ACT.20 証されるヴェノムの苦悩

━━咲哉はマイペース━━


ミニデーモンドラゴンの額に埋め込まれた宝石をカリカリ外しに掛かっている。いつも通り、戦利品の回収ですねー。ブレないっすね、咲哉。毎日ゲーム三昧でしたからね。癖になっているんでしょう。ひたすら収集クエストとかやってた口でしょう。


「サ、サクヤさん?」


クリストファーくん、咲哉の行動を理解できていないようですね。


「……このクエストもあるかもしれないから。」


「た、確かにドラゴン系依頼は沢山あります。そうですね、最近あまり受ける人も少ないようですし、残ってると思います。」


理解してくれたようです。


「……なぁ、サクヤってどんなヤツなんだ?」


「俺の知ってることは表面的だぜ?曲がったことが嫌いな、一本筋の通った生真面目。負けず嫌いで弱いものには優しい。昨日、ザイラスを背中のサックにある剣で殴ったのを俺が止めた。」


「ザイラス?気の弱いヤツをカモりまくってる、あの最低野郎か。」


「知らないヤツはいねぇよな。……クリストファーが、一時期かなりカモられてたからさ。『クレリック』になれたばかりみたいで、絡まれたんだわ。」


「一緒にいたサクヤが好き放題言われてるクリストファーの代わりにブチキレた?」


「そーそー。俺、リアルで咲哉を見たことあるんだけど………そのときの状況と被って見えたんだよ。まさかって思った。でも……、本人だった。女って分かってたけど、なにも知らないずぶの素人感たっぷりだから、腕を掴んで止めたんだ。………久々に聞いたで確信した。変わらず、正義感溢れた人だなって。弓を射るときと変わらない、綺麗な姿勢。かなり独特なんだぜ?」


……すごい嬉しそうですね。


「……それで惚れたわけだ?"見たことある"ってことは、話したことはなかったのか。」


「ま、まぁな。…………そんときは"婚約者"もいたけど………別れたよ。」


「マジかー。あんだけインパクトある空気放ってる美人だしなー。"婚約者"だって充分、綺麗だったんじゃないのか?」


「………ああ、アイドル並に持て囃されてたよ。それが自慢だった。でも、それに固執するあまりに………性格が歪んじまった。別れ話は受け入れようとしなかったし、その後もしつこくつき纏われてた。………病的にな。」


「おまえ、口は悪いが性格さっぱりしてるし、顔だっていいもんな。……小さいけど。」


「身長は気にしてんだよ!わざわざ言うんじゃねぇ!」


「……おまえが暗い顔してっからだ。んで、今は綺麗さっぱり自由の身………ってわけでもなさそうだな。」


ヴェノムの頭をわしゃわしゃ撫でる。


「おまえは!……ああ、"解放"はされた。最悪の形でな……。」


ヴェノムの顔が苦しそうに歪む。


「……もう一人の女非常識区分セレクター、いや非常識区分スケープゴートか。」


押し黙るヴェノム。


「……俺が殺したようなもんだ。まさか、行方不明になってここにいるとは思わなかった……。」


……これは深い話になりそうですね。


******ACT.22へ******

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