ACT.33 見捨てる勇気と拾う覚悟

━━決断に正解も不正解もなく、あるのはただ前に進むための覚悟と勇気だけ━━



二択なら、受け入れるしかないですね。


「……取り敢えず、今回だけ宜しく。大勢は苦手なの。」


あ、何かすっごいオーラでてますよ!私も和巳さんを忘れかけたように、今度はインパクトの関係でクリストファーくん忘れそうで怖いです。

イヴリーテさん、不満そうですな。仕方ないですよ。咲哉も私も把握出来ないんで。


……森を逆流しないとならないようで、気分は滅入ります。まぁ、期限とかは明確ではありませんし、ちょっと休んでから向かうことにしました。


「かなり人、減ったな。」


「報酬が報酬ですから、気が急いだのかもしれませんね。」


「急がば回れとは言うけど、二兎を追うもの一兎も得ずとも言うからね。」


「人混みに混ざって戦うなんて、嫌だわ。」


「まぁ、お互い邪魔になりかねないだろうしなぁ。」


咲哉、和巳さんはやっぱりだんまりです。

しかし、協調性ないわりに考える先は同じですねぇ。それしかないんですが。



道程はしょうもない会話の繰り返しと咲哉がだんまりなんで割愛します。咲哉ありきなんで。



鬱蒼とした森の中、意外と役に立つチャラいチャリオットさんが先陣を切ってくれてます。近距離と中距離対応は便利ですな。しかし、面倒なんで、チャラオットさんって呼んでいいですかね?でもこの人、空気読むのは得意なんですよね。イヴリーテさんというあくの強すぎる美人といるくらいですから、それくらいじゃないと生きていけないんでしょう。


……にしてもこの世界ゲーム、まともな人がいないですな。


「そろそろ見えてくるかな~♪……困ったな、イヴリーテ。」


ん?何か?


「……すっごい面倒臭ぁい。」


うわっちゃー。強制送還デスペナルティ寸前の方々が、塔に辿り着かずに倒れてらっしゃいます。けれど、自力では街に戻れないようです。イヴリーテさんは、腐ってもハイプリエステス。現在の回復の権化様。悩み処ですな。

流石に高位の回復魔法をもってしても、大きな魔法は消費が大きい。ほいほい使えるものでもない。しかも、パーティーに入れるか入るかしなければ扱えない。

だがそのままにしたら、確実に強制送還デスペナルティコースと悪い噂が立つ。デメリットしかないです。どう、彼女は回避するんでしょう?


「……イ、イヴリーテ様!」


まぁ、気がつかれますよね。


「……聖女なんてあなた方がつけただけ。あたしは人間だから、限界があるの。実力以上キャパオーバーになることはしないわ。万全の準備を怠った自分を恨みなさい。」


いや、すごく真っ当ではあるんですが、目が怖いです。


「……待って。」


ん?咲哉、どうかしましたか?


「あら、サクヤ?どうしたの?」


咲哉に肩を掴まれ、心なしか嬉しそうです。


「ねぇ、まだ話せる?頷くだけでいい。」


優しい!咲哉、優しい!瀕死の一人の前にしゃがむと相手が頷きます。


「……なら。チャリオットとゲオルグはHPかなりあるかな?」


こちらを振り向きましたよ。


「ん?ああ、壁職とも言われてるから、俺は大丈夫だよ。」


すぐに察したゲオルグさん、にこやかに頷いてくれます。


「俺は当たらせない自信があるから平気だよ♪」


チャリオットさんもわかってくれてます。が!イヴリーテさんがわからないのか、面白くなさそうです。


「私たちには魔法は無意味だから、クリストファーは何とかするわ。だから、イヴリーテ。一時、彼らのパーティーに入って。」


すっごい嫌そうな顔をしましたよ。


「……回復したらすぐイヴリーテは抜けるから、動けるようになった足で。」


あれ?雑魚減らしに向かわせないんですか?報酬に目が眩んでこうなったんでしょう?流石に固まってますよ?


「……強制送還デスペナルティを食らい続ける?マイナスよりはマシなんじゃないの?諦めることは恥ずかしいことじゃない。ゲームだからと、命を無駄にしてはダメ。」


結果的にこんなとこで瀕死なら、中に入っても強制送還デスペナルティ祭りになるでしょうな。咲哉なりの優しさではあります。


「……だから、そう言えるんだ。」


端から見れば『実力もないやつは帰れ』って言っているようなものなので、酷いことをオブラートにしただけ。何も知らなければ、そう取れてしまいますから。


「おい!」


頭に来たヴェノム。しかし、咲哉が制止します。


「……あなたたちは勘違いしているわ。あなたたちは生還リセットが利くけど、私たちはそれまで。それに無敵なんかじゃない。現実リアルで培ったものしかないの。補正ステータスギフトもない。才能の問題と言われてしまえば、それまでだけど。でも、見合う努力をしてきたことだけは知ってほしいの。」


真剣な面差しで彼らに訴えかけてます。瀕死でも、意味を悟って青ざめているようです。

チャリオットさんとイヴリーテさんも息を飲んでます。


「……そんなデメリットがあったのね。非常識区分セレクターは恵まれた一つの才能だけを武器にしているってこと……ね。」


「それなら……、俺たち何かよりずっとリスクが大きいね。」


く、空気が重いです。


「……わかった。すまない。回復をお願いしたい。俺たちは引き返そう。」


中傷くらいの人が言うと、周りも頷いてくれました。

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