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「まさか店長が駄々をこねたから別れたっていうの?」

「あはは。そんなわけないよ。ただ二学期に入ってから、お姉ちゃんは夏休みのときよりかは遊びに行く機会が減ったのは事実だよ」

 ブラックばかりでは胃に悪いので、今度はカフェオレにすることにした。美沙と隆一にもすすめる。

「それって学校始まったからいつでも会えるからじゃないの?」

「確かにそれもあるな。茉梨とはクラスメイトだったから。ただ……」

「ただ!?」

 ぐいっと美沙は隆一の方へと身を乗り出す。今回はいいけど、他の客にはやめてよね、と由希は心の中でため息をついた。

「二学期が始まってから、茉梨の態度がよそよそしくなったから。もちろん恋人同士であったことは変わりなかったけど、でも夏休みの頃とはちょっと状況が変わっていた」

「つまり二股野郎の素性がバレて、茉梨お姉さんに愛想つかれた、と」

 美沙としては冗談のつもりだったのだろう。

 だが、由希と隆一はすぐには口を開けなかった。

「え、ちょっと、本当なの……」

「半分本当で半分嘘」

 由希としてはそう答えるしかなかった。

「二股野郎ってのがもしかして本当のこと?」

 こくりと由希はうなずく。隆一はなにも言わない。

「わからんわー。どうして彼女居るのに浮気しようなんて男は思うのかね」

 日頃年配客も相手しているだけあってか、どこかおじさんくさい美沙であった。

「あ、それは違う。浮気じゃないよ」

「いや、でも、二股って今言ったじゃん」

 ううん、と由希は首を振る。

「私と同じだったんだよ……優奈さんは」

 なにか言いたげな美沙を制して、由希は隆一に質問した。

「優奈さん、元気にしておられますか」

「あぁ、あいつはいつでも元気だよ」

 ここに来て初めて隆一は笑顔を浮かべた。

「今もストックホルムで暮らしているんですよね?」

「うん、そう」

「すとっく……ほるむ? 薬の名前?」

「美沙ちゃん。スウェーデンの首都だよ。北ヨーロッパの」

「へぇ……」

 あまりわかっていなさそうだった。

「で、なんの話だったっけ……」

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