ACT.28 サッカーと上から目線
━━彼らは立ち上がりました━━
ずっとこうしているわけにもいきませんからね。来た方とは反対側に向かいます。
『ああ………!!くそ!!』
一歩踏み出した瞬間、少し離れた場所から叫ぶ声がします。な、何が?! 四人ははっとして、声のする方へ向かいます。
「ノルマコンプ出来そうだな。」
やけに冷静だ。
「た、確かにブラックドラゴンですけど!」
苦笑いしながら叫ぶ。
「あいつ!何も装備してねぇぞ!?ヤバイだろ!」
そう、彼はジーパンにワイシャツしか着ていない。
「あ!あの人、
確かに最低限のRPG装備もない。まぁ、着たばかりの頃の咲哉に比べたら全然まともですけどね。
「そんなことより、助けることが先よ。」
すっと前に出る咲哉。矢をつがえようとした瞬間……。
「余計なことすんじゃねぇ!!………
皆、揃いも揃って唖然とする。光の球を作り出して、しかもそれを蹴り当てた?!ブラックドラゴンがよろめき、咆哮を挙げる。しかし、一発では倒れないらしい。反撃しようと大口を開け始める。不味いんじゃないの?
「!?くそっ!!やっとダメージ受けたのに!!球切れかよ!!」
ああ、何度もやったんですね。確かに光の球が形成できなくなってます。あの人が本当に
「と、取り敢えず礼は言ってやる。助かった。球切れしなけりゃ一人で……。」
青年は最後まで愚痴が言えなかった。途中から、"ぱぁん!"と小気味良い音が彼の聴覚を支配したからだ。
「……へ?」
「お礼何かいらない。文句を言うくらいなら、無事を喜びなさい。」
いつもながら、諭してますな。そして、その中にある優しさ!
「……サクヤさんも相当無茶しますけど、今のはヤバかったと思いますよ?」
「やる気があるのはいいことだが、助けを求めることも勇気なんじゃないか?」
あれー?何か睨んでますね。
「……経験積んだからやれただけだろ。いい気になるなよ。俺は天才肌なんだ。おまえら凡人の話なんか聞く意味もない。」
何すか、この生意気野郎。腹立ちますねぇ。初対面で見下すとか何なんですか。
「はぁ?初めて会ったんだから、天才も凡人もねぇだ……ろ。あー!
じゃね?!見たことあるわ!やけに綺麗なフォームだと思ったら!」
ヴェノムが叫び……え?誰?三人が全くわからないって顔してるから、混ざっておきます。
「ふん!六年前とは言え、かなり実力あったからな!」
うわー、偉そうー。腹立つー。はらたつのりー!
「え?咲哉も知らね?サッカーのオリンピック選手に有望視されてた伊砂和巳!」
咲哉、首を振ります。知らないそうですよ。
「あ、俺はそんなでもねぇけど、咲哉は有名だぜ?有栖川咲哉!弓道のスペシャリスト!小学生の頃から優勝しまくりで!」
あーあ、咲哉そっぽ向いちゃいましたよ。
「あ、有栖川咲哉?この女が?天才弓道家じゃねぇか……。何年か前にアーチェリーも始めたってゆう……。す、すげぇな。こんな場所で出会うとか運命だな!」
お?本当に有名みたいですね。
「すごくなんかない。確かにこのメンツは、偶然にしては出来すぎているわね。」
彼は、自分と咲哉だけ言ったみたいですけどね。
「俺はどうかわかんねぇけど、《桜庭優也》ってんだ。知ってる?」
何か察したのか、間に入るヴェノム。
「あー!フェンシングの!マジか!あれ?確かあんた、警察学校の剣道主席とかじゃなかったか?」
罰が悪そうに顔掻き始めましたよ?
「警察……学校?」
「あー……、俺元警官なんだ。」
警察の人がなんでオリンピック?不思議ですね。
「……取り敢えず、クリストファーとゲオルグが置き去りになってるわよ。正直、私もよくわからない。特に警察官が何故、オリンピック選手になったかも。」
そこ突きますよねー?
「ワケアリ、なんだわ。」
変な流しかたですね。絶対何か隠してますね。
「………………まぁ、いいわ。伊砂さんも一緒に街に戻りましょう。」
絶対気にしてるでしょ?
ま、こんなとこに長居は無用ですからね。
「……あっ、待ってください。メールが!」
メール、あるんですね。
「ん?俺もだわ。」
クリストファーくんとゲオルグさんに?
プレイヤー同士で出来る機能ですか。
「……何か街で騒ぎが起きてるみたいです。」
「『王様が誘拐されました。救ってくださった方には報酬を差し上げます。』って『王妃様』が呼び掛けてるらしいな。」
「……詳細がなくて皆、困ってるみたいです。取り敢えず、戻って状況確認ですね。」
皆一様に頷きます。イレギュラーな臭いがしますよー?クエストって掲示板に貼られるものじゃないんですかね?NPCとは言え、口頭って珍しくないですか?
前編了******ACT.29へ*****
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます