地底人


「何だ?」

 宇宙人の青年が足元に目を遣ると、ほぼ同時に、地面から何かが出てきた。

(タケノコ? いや、これは──)

 ドリルである。

「ドリル!?」

 ドリルである。

「ドリルッ!?」

 ギュルルルッと勢いよく回転しながら、ドリルの先端が地面から突き出ていた。やがて、その全貌が明らかになる。

 ──青年の頬をかすめながら。

「あっぶな!」

 1歩間違えば、顔に巨大な穴を開けられていたところだ。止血のために、ほっぺにツバをつけとく。血が止まった。さすがは宇宙人。

「この星には、ドリル法がないのかよ」

 ドリル法とは、ドリルを使用する際の注意事項的なアレである。上に人がいるところでドリるのはいけない。

 はたして、ドリっていた若い男が、開けた穴から「よっこいしょ」と出てきた。ドリルは、右手に装着するタイプだったようだ。

「おー。ここが地上かー」

 ドリルは、不思議なポケットに収納された。

「おい、そこのモグラ野郎! 危ないだろうが!」

「むー。オイラはモグラじゃないぞー。地底人だぞー」

「地底人? この星は、地下に人間が住んでんのか」

「お前は何者だー。まるで、宇宙人みたいな言い草だなー」

「実際、宇宙人だろうからな。オレは、ハウハウピロピロ・ヴェロヴェロリンリン・ナギナギ星から来た。この星は、どこの何星だ?」

「太陽系第3惑星の地球だー」

「オレの母星がある太陽系とは別の太陽系か(想像以上に遠く離れた星にワープしたんだな)」

「地上侵略の斥候に出てきて、宇宙人に会うとは思わなかったなー」

「(知らない星で、いきなり侵略者と遭遇か。救助が来るとしても、何年後になるのか……。ここは──)オレが手伝ってやろうか?」

「地上侵略をかー?」

「そうだ。その代わり、オレの身の安全は保障しろ!」

「別にいいけどー」

「よし!(これで身の安全は確保!)」

「さっそく、地上侵略に備えて情報収集だー」


 宇宙人と地球の地底人の会話が成立しているが、その辺の理屈はスルーで。

 これ、コメディーなんで。

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