第10話 本来、本物なんて出遭わない方が普通なんだ…1
武器について思考放棄した僕は、代わりの武器を手順で作った……作った、のは良かったんだけど作った途端にまた変質して同じ物がもう一振り出来てしまった。
ただ違うのは『
『
頭が痛い。
全く、どういう原理で妙ちくりんな力が働いてるんだろうか。
う~ん謎作用、もとい謎仕様。
気が付いたら狩りをするにも遅い時間になってしまった。
…仕方ない、か。
項垂れながらもタンクの水をちびちびと飲む。
機械の体だから汗掻かないのに、今は喉が渇く。
そのせいかやたら水が美味しく感じられた。
次の日、僕は素材集めの為に何時ものコースを移動する。
思うんだけどこの森、どう見てもトレントの比率が多い気がする。
いや、僕の思い過ごしだと思いたい。
其処等辺はまぁ一応助かってるんだけど根本的に食材となる物が非常に少な過ぎる。
今の所、狼・椿似の実・薬草・茸・熊・水。
指で数えるだけしか無いってどういう事なのかしら?
どうやらこの森、僕が思ってるよりかなりツッコミ所が多いぞ。
食料だけでも、何とかならないのかなぁ。
セオリー通りなら森と言ったら住人であるエルフと遭遇して物々交換…はこの見た目じゃ絶対無理か。
居ないものに期待して待ちぼうけを喰らったら目も当てられない。
こうなったら皮算用で惨めな思いをする位なら、自力で探してやる!
いやまぁ、それが正しいと思ってるからこうして散策してるんだけど…むむむ、どうしたもんか。
…なんだか此処に来てから悩んでばかりだな。
だからか、どうも最近落ち着かない。
兎も角、今の目標は食糧難をどうにかするかだ。
こう、お腹が空いてちゃやる気が出ないしそもそも動く気にもなれない。
でもしなかったらしなかったで餓死する可能性がある。
いや、僕の場合永久的に機能停止してその間に素材に解体されかねない。
嫌だ!
絶対に嫌だ、そんな末路!
兎も角、生き残るためにはまず食糧を一定数確保しなきゃどうにもならない。
今はカメロの木を何本か確保して植林すれば何とか持つ、かもしれない。
尤も、年間で安定して確保できればの話だけど。
…それはそれで置いといて狩りに集中しないと明日のおまんまにありつけない。
そう考えると前回の狼や熊を狩れたのは特殊な例だったんだと思えて、何とも言えない感情になる。
これ以上考えるのは危険だ。
物欲センサーを刺激しかねない。
…何だろう、此処に来て随分ネガティブになった様な気がする。
…悩んでも仕方ないか。
泉に到着。
此処まで遭遇、無し。
取り敢えず泉がどの位の深さまであるのか潜らないと。
もしかしたら魚でも取れるかもしれない。
そんな機体に胸を躍らせながら顔を突っ込んで水中を見通す。
なまじ機械の眼のお陰で水中で目を開きっぱなしでも痛くなる事は無い。
と、同時に『
――へぇ…意外と深い。
凄い、水が綺麗だから底まで見通せる。
こりゃ泉と言うより湖と言っても過言じゃない。
おまけに洞窟まで見付けた。
(ふむ)
――とは言ったものの、普段のこの体型で何処まで泳げるのか解らない。
う~む、突っかかったら呼吸もままならなくなるし…。
《『
最早突っ込みはすまい。
脳内に響く懐かしの音声に溜息を吐きながらもYを選択。
《『
これでよし、と。
深呼吸…からの――
(…おお? おおおっ!?)
がしゃこんがしゃこん、かしゅんかしゅんと某宇宙から来たロボット生命体の如く金属特有の音を立てながら変形していく。
音が止んで水面に映る自分をそっと映す。
…ナニコレ?
うーむ。
【
初めての姿なので少し泳いで慣らしてたんだけど…ぶっちゃけ人間とは泳ぎの動き方が違うせいで気分は最悪。
なんか、こう、なにかが突っかかった様な、胸がこう、もやもやーっとする…そんな感じ。
確かに魚は手に入ってるけどさ…やっぱ人とその他の動物の泳ぎ方が違うせいでもうちょっと練習しなくちゃいけなくなった。
そこから暫く経つんだけど、未だにこの
折角習得した《【
あ、でも捕れた魚は美味しいよ?
塩は無いけど、
後はカメロオイルで素揚げして食べたけど美味しかった。
せめて岩塩だけでも確保したい、と願わずには居られなかった。
え、折角
そんな度胸今の僕に有る訳無いよ!
まぁ確かに生肉摂らなきゃビタミン不足になるかもしれないけど、その分葉っぱとか食べてるじゃないですか。
それに今の僕でも、手を加えた生肉料理なんて一度も作った事無いのに出来る訳無いじゃない。
内臓系は食べるのにも特に下処理が面倒だし。
それから数日、泳ぎは一向に上達できず、岩塩も見付けられなかったが、その代わりに塩味の物を見付ける事が出来た。
その名も『ソルトプランツ』という植物。
全体的に見るとこの森はミネラルやナトリウムと言った栄養素が不足しがちだと感じる。
そこで、狩りたい気持ちをぐっと抑えて、森の生き物の動きを徹底的に追い掛けて見た。
久々の厄介熊。
感知されない様にじっと息を潜めて観察する。
するとどうだろう、熊は移動の合間に何かをちぎってぱくりと一口。
立ち去る所をすかさず仕留めて、熊が食べた辺りを見るとなんと発見したのだ。
それが『ソルトプランツ』。
見た目はひょろっと細長い幹だが、無数のシャボン玉の様な実が生っていた。
試しに触ってみた所ひんやり、それでいてぷにゅんぽにゅんと水風船みたいな感触で結構面白い。
それからさっきの熊みたいに口に含んで舌で潰して――――。
「――――っ!!??? ~~~~~~!!!!」
こっから先はもう酷いとしか言いようが無かった。
そう、あれはまるで煮詰めた海水を一気に飲んだ…そんな感じだった。
なので両手で口と鼻、喉を抑えて思いっきり地面をゴロゴロ転がる始末。
ただまぁそんな地獄絵図を描いたお陰で泉で捕れた魚や仕留めた熊肉の味がぐんと良くなった。
其処に海苔や軽く茹でた
肉と野菜、もう最っ高!
取り敢えず活力が戻った気がしたので、もう少し頑張りますかね。
何時も通り、水中に潜る。
これまで意識してなかったけど、そうだな…イメージは亀。
そう、亀。
勿論“陸亀”じゃなく、“水亀”。
両手両足共にオールの様な鰭に変わってるんだから、似た様な動きをする生き物の動きを想像すれば良い。
…そういや水亀って図鑑でしか見た事無いや。
でも大まかな姿はイメージ出来るから…こうして、ああして……こう、かな?
《【
――やっと出来た。
同時に(仮)が剥がれて漸く習得できた。
と言うか泳ぎでこんなに掛るとは思ってもっ見なかった。
と言う訳で早速洞窟探検――する前に復習がてらもうちょっと漁に勤しむとしようかな。
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