03.過去

傷付けられる理由が、分からんかった。


小学生の時、デブって言われた。

嫌やった。でも、それは本当のこと。

言われたら嫌やから痩せる、なんてこともなかったし。ーーー 自業自得。


でも。


”気色悪い”って、なんやねん。

”バイ菌移る”って、なんやねん。


別に、太ってただけで。特にGを連想させらような髪型しとったわけでもないし、ゴミ屋敷に住んどったわけでもない。

顔だけで言えば、中の中や。俺よりイケでる奴がゴマンといるんやったら、俺よりイケてない奴もゴマンといる。

ちゅーか、頭だけでいえばクラスではトップ5には入っとった。テストはケアレスミスはあったりしたから基本的にほぼ満点。

90切ったら先生に心配される程やった。

そんな、どこにでもおる自動やった。


やから、理解出来へんかった。

なんで、仲間外れにされんのか。

俺の何が悪いんか。


辛くて辛くて、自殺したいと作文に書いたこともある。それが原因で先生に呼び止められた。でも、適当に誤魔化した。ココロは確実に壊れてきてたけど…親に知られたくなくて。

情けない話やけど、誰もおらへんところでよう泣いた。昼休みは、図書館にこもった。


なるべく顔を合わせたく、なかった。



中学生になって、私立へ行ったのに。

結局同じ言葉を浴びせられ続けた。俺のことは無視するくせに、俺が何かリアクションを取ると、笑う。相変わらず理解不能で、俺は孤立した。

関わられへんかった。人が、怖かった。


やけど、その状況に、俺は慣れた。

時間が傷を癒したなんてことはないけど


『合わん人とはどうしたって合わへん』


先生にこの言葉を言われて、納得した。

合わへん人ばかりなんやと。

一人でいる事が、苦やなくなった。

その後、別組に友達が一人できた。


二年生になって

また一人、友達ができた。

そいつらといるときは、楽しかった。やけど、先の一人は人気者で一緒におる時間が少なくて辛かった。

やって、やっぱ一人は退屈やから。

そやけどまぁ、束縛も出来へんし…後の奴が休みがちやったこともあり、一人の時間を過ごすことも多かった。

三年になって、随分マシになった。クラスの、ある一つのグループに入っとってら一人で弁当を食べることもなくなった。ちょっとバカやったりして、騒いで。俺が言われたくない言葉を言う奴もおらへんかったから。正直、楽しかった。


やけど、

頭の片隅ではいつも警戒しとった。

”いつ、また罵られるか分からへん”と。

”好かれるより、嫌われる方が楽だ”と。


本音は、好かれる人になりたかった。でも、ずっと好かれる人でい続けられへんから。結局途中で嫌われるんやったら、最初から嫌われとる方が精神的ダメージが少ない…

俺は臆病者の自分を嘘で隠し、大丈夫って言葉で塗り固めた。一線を、引くために。


諦めるのは、簡単やった。

それからかもしれん、追われるようになったんは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る