ACT.21 プライドとイレギュラー
━━とあるゲームセンター━━
一人の青年が、暇をもて余しながらゲームセンターに入っていく。人気あるゲームセンターらしく、満員だ。
「あー、やっぱダメかぁ。」
テレビゲームも携帯ゲームにも飽きて、ゲームセンターにやり場を求めたのに。
「だからって基本的なのは槍尽くしたからなぁ……。」
帰るのも面倒だと言わんばかりに、周りを一応隈無く見渡す。……一つだけ空いていた。忘れられたかのように、その場所だけが異質に感じた。
「なんだ?古めかしいな。」
彼の名前は
彼はこの究極の選択肢を、軽視していた。流れに任せ、『オリンピックサッカー選手』を選んだ。
……しかし、協会側は残酷な発表をした。『最終選抜に君は落ちた』と。今からでは、東大の推薦は取り戻せない。彼に一般入試という選択肢はなかった。……プライドが全てを閉ざしてしまったのだから。
「"NO NAME STORY"?聞いたことねぇな。ゲーセンでRPGとは奇抜過ぎないか?まぁ、暇潰しには持ってこいだな。」
100円だまを投入すると、ロールが流れ始める。
『ここは魔法技術最先端なのに貧困極まりない小国。毎度毎度、隣国やら他国、魔物に襲われ、散々な国である。しかも国の名を持たない。取り敢えず国王の名前が名称になり、毎回変わる為に意味あるのは技術力だけ。
勇者など存在するわけもなくて、野望と欲望ばかりが錯綜する、嫌な
全くもって、ゲーム内容の不明なロール。
「この国救えってか?……あ、職業選択?『ファイター』・『アーチャー』・『マジシャン』ね。魔法先進国なら、試しにマジシャンにしてみるか。」
この選択肢が彼の全てを決定する重要事項だとは、気がつけなかった。結局彼は、自分のプライドと軽率な判断が原因だとわかってはいない。人生の選択肢はゲームのように簡単に選んではならない。リセット機能は存在しないのだから。しかしながら頭が良ければ良いほど、他人の意見より自分の意見の方が明確で正しいと認識しがちだ。だからこそ選択しているようで、事実、繰り返し同じものを選んでしまっている。対等、若しくは自分以上の存在が現れない限り、永遠にループしてしまうのだ。
「初期魔法か。『ファイアボール』・『ヒール』の二択?『ファイアボール』だろ。仲間いねぇし。」
異変は直ぐに起きた。モンスターに遭遇し、魔法を選択する。
『投げますか?蹴りますか?』
「は?すぐ発動しないの?」
……彼は無意識に『蹴りますか?』を選択した。
足に懐かしい感触。流れる動作のまま、正確にモンスターに当てた。
~・~・~・
「……え?あれ?」
目の前には衝撃と炎で倒されたモンスターが焦げている。和巳は森の中にいた。ゲームそのままの世界に立ち尽くしてる。この状況は、すぐには解析など出来ようがない。
******ACT.22へ******
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