第11話 本来、本物なんて出遭わない方が普通なんだ…2
スキルのアビリティ習得に一カ月以上も掛るとは思わなかった。
けどそれ以上の成果は上げられた。
――そう、魚と塩。
毒のあるのや危険な歯を持った奴等は居なかったお陰で連日大漁だったし、塩の代わりに塩分を含む植物の実も手に入れた。
そのお陰か、思いがけず熊肉も手に入った訳だけど。
楽じゃないけど誰かの悪意ある横槍が入らなかった分、のんびり出来た感じかな。
――思い返せば、元の世界に居た時は現実でもゲーム内でもずっと苛められっぱなしだったな…。
それこそゲーム内じゃGMに頼りっぱなしだった程に酷かった。
確かに良識的なプレイヤーやNPCにも出会えたけど、それでも僕を中心に悪意が襲ってきた。
主に現実世界でのクラスメイトや同級生からの苛めの延長線で、そのせいで僕もギルも深く傷付いた。
僕自身ゲームを始めた理由が現実世界からの逃避で、そこならおいそれと悪い事はし辛くなるだろうと考えてた。
でも見通しが悪かったせいで、あわや自宅が火事で燃やされる寸前までいくとは思ってもみなかった。
この事件は学校側も、また加害者の同級生の親も見過ごせる筈も無く、当然世間も騒がせる事となった。
あの時は加害者の親と良識的なマスコミ達に助けられた。
と言うよりこの事件を未然に防いだ加害者の親が記者だったため、結果そういう風な奇妙な流れになった訳なのだが。
兎も角、こっちに来てから切羽詰まった状況は有ったものの害意や悪意が存在しない状況で、初めて余裕が生まれたせいで油断してたのかもしれない。
ホームに帰った僕はすぐに夕食の支度に執り掛った。
まずは帰り際に拾った薪で火を起こす。
次に魚の腸を取って、木串に刺して炙る。
その間に鍋に水を入れて沸騰させてから
茹で汁を捨てて鍋を洗ったら、再び水を入れて沸騰させる。
魚が良い感じに焼けてきたので木串から外して、千切って鍋に投入。
次に熊肉を更に小さなブロック状に切ってから、短冊切りにスライス。
ぐつぐつと魚独特の、香ばしい良い匂いが辺りに籠め始め、食欲を誘った。
それから茹でた
最後に軽くソルトプランツから取れた塩を入れて完成!
○森の幸薫るスープ
評価:B
製作者:シェーシャ
・泉で捕れた魚で出汁を取り、
ほっと一息、味わい深い一品
まずまず、かな。
出来ればトレント茸も入れたかったけど、流石に食べてしまったものはもう戻らない。
色々と悔しいが、今度運良く茸が手に入った時にまた作ってみよう。
匙で掬って一口。
――ああ、幸せ。
口一杯に広がる魚の香ばしくもさっぱりとした味。
同時に熊肉から出た獣脂が交わり味に奥深さを感じさせる。
魚は骨まで食べれれるとあって、そのまま口へ放り込む。
流石に出汁が出た後だったけど、やっぱり自然が育んだ魚は美味しいと言わざるを得ない。
時折、
はあぁ~、生きてるって最高。
あっという間に鍋のスープが空っぽになってしまった。
この場合余っても仕方ないので、全部食べてしまう方が良い。
《称号に『美食家』が追加されました》
さてと、明日の事を考えて寝る前に熊肉を干し肉にしてしまおう。
香辛料は無いが、塩はあるので少し厚くスライスした熊肉に塩をまんべんなく擦り込み、馴染ませる。
それから調達した蔦と骨から作った鉤を使って壁に掛ける。
こうする事で肉から余分な水分が抜けるのだ。
但し、それには時間が掛ってしまうためほんの少しスキルを使う。
これで明日になれば、完成と言った所かな。
一通り作業が終わったからもう寝よう。
《『
寝ようとした直前、此処に来てイマイチ上げ方の解らないスキルのレベルが上がった。
解せぬ。
何故このタイミングなのか色々ツッコミたい。
ただ、自分の腕だけでコツコツと広げて行くよりもこの方が楽で有りがたいね。
言うまでも無くYを選択。
《拡張の承認を確認しましたので、追加特典として【
――はい?
何だこれ?
色々おかしい。
えーっと…つまりだ、要約すると“アイテムがっぽりウハウハゲッチュだけど魔物出ちゃうみたいテヘペロ☆後は宜しく~”って事で合ってるよね?
説明文はオブラートに包んでるけど、つまりはそういう事…。
うへぇ、何と言う。
うーむ、確かに森の中が資源不足なのを考えるとなるとデメリットを抜きにしても確かに有用なアビリティだと思う。
デメリットの魔物のポップだって考えようによっては“生きた資源”として捉える事も出来るし。
とは言え外部から招き入れて家が荒らされても困るので今は止めておこう。
後は良いや。
もう寝よう、お休み。
《拡張が完了しました。確認してください》
『キュワァァン』
目が覚めて早々頭の中で何時もの声が響いて来た。
眠い…。
でも起きないと何も始まらないのでゆっくり身体を起こした。
寝ぼけ眼に立ち上がってふらふらと壁に掛けたジャーキーを取ってもしゃもしゃと食べた。
しょっぱくて固いけど、今はドラゴンの歯なので簡単に引き千切れた。
別枠で作っておいたトレント木材製の水筒に入れていた水を飲む。
うん、起き掛けの水分補給はやっぱり五臓六腑に染み渡るねぇ。
――もっちゃもっちゃ、ごくん……けぽ。
ふう、御馳走様でした。
忘れていたけどアイテムボックスに入れておいた昨日茹でた余りの
そろそろ
取敢えず出掛ける前に拡張した場所を確認しようかな。
洞窟の奥、最初に来た時行けなかった場所に行った。
――あの時は身体の細い人一人分の狭さの隙間しか無かった。
それが今はどうだろうか。
僕が進んでも大丈夫所か、幅に余裕がかなりある程の通路になっていた。
其処からどんどん進んで行くと、水の流れる音が聞こえて来た
更に進むと広場に出る。
地底湖らしく、水がこんこんと流れて行ってる。
それにしてもかなり広い。
大体東京ドーム三つくらいは余裕で入りそうな広さだ。
『
○フェルマ水洞
・フェルマの大樹海に幾つか存在する水中洞窟。
気の遠くなる様な永い年月を経てフェルマ大火山の雪解け水に浸食され続けた結果、この様な水中洞窟が生まれた。
その広さは大陸全土まで広がっており、全てを探索するにはかなりの歳月が掛るだろう。
尚一部は
【試しの門】⇌【???】
領域鑑定の結果はこの通り。
成程、今僕が居るこの森はフェルマ樹海と呼ばれる場所か。
ご丁寧にこの
全く、ホント『
元々バラバラに存在していた単なる高レベルのスキルが、『
チートじゃないとは言え結構反則的なスキルである事には変わりは無い。
と言うか改めてメニューからステータスウインドウを開いて確認してみる。
名前:シェーシャ/ギルガメッシュ
性別:雄型
種族:
職業:
装備:『サイバーカタナ・トレントカノン&サイバーカタナ・トレントカノンMk‐Ⅱ』
称号:『異世界者』『転移者』『境界超越』『機械生命体』『青空を掴む者』『伐採者』『
能力:
○
・『
▽【
▽【
▽【
・『
▽【
▽【
▽【
▽【
・『
・『
・『
○
・『
・『
・『
・『
あらまぁ何と言うトンデモスキルのオンパレードでしょう。
後から生えてきているとはいえ、まさに“強くてニューゲーム”状態である。
《『
此処に来てまた妙なものが生えてきた。
ねぇ、ちょっと何処まで増える気なの…?
もう何だか嬉しいやら頭痛いやら。
ああ、本気で胃薬が欲しくなってきた。
兎も角、今更ながら懸念事項が増えた瞬間だった。
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