2 どちらかといえばブルーマン
「地球を滅ぼすって?」
それを聞いて僕は高を括った。
これは所詮、少女の誇大妄想的なものなのだと。
「そんなこと、できるわけないだろ」
だからケンカなんてやめて、おとなしく家に帰ってママの作ったハンバーグでも食べるんだな……そう言おうとした瞬間だった。
「そんなことないの!」
と僕に異議を唱えたのは、意外にも小悪魔タタンではなく、タルトの方だった。
白い髪、白い肌に黄色みがかった瞳の、いかにも優しそうな少女である。
「タタンは今すぐにでも人類を滅ぼすことができるんだよ……?」
そう言って僕に詰め寄る少女の表情は、真剣そのものだった。ほんのり涙ぐんでさえいた。
得意げに胸を張るタタン。
「タルトの言う通りさ。あたいは、人間の脳に働きかけて狂わせることができる」
人を狂わせられるって?
なんだその特殊能力。
中二病かよ。
「お兄さん、もしや疑ってるな?」
タタンは不機嫌そうに僕に問うた。
しかし僕は首を横に振る。
「これが疑ってる顔に見えるか」
「見えるけど」
「違う。この顔は、お前を生温かい視線で見てる顔だ」
訝しるタタン。難解な数式に出会った時のように首を捻っている。
「どうしてそんな視線で見る?」
「いや、いいんだ。誰にでも自分が特別な存在なんじゃないかと思うような痛々しい時期があるものさ……」
「お兄さん、もしかして、あたいがウソついてると思ってるな」
するとタタンはやれやれと嘆息し、それから僕に言った。
「分かったよ。そこまで疑うなら…今からお兄さんを狂わせるからな?」
「へえ! やれるモンならやってみな」
そういうと、タタンは突然服を脱ぎ始めた。
「タタン...それは....!」
タルトの顔がみるみる青ざめていく。
僕の顔面も、どちらかといえばブルーマンに近づいていたはずだ。
「おい.......お前、一体何を....!」
「これでよし、っと」
あっという間に、タタンは上半身裸に、パンツのみというあられもない姿になった。
そのことに対して、個人的に思う部分はあまりない。僕はそういうタイプの性癖は持ち合わせていないからだ。その未発達な身体を見ても、興奮などしなかった。
しかしこの状況が、どんな性質のものであるかははっきりと理解できた。
そしてニヤリと笑うと、タタンは叫んだ。
「いやああああああああ変態いいいいいいいいいいいいい! 女子中学生の服を剥ぎ取るタイプの変態が現れたああああああああああああああ!」
「なっ!? おまっ!」
そんな具体的な叫びがあるか! などとツッコむ猶予は残されていなかった。
僕はおでんの入った袋を投げ捨てて、急いでその場を離れた。
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