06.日常
(……)
意識が覚醒したら、そこは見知った自分の部屋やった。俺がこれからも生きてく場所。
悪夢でも見た後のように、ぐっしょり汗をかいとったけど。
あれは夢にはせぇへん。たとて寝とった時でも、俺にとっては紛れもない現実。
やって、総てを抜きにして自分自身と、悩みと、向き合っとったんやから。
思い返せば今まで何度も捕まってきてたし、これからも何度も捕まるんやろう。
多分、別に寝てる時だけやなくて。いつだって迷い戸惑うんやから。
忘れたらあかんのは辛いことばっかやないってこと。
どーしようもなく辛くても、その隙間に楽しいことは必ずあって。
すんごい金持ち、とか。めっちゃ格好良くてモテまくる、とか。
別にそんなんやなくても”幸せ”は、身近なところに仰山転がっとるってこと。
後は、ソレにどれだけ気付けるかや。
もし仮にソレが一つしかなくても、その一つに気付ければ人は前を向ける生き物。
「確かに、諦めるには早かったな」
絶望の中には思い込みっちゅーウソが巧妙に隠れとる。
ウソの中に紛れたホントウを見つけるんは大変なことやけど。不可能やない。
自分が、そうしようとすれば。”何か”は変えてける筈やから。
(その為にはまず、)
自分を変えていかなあかん。少しずつでも、着実に。
言わんでえぇこともあるけど、言わなあかんことは言うべきで。黙ってたって伝わらん。
それで分かり合える人が一人でもおれば、かけがえない財産になる。そして、
過去を振り返るんも必要やけど。振り返って後ろばっか見てても、そこに道はない。
やって、それは歩いてきた道やから。それに前を見るために、人の目は前についとる。
過去が作って来た自分で、未来を見る為に。やから俺は、これからも前を見続ける。
「大夢ー、ちょっと手伝ってー」
ほら、声が呼んでいる。関心ないなんて、俺の思い込み。
関係を築くためには、うっとおしがってたらあかん。
思い切るんは勇気がいることやけど。俺は、一人やない。
それは紛れもなく、優しい希望や。
パラドックス 箕園 のぞみ @chatnoir
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