六月二十七日

 今日は学校の帰りに久々に隆一の家まで遊びにいった。別に避けていたわけではないんだけど、なんとなくここのところ気まずかったから。いや、でも、あれは私じゃなくて隆一が悪いのだ。隆一が突然あんなこと言うから……。

 結局、隆一とはなんだか話しづらくって、いつものように優奈とじゃれあっているだけだった。あの子が最近ハマっているらしい、ドラマを一緒に見たけれど、全くもってどこがいいのかわからない。適当につっこんでいたら茶化さないでって怒られた。

 だいたいあのドラマ、男が安物すぎるのだ。なにが君は僕の宝物だ、だ。もっとマシな台詞があるだろう。女も女で、そんな台詞で恍惚とするのはどうかと思う。

 家に帰ったら、由希がかりんとうをハムスターのようにかじっていた。癒される。かわいい。


 六月二十九日

 学校を休んで検査の結果を聞きにいく。

 わかっていたことなので別に驚きはしない。親は気遣ってくれたけど、今後のスケジュールの目処が立っただけ救われた、というものだ。

 手に入れたいものは手にする。

 今一度、私はここに誓おう。残された時間は少ないのだ。


 六月三十日

 私は決めた。例のプロジェクトは七夕に実行すること、にする。七夕ならなんとかなる、なるんじゃないかな、ならないと困る。

 そうと決まれば、残すところはあと一週間。本番に向けて練習を開始。なんとかなる、なんとかなる、なんとかなる……。


 七月三日

 ずっと練習しているが、台詞を噛まずに言えたためしがない。正直焦っている。

 由希が駅の七夕の短冊にお願い事を書いてきたらしい。いわく「みんなで楽しく暮らせますように」だそうだ。小学四年生らしいお願い事でほほえましい。

 でも、ごめんなさい。私はあなたの約束を守ってあげられることができなくって。その代わり、私がいるうちは少しでも楽しく暮らせるように頑張るわね。


 七月六日

 いよいよ明日だというところでトラブル発生。なんと練習現場を由希に見られてしまった。親じゃないだけマシだと思うが、それでも恥ずかしい。

 結局恥ずかしくって、私は由希と遊ぶことで現実逃避。ここまでくればもうどうにでもなれだ。

 ちなみに、この日記を書いている今も、心臓の鼓動が止まらない。最近そんな歌、流行っていたっけ。


 七月七日

 わかっていたことだけど、やっぱり隆一は回答を保留した。

 うん、わかっていたことなのよ。隆一ってどうしようもないヘタレだから。でも、こっちは決死の思いでぶつかったのに、こういう形で水入りとなるのは、やはりどこかやりきれない思いはある。

 今日のところは断られなかっただけマシとでも思うしかない。

 夜、優奈がハマっているドラマがやっていたのでなぜか見てしまった。相変わらず面白くなかった上、いちゃいちゃしている二人を見て苛立ってしまった。爆発しろ。


 七月九日

 案の定というかなんというか、学校へ着くなり優奈と遭遇。どういうことなのと問い詰められた。

 別に私は優奈のことが嫌いなわけじゃないし、今後除け者にするつもりもない。優奈が隆一をどう思っているかなんて、私は本人以上に知っている。

 でも今回だけは譲れないのだ。今回だけは……。何度でも私は粘り強く自分の気持ちを説明していくつもりだ。

 本当は「私の余命はあとわずかなの」とでも言えば解決するのかもしれないけど。でもそういうのはなんだか卑怯で嫌だ。哀れんで譲ってもらう、なんて絶対嫌。正々堂々と、私は隆一を手に入れてみせる。


 七月十日

 告白から三日。

 遠回しに隆一に優奈の様子を聞いてみたら、特に変わりはないと言っていた。鈍いのにもほどがある。馬鹿野郎。

 イライラしていたら教室で発作がでかける。気をつけないといけない。でも元はといえば、隆一が原因だ。

 お願い、早く、私を解き放って。私のほうを……ちゃんと見て。


 七月十三日

 晴れて隆一の恋人になることになった。嬉しすぎてさっきから顔のにやけが止まらない。

 でも、これはあくまで始まりなのだ。私の短い春の。

 自分を戒める意味でも、そう日記に記しておく。

 今日は十三日の金曜日。なんだか私らしくていいかもしれない。もう戻れない契約は、今日結ばれた。

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