ACT.4 想いと決意

……ナレーションは朝まで放置されました。


咲哉が居間に顔を出す。エリーヤさんと一緒だ。昨日はあれから、カリムさんに街案内されたらしいが詳細はわからない。ナレーションの扱い、おかしくないですかー?!……文句を言ったところで届くわけはない。


「……あんた、本当にそれでいいのかい?」


心配されてますねー。ちょっとさっぱりした咲哉。……髪は切ってないんですね。後ろ髪をひっつめただけで髪型は然程変わっておりません。

咲哉はゆっくり頷いていた。細身だから、ゆったりした服着ちゃうと変わってないのと同じですけどー?


「……何かあったら言っておくれよ?主人じゃないけど、これも何かの縁だろうし」


一晩で何があったのでしょう? エリーヤさん、とっても溶け込んでます。


「おーい!起きてんのかー!?」


鍛冶場からご主人が叫んでおります。


「はいはい!叫ばなくても聞こえてますよ!さぁ、出来上がったみたいだよ」


エリーヤさんに付き添われ、鍛冶場に向かう咲哉。ご主人が晴れやかな顔で待っている。


「これは渾身の出来だぜ?あんた、弓の扱いは大丈夫か?」


静かに頷く咲哉。


「ん?……あんた、アーノルドの剣も持っていくのか?」


また静かに頷く。


「……そうか。アイツも喜ぶだろうよ。実はな……」


ご主人がエリーヤさんを見やる。エリーヤさんは苦笑しながら頷いた。


「俺らにも息子がいてなぁ……。アーノルドの親友だったんだ。アーノルドにこさえた剣の微調整は俺がするってんで、戦えもしないくせに付いていってそれっきりよ……」


……切ないですな。


「俺はついていってやれねぇし、エリーヤもだ。だが、あんた一人じゃきっとどうにもならねぇと思うぜ?だから、旅先で仲間を見つけて、アーノルドや息子のバルドーの弔いしてくれよな」


定石なお話で。多分、剣を離さない時点で咲哉もそのつもりだとは思います。……問題はデフォルト機能が何とかしてくれると信じたいです。NPCの皆さんの温かいお察し機能をフル回転でおねがいします。


「……ま、出立前にいっちょ腕前みせてくれや」


咲哉はまた静かに頷いた。そうですよねー。画面上ならボタン一つですみますけど、今はそうも行かないですもんね。

裏庭に連れていかれる咲哉。そこには試し切り用の丸太や、弓の的などが訓練場よろしく整っていた。おもむろに弓をつがえる咲哉。

言うだけあって様になってますな。……あの前髪で見えてるのかが謎。

一瞬後に何の躊躇いもなく、解き放つ。え?!はやっ!溜めみじかっ!……矢は見事、ど真ん中に命中。初めて咲哉の特技知りましたー。正直信じてませんでしたー。


「……ほう、見事だな。型も無駄がない。これなら問題ないだろう。……しかし、かなり重くなるように調整したんだがな。触れただけで把握したのか」


咲哉は静かに頷くだけだった。



ご主人とエリーヤさんは、それから何かと世話を焼いてくれました。食料や矢の補充、着替えなど。デフォルト機能でもここまで至れり尽くせりだと、後々この人大丈夫ですかね?


「まぁ、先ずは腕試ししながらだな。あんたの腕ならあっという間に金稼げると思うぜ?パーティ募集もあるから、そこで仲間も見つかるだろうさ。その場限りもあるが、運命ってヤツを信じていけよ!場所は城ん前の掲示板だ」


咲哉は頷いた。そして、少し深くお辞儀をして感謝の意をあらわした。サックを片手に、もう片方に弓セットを持ち、然程遠くもないお城へと一歩踏み出したのであった。


******ACT.5へ******

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