ACT.25 超アナログ修行と森

━━暗くなって参りました━━



「……こりゃ、野宿になりそうだな。」


思ったよりも時間が掛かってしまっていた。『シャドウドラゴン』までの道程、ミニデーモンドラゴンがうじゃうじゃうじゃうじゃ……。通常のゲームでも、一ヶ所に百匹近くなんて集まるわけがない。


「携帯食すらないですよぅ……。」


クリストファーくん、へたりこんでいます。それでも、早く終わらせるには歩みを止めるわけにはいきません。けれど、陽はどんどん遠ざかっていきます。


「ちょっと待て。道が消えた……。」


所謂、獣道に迷い込んでしまったようです。


「……来た道を引き返すのなら、分かるけれど。」


さらりと特殊能力を自ら晒す、我らが咲哉。


「で、でも、もう暗くなってきてますよ?」


ああ、あの時は明るかったですけど、クリストファーくんは気絶してましたもんね。


「明暗は関係ないわ。行き先が分からないから、付いていくだけじゃ意味がないから、周りを記憶するの。……地図は読めないけど、地理感覚は鍛えたから。」


修行の賜物ってやつですかね?


「すごいな。弓の鍛練が、山ん中とかじゃないよな?」


冗談のつもりでゲオルグさんが仰います。


「基礎鍛練は、山で行うものではないの?」


まさかの超アナログ修行!


「……本格的なんだな、咲哉んち。」


「お祖父様によく連れられて、山にいっていたの。うさぎ跳びで登らされたり、崖から落とされたり。帰りはお祖父様が先に帰ってしまうから、自然と覚えたわ。」


うわー、女の子の修行じゃないですよ?恋愛方面100%疎いのは、性別無視修行が原因だったわけですね。しかも、置き去りにされてる時点でかなり過酷ですね。富士の樹海なんかに置き去りになんてされたら、生きて帰れません!……いや、咲哉なら真っ直ぐ生還してもおかしくない?鍛えられ方、半端ないじゃないですか!だから、クリストファーくんの体重支えても変わらずに行動できたと。それなら、超チートになっても違和感ないです。クリストファーくん、青ざめてみっともなく口開いたままですよ。


「……女の子になんつーことさせんだよ、あのじいさん。」


ヴェノムが頭を抱えます。バランス感覚の異常さも合点はいくんですけど、少しは女の子らしく育てて頂きたかった!


「……それで、どうするの?進むの?帰るの?判断は貴方たちに任せるわ。もう少し進んだとして、道に迷ってもどうにかするけれど。」


くそ頼もしいですな、紅一点!男性の立つ瀬ない空気はガン無視っすね、清々しい!


「ど、どうしましょう?」


「この状況はもう、サクヤに帰りは全任するしかないか。ヴェノム、どうする?」


「……仕方ない、行けるとこまで行こうぜ。帰り道は確保してくれてるんだ。信用しない理由はねぇよ。頼んだぜ?咲哉。」


皆が頷く。


「ええ、任されたわ。」


………今引き返せば何も起こらない。しかし、彼らは進まなければならなかった。このまま進めば、彼らのために用意されたステージがある。

このドラゴン異常発生の原因や、この世界ゲームの本来の意味の一部が明かされようとしている。そう、全ては必然なのだ。


******ACT.26へ******

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