ACT.18.5 project report file①

《━━project report file━━


今日こんにちの若者は、アニメやゲームの世界に憧れを抱く傾向にある。私自身は年齢もあってか、のめり込むほど興味はない。しかしながら、そのような若者の思考に興味があった。

未来を担うはずの若者。権力や権威でしか自らを見出だせない大人。現代は、若者には生きにくい世の中なのかもしれない。生涯現役を貫こうとすればするほど、若者の道は塞がっていくのだ。

オタクやマニアと言われる若者が、『二次元の扉を見つけたい』・『二次元に住みたい』とぼやくことを軽はずみに叱咤出来ない時代になってきている。未来を担うはずの若者を大人が自分の考えだけで決めつけ、束縛していいはずがない。

からそんな傾向にあるようだ。彼らの夢を守ってやるのが大人の役目ではないのだろうか。

私の子ども時代、世間体や自分の理想を押し付けられ、遊ぶことや楽しむことを禁じられていた。母を早くに亡くした私は、父の理想の傀儡にされそうになった。幸か不幸か、私には父の理想に応えられる資質はなかった。だから毎日のように、『出来損ない』と罵られ続けた。

そんな私も大人になり、結婚し、子どもを授かった。妻は優しいし、子どもは可愛かった。だが、次第に違和感を覚えた。妻は子どもばかりを構う、父も私を見ずに子どもを見る。私は驚愕するしかなかった。子どもが私のなし得なかったことを、成し遂げていく。覚醒遺伝というやつだ。

私は気がついてしまった。期待に添えていても添えていなくても、父がいつもと変わらない言葉を発する。そして、背を向けて微かに微笑んでいたのを。……私が欲しかったものを子どもが得ていた。子どもを通して父のことを理解出来た、してしまった。私はもう、欲しいものを得ることは出来ない。

未来を断絶された若者に、私のような後悔や苦渋を味合わせないために、探そう。どんな形でもいい、『安住の地』を、若者の言葉に直すなら『二次元』のような場所を提供したいと考えている。』


このときの彼は気がついていなかった。まだ純粋に、真っ直ぐに考えていた。しかし、『自分の子ども』への言い知れぬ深い複雑な想いに、気がついていなかった。


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