ACT.21 プライドとイレギュラー

━━とあるゲームセンター━━


一人の青年が、暇をもて余しながらゲームセンターに入っていく。人気あるゲームセンターらしく、満員だ。


「あー、やっぱダメかぁ。」


テレビゲームも携帯ゲームにも飽きて、ゲームセンターにやり場を求めたのに。


「だからって基本的なのは槍尽くしたからなぁ……。」


帰るのも面倒だと言わんばかりに、周りを一応隈無く見渡す。……一つだけ空いていた。忘れられたかのように、その場所だけが異質に感じた。


「なんだ?古めかしいな。」


彼の名前は伊砂和巳いさ・かずみ。類い稀な才能を買われ、"スポーツ特待生"として、高校に進学した。種目は『サッカー』。二年になると、『オリンピック選手』の選抜に抜擢されていた。大学進学か、オリンピック選手か。彼には選べた。何せ、のだから。選択肢は、。どちらも彼には選べた。しかし、どちらかを選べばどちらかを失う。出来ることが多分に合っても、全てを補える人間などいない。

彼はこの究極の選択肢を、軽視していた。流れに任せ、『オリンピックサッカー選手』を選んだ。

……しかし、協会側は残酷な発表をした。『最終選抜に君は落ちた』と。今からでは、東大の推薦は取り戻せない。彼に一般入試という選択肢はなかった。……プライドが全てを閉ざしてしまったのだから。



「"NO NAME STORY"?聞いたことねぇな。ゲーセンでRPGとは奇抜過ぎないか?まぁ、暇潰しには持ってこいだな。」


100円だまを投入すると、ロールが流れ始める。


『ここは魔法技術最先端なのに貧困極まりない小国。毎度毎度、隣国やら他国、魔物に襲われ、散々な国である。しかも国の名を持たない。取り敢えず国王の名前が名称になり、毎回変わる為に意味あるのは技術力だけ。


勇者など存在するわけもなくて、野望と欲望ばかりが錯綜する、嫌な世界ゲームである。』


全くもって、ゲーム内容の不明なロール。


「この国救えってか?……あ、職業選択?『ファイター』・『アーチャー』・『マジシャン』ね。魔法先進国なら、試しにマジシャンにしてみるか。」


この選択肢が彼の全てを決定する重要事項だとは、気がつけなかった。結局彼は、自分のプライドと軽率な判断が原因だとわかってはいない。人生の選択肢はゲームのように簡単に選んではならない。リセット機能は存在しないのだから。しかしながら頭が良ければ良いほど、他人の意見より自分の意見の方が明確で正しいと認識しがちだ。だからこそ選択しているようで、事実、繰り返し同じものを選んでしまっている。対等、若しくは自分以上の存在が現れない限り、永遠にループしてしまうのだ。


「初期魔法か。『ファイアボール』・『ヒール』の二択?『ファイアボール』だろ。仲間いねぇし。」


異変は直ぐに起きた。モンスターに遭遇し、魔法を選択する。


『投げますか?蹴りますか?』


「は?すぐ発動しないの?」


……彼は無意識に『蹴りますか?』を選択した。

足に懐かしい感触。流れる動作のまま、正確にモンスターに当てた。


~・~・~・

「……え?あれ?」


目の前には衝撃と炎で倒されたモンスターが焦げている。和巳は森の中にいた。ゲームそのままの世界に立ち尽くしてる。この状況は、すぐには解析など出来ようがない。


******ACT.22へ******

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