第4話
詳しい描写は控えておくことにしよう。誰も得などはしない。結果としては今度所長に奢ることになったこと。少女に右ストレートをおみまいされたこと。体重が乗っており腰の回転の効いたいいパンチでした。あと警察は帰っていった。
とりあえず危険なので目隠し、猿轡、手首のところで両腕を縛ることによって、一旦少女を放っておく。むーむー!という無言(?)の抗議は一切無視だ。
「え?じゃあ何?お前が最近魔女狩りをしてたのって目当ての魔法を使うやつ探すためだったの?」
「そうですけど……………なんですか?僕が毎回好きで研究所に魔法使い連れ込んでるとでも思ったんですか?」
「だってお前が連れてくるの少女とか幼女ばっかだし」
「誤解ですよ」
実際、青年や女性も襲ってくることがある。その件については自分が「魔女狩り」をしていると公言しているためじゃあ自分たちで狩ってやろうというそういう輩が多い。まあ大体は警察あたりに倒れていたとか酔いつぶれていたとか言って預けるのだが少女達を一度連れていった時に誘拐犯と間違われて三時間ほど拘束された事がある。それからは少年少女はお持ち帰りだ。
水道で少し酸っぱい匂いのする何かを大量に吸った雑巾をぶつくさいいながら洗ってくれている所長はなんだかんだ言っていい人だと思う。
今現在少女を放っておいているのは何も準備をしないで魔法を読み取れるほど自分は魔法に詳しくないのでそれ相応の機器を準備している。それとその魔法をいつでも扱えるように魔方陣を錬成する機器も用意しなければいけない。
魔法陣というのは西洋の文献を引っ張り出すと大抵は人ならざるものを召喚するもの。悪魔や天使はその限りである。自分が使おうとしているのは魔法自体を人ならざるものと見た場合の陣である。それであれば生贄も必要とせず、出てくるのは意思の介入しない魔法現象であるため、さきほどやったように触媒とされるもので『描く』という意思さえあれば空書きでも魔法を行使できてしまう。
大抵の魔法使いはこの方法を知らない。というのも祝詞を上げて体内の魔力なるものを使った方が圧倒的に楽だからだ。その魔力というのが血で受け継がれ、増えてゆくものなので、日本人は基本的に魔法を使えない。外国ではほとんどの人が使えるらしいが日本人はたったのひとりしかいない。それでもひとりいるのがおかしいのだ。
「今回確保したのは『あたり』かも知れませんよ」
「えーっと、なんだっけか。消える能力?」
「あー。それもあるんですけど、人払いやってたんですよね。ですから何かを人の認識から外す能力かも知れません」
「あん?」
「人払いっていうのはそこに道がないということを思わせることが出来れば行けますよね?ですから道を人の認識から外したんです。」
「こじつけだなおい」
「こじつけが成立するならその方向に力を向けることができますよ」
目当てのものを見つけ、少女の前に置く。
「なんてったって、魔法ですから」
少女は日本語を理解出来ないので耳は塞いでいない。猿轡だけ外す。
『お前の魔法の真髄はなんだ?』
『……………答えるとでも?』
『答えないとなればこちらにも策はあるのだが』
『もういい加減飽きました。そんな問答の必要も無い。今までの会話の言葉はわかりませんが自分の記憶から解析すればいいだけのこと』
『え?逃げる一択なの?』
『むしろ留まる方が下策。あなた達の私への認識を最大限外すことで私に関する記憶から私の存在まで全てを知覚出来ないようにするまで!』
「~~~~~~~~!!!」
その人にしか理解できないであろう言語を重ね、少女の足元に魔法独特のキラキラとした魔力光が連ねられ、消えた。
「え?」
と所長。
『な、何よこれ!なんで発動しないの!?』
『昔話を聞かせよう』
『は!?』
『昔は江戸時代。黒船がやってきた時にお侍さんは戦いました。戦って戦って、敗れました。未知の魔法という力がすごすぎたのです』
『黒船戦争の事?』
『そうだね。それで、敵は上陸し、当時発展途中だった科学をすりつぶし、魔法の力で圧倒的な強さを見せつけ、略奪の限りを尽くそうとした。でも、』
パンっと手を叩くと少女はビクッと身をすくませる。
『魔法は使えなかった。なんでかは宿題ということで』
少女に歩み寄り、目隠しを外す。金色の縦に巻かれたその髪が自己主張を始めその碧眼がきっとこちらを睨みつける。しかしそれを無視して先ほど準備したヘルメット状のものをかぶせる。
『こちらにも策はある。そういったよ。ホントは使いたくないんだけどね。魔法というのは大体が個人の傷から生み出される。そんなものをのぞき見るなんてことはしたくないんだけど仕方ない』
スイッチを押し入れると、欠けていた魔法陣が魔法陣が完成し、魔法が発動される。
『あなたは……………何なの!?なんで魔法が使えるの!?何者なの!?』
『僕はただのしがない科学者さ。禁忌は犯すけどね。魔術師とでも呼んでくれ』
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