第8話 どらごんてきさばいばる(何か違う気が)7

《『領域接続スキャニング・エリアコネクト』のレベルが1→2に上がりました》


はい、突然生えた転移陣にびっくらこいたトカゲモドキメカドラゴン、もといシェーシャです。

まぁトカゲモドキメカドラゴンと言っても決して悪い宇宙人に送り込まれたロボットだとか、殺しても死なない様な口から光線が出せる恐怖の真っ黒トカゲと戦うために人類によって作られた物でも決してないからね?

それはさておき、拠点同士が繋がった事によってスキルが上がったのは正直嬉しい。

といってもまだ【簡易拠点インスタント・ポータル】ひとつ持ってるだけであっぷあっぷだし、何よりまだ拡張が出来ない状態。

こればっかりは地道に鍛えるしかない。

気を取り直してそろそろ食事の時間だけど…もう熊肉の在庫が残り少ない。

無いよりはマシだけど、明日また獲物を狩ろう。

そんでもって、今度こそ有用な植物――この場合は食用の――を見付けてやるんだ!

僕だって肉料理は好きだけど、今は食物繊維が恋しいお年頃なんです。

と言う事でお休みなさい。


翌日、起きた僕は最後の(焼き)熊肉を胃の中に納めて出発。

流石に連日肉だけで過ごすのがキツくなってきた。

目的地は昨日新たに建てた橋、それまでに何か見付けられるかな?


《『操機闘術ドッグファイト・アーツ』のレベルが9→10に上がりました。『龍闘法ドラゴニック・アーツ』のレベルが10→11に上がりました。『真実見抜く龍の眼ドラゴニック・トゥルースアイ』のレベルが5→6に上がりました。称号『伐採者』を獲得しました》


かれこれ突き進んでミスティ・トレントを狩りました…と言うかさっきからそれしか出てこない。

スキル的にも? 素材の確保的にも? 美味しかったけど、さ?


○百年魔樹の青葉

レア度:B

品質:C

劣化度:0%

備考:ミスティ・トレントの葉

一般的には上級回復藥の素材として扱われている

ミスティ・トレントの強さと葉の量から敬遠されがちで、現在では取り扱っている薬剤師は極僅か

効能は此方の方が上である


○百年魔樹の根

レア度:A

品質:C

劣化度:0%

備考:ミスティ・トレントの根

魔力による柔軟性・伸縮性に長け、加工すれば主にベテランの扱う鞭の材料として使用されるのだが、昨今は一般的な冒険者にも見向きもされなくなってしまったので現時点で誰ひとりとして知らない、忘れ去られた素材となってしまっている


狙った食材じゃ無かった。

というか根に関してはバックストーリーが悲惨なんですけど!?

ん゛、ん゛っ~、コホン…ただ、然るべき場所で取引すれば何かの役に立ちそうなので取っておく事にする。

…え、ドラゴンは普通そんな事考えないって?

嫌だなぁ、これでも中身は人間様ですよ?

身体はドラゴン、頭脳は人間!

鑑定出来とけない謎は――――おっと、ゲフンゲフン。

あー、それは兎も角、根は加工出来れば丈夫なロープに出来るかもしれない。

まぁ確かに鞭、と聞いて一瞬委縮しかけたけど一種のロープとして使えば恐くない…………多分。

うん、そうだよね? うん、絶対にそうだ。


更に移動する事数時間、漸く例の泉を通過して昨日の橋の所に到着した。

戦果はと言うと、薬草・茸・苔・狼・巨猪、etc…。

いやぁ、ついにですよ?

薬草と言う事に目を瞑れば食用の葉っぱが手に入った。


輪廻草ララクラフト

レア度:F

品質:C

劣化度:0%

備考:一般的にポーションに使用される多年草の薬草

かなりえぐみが有るので飲むのには非常に勇気が必要だが、慣れてしまえばどうという事は無い

ゆがいて灰汁を取り除けば回復力はかなり落ちるものの、食材として市場に出回っている


○トレントダケ

レア度:B

品質:C

劣化度:0%

備考:トレントが近付くと一斉に胞子を撒き散らした後に枯れてしまう茸

共生というスタイルを取らず群生して一方的に栄養分を搾取しながら成長、枯らしていくのでトレントが一種の表徴として機能する森では駆除対象として指定されている

その一方、非常に美味で乾燥された物が珍味として市場に出回っている他、薬としても効能が高いらしい


○山海苔苔

レア度:D

品質:C

劣化度:0%

備考:どの山にもある苔で、生のまま食べても歯応えが良い。

綺麗な水で洗浄して塵を取り除き、刻んで簾で濾して板状に乾燥させたものが一般的に市場に出回っている


一番最後の方が如何にも平凡な感じで、フレーバーテキストも何かの悪意が無い分良心的な内容だ。

良い事である。

だがなキノコ、あんたは駄目だ。

確かに身体に良いかもしれなけど、自分が伐採する分のトレントを死地に追いやる不届き者だ。

狩ってやる…徹底的に狩ってやんよ!

そして、我が胃袋の中に収納しちゃる!


さて、無駄な妄想は此処までにしといて昨日の続きーーーーと思ったけどお腹減った。

というかそろそろ中天に差しかかってる!?

…仕方ない、早いけどお昼にするかな。

昨日伐採して橋作りで余った木材をまきに、火を起こして茸を幾らか即席の木串に刺して炙る。

塩は、無い。

だけども炙っている内にじゅうじゅう、と汁が溢れてきて見てるこっちの食欲が掻き立てられた。


――――今直ぐ齧りつきたい!


逸る心を抑えてじっくりと回転させながら均一に焼いてゆく。


――――…よしよし、良い具合に焼けて来たぞ。


機械の肉体なのにお預けを喰らってるかの如く、目の前の食材に涎が溢れそうな衝動に駆られる。


――――今だ!


みっともなく目の前の餌にかぶり付く。


『キュルォォォ!? キュル、キュル、キュル~!!』


…嘘、なにこれ!?

…に、肉汁が口の中一杯に広がって…しかも高級霜降り肉を食べている様な…え、ちょっ…!?

普通に塩とか振らずにただ焼いただけなのに…ああああああああ~!!

う、美味過ぎる!!

これが茸!?

茸なのに!?

しかも噛めば噛む程旨味がどばっと襲い掛かってくる!

――落雷?

違う。

――洪水?

違う。

――雪崩?

違う。

――噴火?

違う。

――隕石?

違う。

――超新星?

違う。

そうだ、ビッグバン。

今、僕の中の宇宙が新たな産声を上げた様な…そんな衝撃だ。

もっと、もっとだ。

初めて狼肉を食べた時以上の感動を、衝撃を、味わっていたい!

…これはトレント茸こいつの認識を改めないといけないな。


――――結局、僕はボックスの中身を含め、手持ちの茸を全て食い尽してしまったのだった。

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