ACT.18.5 project report file②

『━━project report file2━━


私は偶然にも見つけてしまった。多分ここは、平行世界とよばれるような場所なのではないか。だが、いるべきものがいない。そう、『子ども』がいないのだ。大人しかいない、モノクロのような真っ白な世界。私は一歩、その世界に足を踏み入れた。色なんてない、影で明暗の分かれたその世界は静寂に包まれていた。私のような存在が入ってきても、道行く人は気にも止めない。感情のない世界とでも言うのだろうか。色々探索を試みた。……探し物が見つかった。

私は、この世界に移住することを決めた。重い病の妻を、少しでも長らえさせる研究をするには素晴らしい環境だ。私の夢を実現するには『整いすぎた』場所。いや、きっと『準備』されていたんだと思った。私を待っていたんだ、この世界は。私は妻を連れて、自分のいた場所を後にした。そして私の理想を確率すべく、次段階の計画を進め始めた。』



この世界が何なのか、それを知るには情報が少なすぎる。彼は焦っていた。仕方ないことだ。彼の中に棲まう"狂気"は目覚め始めていたのだから。彼に理性が多く残っていたのなら、違和感に気がついたはずだ。いや、違和感しかないこの世界。あまりに彼の理想を熟知したような世界。逆に不自然さを問うべきだった。だが、この世界は"彼"を待っていたのだから、"彼"にあがらう術はなかったのだ……。




******project report file③へつづく******

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