拾弐
七月二十八日
隆一が初めて家にやってきた。由希も懐いてくれたようでなにより。今はわからなくてもいいけど、私がいなくなってから、私に大切な人がいたことを由希には覚えていてほしいから。
駅前の商店街の夏祭りに三人で出かけた。本当は優奈も誘ったのだけど、なんだか友達との用事だということで来なかった。本当にそうだったらいいんだけど……。
夏祭り自体は例年と同じだったが、隆一と一緒に来るということだけで、こんなに楽しく感じるとは。
最後の最後に、隆一がそっと私の手を握ってくれた。その場で泣きそうになるくらい嬉しかった。
七月三十一日
隆一の家に夏休みの宿題を一緒にしにいくことに。
優奈と話をしたかったが、今日も留守だった。隆一に聞いたら、最近出かけることが増えたらしい。悪いことにならなければいいのだけど……。
今日は宿題をして、間におしゃべりをしただけで、それ以上のことはなにもない。でも、こうやって二人で一緒に時間をすごすだけで、今の私には嬉しい。
八月三日
明日は隆一と一緒に花火大会に行くことになった。
去年買ってもらった浴衣を来てシミュレーション。別に自分では己の見てくれはたいしたことないと思うし、周りからはどう言われようといいけど、でも隆一だけにはかわいいって言ってもらいたい。優奈が買っているファッション雑誌をいつも馬鹿にしていたけど、ちょっとだけそういうものを買いたくなる気持ちもわかった。
由希に最近のお姉ちゃん楽しそうだね、って言われる。由希にまで私の浮つきが気づかれるとは、今私はどんな顔をしているのだろうか。いよいよ末期症状かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます