拾肆

 八月二十五日

 今日も隆一とデート。だけど、ようやくというかなんというか、優奈の話になった。

 隆一いわく、最近の優奈は笑わなくなった、思いつめたような感じなのだと。

 思い当たる節はと聞いたけどそれはわからないと言う。そこは相変わらずの鈍さだ。

 でもこればかりは隆一の力で解決してほしい。私は隆一の力にはなってあげても、私が片付けるようなことはしてはいけない。

 大丈夫。いくら鈍くても隆一ならなんとかしてくれるって信じてる。


 八月二十六日

 連日、隆一と会う。今日はデートというより相談事。

 優奈はほとんど口も利いてくれないらしい。会話の糸口もつかめないのだそうだ。

 その様子なら……私が行っても無駄な気がする。そこまで優奈が思いつめていたとは。

 時間が薬なのだろうか。でも放置しても状況は改善しないような気がする。


 八月二十九日

 隆一は心ここにあらず、といった様子だ。やはりへこたれているのだろう。

 ここまで来ると本当のことを言ってしまったほうがいいのかもしれない。優奈は隆一のことが好きなのよって。そうしたら隆一なりに解決策を見つけてくれるかもしれない。

 でもそれはできなかった。だってそれは……しばらく考えたが、どうも今の私の感情は言葉にできない。

 どうすればいいのだろう。私に残された時間は少ないのに。覚悟はできていたはずなのに。


 八月三十一日

 ごめんなさい。本当にごめんなさい。


 九月一日

 妹を泣かせていたのは隆一だけではなかった。私だってそうだった。隆一との時間に現を抜かして、由希のことをちゃんと考えられていなかった。由希はまだ小さくて弱い。私がいないと立っていられないような、そんな小さな存在なのに。

 自分たちだけ良ければそれでいいだなんて、そんな恋愛は絶対に間違っているから。

 私は昨日の出来事を通じて、これからはちゃんと妹を守ってあげたいと思った。

 それでは隆一は? 隆一の義妹(いもうと)をいつまでも泣かせていていいわけなんてないはずで。

 私を見てもらえなくなるのは怖い。

 でも。

 あと一年もすればこの世からいなくなる人間のわがままで、あの兄妹の仲を引き裂いてはいけない。


 九月十三日

 久しぶりの日記だ。しばらくバタバタしていたのと、いろいろ思うところがあって、日記をつける余裕がなかった。

 結論からまず書くと、この間ようやく三人で話し合いをした。ちょっとすったもんだはあったけど、優奈に自分の気持ちをようやく吐露させた。

 隆一は意外と冷静だった。いつもの朴念仁ぶりからすれば驚きそうなものだったが、どうやら彼なりに感づくところがあったのかもしれない。

 ちなみに隆一の答えはこうだ。なにかのアニメをもじって「お前達が俺の翼だ」だと。

 二人とも欠かせないということなのだろうけど、もっと他に言葉はないものか。今すぐ選べないのはわかるけど、どこまでもがっかりさせられる男だ。そういうところを含めても、私は好きなのだけど……。

 とりあえず当面の間は、私が彼女で、優奈が義妹、そのポジションは変わらないのであろう。

 でも私は予感している。隆一にとって一番大切な人は、おそらく私では、ない。

 あとは……私から終わらせるか、隆一から終わらせるか。それとも、私の体が力尽きるか、か。

 日記を書いて気持ちを整理させるつもりだったけど、全然整理なんかできていない。正直、これからどうしたらいいのかわからない。

 十三日。隆一の恋人になってから二ヶ月。

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