つ効果音がなります。


「あら?『SS』?」


目標達成ミッションコンプリート……?あれ?


「ああ、そっか。来る前にAランクドラゴン4匹狩ってたから。」


あれでBランクになってたんですね。忘れてました!ええ、すっかり!

……ていうか、真っ先におめでとうといってくれるはずの咲哉が静か?は!ま、まさか!




「……やっぱり、。」


予想してはいましたが、忘れてました。一際大きなジジジ音が辺りに響き渡ります。これは……。



「……さ、咲哉?何故……。」


なんでしょう?表情が強張っているように見受けられます。


「お父様……、まさか会えるなんて……。」


咲哉は嬉しそうですね。でも、何だか噛み合ってないような……。


「……おまえが何故ここにいる。もう……!」


睨み付けられました。


「お、お父様?何故?」


咲哉には大好きなお父さん。しかし、彼の表情に憎悪すら感じられるのは何故でしょう?父娘おやこの間に何が……。

父親の拒絶に咲哉は耐えきれず、ふらりと倒れかけます。


……そんな彼女を支えたのはヴェノム。誰よりも辛さを察することが出来るのは、彼でしょう。すべてではないにしても。……今回は許してあげますよ。

青ざめ、力なくヴェノムに体を預ける咲哉。


「……咲哉の親父さん、あんたは何もわかっちゃいねぇ。」


そう、圧し殺したように咲哉のお父さんを睨み付けます。そんな彼の側に皆さんが集まってきます。……和巳さん以外。わかっていましたとも。

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おかんチックナレーションと疑似RPGの謎 姫宮未調 @idumi34

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