要望
その飛行物体は、突然やってきた。
「あ、あれはなんだ。鳥でもない。かと言って飛行機でもないようだ」
そう人々がささやき合っているうちに、その大きな銀色の円盤のようなものは次第に近づいてきて、地上に着陸した。
中から出てきたのは宇宙人のようだった。
世界各国では大騒ぎになった。やれ、宇宙からの宣戦布告のための使者だの、いや、あれは友好のための使者だとかいう噂もあった。
各国を代表する使者が話しかけたが、宇宙人は聞いたことのない言葉で応答するばかり。
「困ったものだ。あの宇宙人は何を要求しているのだろう」
腹が減っているに違いない、と言って食べ物や飲み物を提供したものもいたが、全く宇宙人は受けつけない。それどころか、少しいらだち始めているようにも見えた。
歌や踊りを提供したものもいたが、まったく宇宙人は動じない。
そのほか、地球の文化を紹介するもの、大量の希少な鉱物を提供するもの、燃料を提供するものなどがいたが、宇宙人はまったく違うと言いたそうに頭を振った。宇宙人はだんだん焦っているように見えた。
人々が疲れ果てたころ、宇宙人は諦めたようにまた円盤にのり、飛び立った。
人々は落胆し、折角の宇宙との交流の機会を失ったことを大変残念に思った。
円盤の中では、こんな会話が宇宙語で交わされていた。
「なんだ、あいつらは。ちょっとトイレを貸して欲しくて立ち寄ったのに、話のわからんやつらだ」
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