ACT.22 優しさとは
━━俺が殺したようなもんだ━━
その言葉に場の空気が一瞬、止まる。
「……思い積めるなよ。」
ゲオルグがヴェノムの頭をぐしゃぐしゃ撫でるが、今回は無言だ。これは相当ですね。
「……ヴェノム。」
いつの間にか傍に来ていた咲哉。ヴェノムははっとします。
「……ごめんなさい。聞こえてしまったから。誰かは察しがつく。その顔は多分、私の感は当たりね。……言わないけど、これだけは言わせて。貴方は自ら誰かを殺すような人じゃない。なにもしないで見殺しなんて出来ない人だと思う。人間に完璧な人はいない。不完全だからこそ、人間なのだから。」
静かに見据えながら、続ける。
「何でも出来る気になっていたのなら、考え直しなさい。人間には許容範囲というものがあるのよ。範疇を越えていたなら、出来なくても仕方ない。目標は高く持つべきだけれども、限界はあるもの。貴方は優しいから、全て自分のせいと考えているだけ。逆に何でも出来てしまう人の方が、手抜きをしてしまうものだから。貴方は強いけど、弱い部分があって当然よ。」
クリストファーやゲオルグも口を出せない。優しいけれど、厳しい言葉。彼女の言葉には、同情や共感なんてものはない。慰めは時に人を堕落させる。それがわかっているからこそだ。人に必要なものは、理解と勇気、背中を押す言葉ではないだろうか。変われるかは、どう受け止め、どう解釈するかにもよるけれど。
「……やべぇ。涙出てきた。やっぱ、咲哉は最高だわ。」
泣き笑いをしながら、顔を隠す。当の咲哉は、ぐりんっと後ろを向いてしまった。……ナニコレー?!どんな状況?!
「……サクヤさん!惚れ直しました!」
クリストファーくん、だばだば泣きながらきらきらしてます。うわー、鼻水拭いてください!汚い!
「……へぇ、カッコいいな。男だったら、女が放って置かないだろ。女で良かったと言うべきか……。二人には悪いが、俺もあんたを気に入ったわ。」
振り向いた咲哉、心底面倒な顔してます。そりゃぁ、恋愛とは無縁だった人ですからね。自分は人に好かれるような人間じゃないとかかんがえてるんじゃないですか?好きの定義から理解しないとですよ。
「……何故、泣かれたり、誉められたり、気に入られたりするのか分からないのだけど。」
それは冗談も通じない人に育っちゃったからじゃないですかねー?
******ACT.23へ******
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