後編

ACT.29 明かされし使命

━━咲哉の素晴らしき帰巣本能により、真っ直ぐ街に戻れました━━



何だか掲示板付近が騒がしいですね。四人とも難しい顔して人混みに紛れていきます。


『お願いします!王が!王が連れ拐われたのです!お助けください!助けて下さった方には、2ランクUPと金貨100万枚を、お一人ごとに配給致します!どうか!』


必死の形相のきらびやかな女性が訴えています。綺麗な方ですねぇ。……あれ?誰かに似ているような?


「珍しいですね。王妃が街道に現れるなんて。」


流石王妃様、お綺麗なだけありますね。でも、何か引っ掛かるんですよね。


あ、咲哉が!いつも無表情な咲哉が目を見開いてます!どういうことでしょう!?


「咲哉?」


ヴェノムが呼び掛けますが、咲哉は聞こえていないようです。何か王妃様にフラフラと近づいていきます。


「……様?お母様?!」


周りが何事かと黙り混んじゃいました。

その瞬間、王妃様の一定した動きに変化がありました。ジジッと全身がブレます。


『さ、咲哉……!お願い!を、!私はもう……!』


なんと言うことでしょう。咲哉に反応して、王妃様の表情が変わり、咲哉に手を伸ばしたじゃないですか!まさかの展開です。矢張咲哉がここにいる理由が、この世界ゲームに償還された理由が見えてきましたよ!


『お願いします!王が!王が連れ拐われたのです!お助けください!助けて下さった方には、2ランクUPと金貨100万枚を、お一人ごとに配給致します!どうか!』


それも束の間。ブレが消えるとまた、王妃様が同じことを繰り返します。代わりに周りが一瞬、ジジッとブレました。すると、王妃様の話を難しい顔をして聞いています。

え?何ですか、これ。


「……今の、聞きました?」


「……ああ、聞き間違えじゃないはずだが周りが変じゃないか?」


「この世界ゲームの意志か?……それに何なんだよ?咲哉のお袋さんってどういうことだよ?なぁ……。」


まぁ、戸惑いますよね。普通なら、今のを周りも聞いて来そうなものです。まるで軌道修正掛かったような……。いや、それよりも違和感が消えましたね。誰かに似ているようなじゃなく、咲哉が王妃様に似てたんですね。お母様なら納得がいきます。しかし何故、ここに咲哉のお母様がいるか、ですよ。だってあの人、NPCですよ?

それに、咲哉とヴェノムだけならまだしも、クリストファーくんとゲオルグさんってあちら側じゃありません?一緒にジジッってなりませんでしたよ?


「……私にもわからないわ。でも、お母様に間違いない。でも、になったはずなの……。」


これは……、ワケアリっぽいですね。ほら、唯一の肉親はお祖父様だけって言っていたはずですからね。


「……お袋さんと親父さんはいつ?」


20……になるわね。病気がちだったお母様と共に、お父様がいなくなったのは……。」


ちょっと待って!咲哉いくつよ?!


「……え?それって……世界ゲームと重なりませんか?」


「まさか……、咲哉の親父さんがもしかしなくても関わってるってことか。てか……、咲哉、聞きにくいんだけど、いや、聞いても変わらないけど!……何歳?」


女性に年齢聞くのは失礼ではありますが、流石に気になりますよね……。私も気になります、すっごく!3人が三様に咲哉を伺い見ます。


「……ああ、31。」


あっさり答えました……。いやぁ、全くそうは見えませんね……。成人しているとは分かっていましたが……。ちょっと空気が重いですな。


「……大学でアーチェリーやってたのに、何で5年前だったんだ?」


「別にオリンピックに興味はなかったもの。弓道が本職で、お祖父様の名代としての師範代が仕事だったの。だからオファーが来たとき、首を傾げたわ。」


まぁ、そうなりますよねぇ。今更な?


「お祖父様の勧めで、力試しのつもりで一回だけ参加したの。」


それが逆にトラウマになるとは知らずに、ですね。


「……断ってたら、出逢えなかったってことか。なら、俺はおまえが参加してくれて良かったわ。出逢えなかったら、なにも知らないままだったもんな。」


最悪の出会いが運命の出逢いとか言っちゃう口ですか?……カッコいいこと言っても、まだ咲哉は嫁にやりませんよ?ちょっと危険信号出てる年齢でも、私の瞳の色が黒い内は!


「おいおい?どさくさ紛れに抜け駆けはしないでくれよ?」


ゲオルグさん、止めてくれるのは有り難いですが、出会ったばかりのあなただって同じですからね?


「え?え?!そういう話ですか?!だ、だめですよ!ボクだって、こうしてお会い出来たんですから!」


おまえら、緊張感ぶち壊しですよ!……私?私はいいんです!聞こえてないんですから、好き勝手言っても!当たり前じゃないですかー。何を今更!


……さぁ、咲哉!一蹴してください!


「……よくわからないけど、取り敢えず、お父様を探さなきゃね。」


お見事です!皆さん思い出したようですな。咲哉に通じないことを!

今すべきは、お母様が訴えていらした、『あの人を、お父様を止めて!』と言ったことですから。

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