1ー9 復活

「いや〜〜、今回はマジで死んだかと思ったな。アルフレッド」


シャワーを浴び終わってソファーで寝っ転がってテレビを見ながらデイビッドはアルフレッドに話しかける。テレビの内容はどこも戦前の再放送ばかりだった。


「いや死ぬわけないだろ、あんなので。俺たちは吸血鬼だぞ」


逆にアルフレッドはシャワーを浴びずに汗臭いまま眼鏡をかけパソコンに仏頂面を向けていた。


「吸血鬼は意味が違うだろ。どっちかっていうと俺たちはグールだ」

「どっちでもいいわ。おかげでこんなに食費が……うぅ」

「おい、泣くなよ。力を出すためにはこれくらい食わなきゃいけないんだし」


彼らは街に帰ってくるなり、町中の食堂やレストランを練り歩き食べに食べ続けていた。


「この能力のおかげで助かったわけだしさ」

「うぅ……。そうだがな。それにしてもこの能力には毎度驚かされる。もうこの力がついてから何年も経つのに未だになれない」


二人の能力とは人間離れをした治癒能力のことだ。心臓が動き続ける限り心臓から魔力が流し続け体を治していく。

もちろん代償はある。二人の魔力の源は食事にある。度合いにもよるが回復すると二人は急激な食欲に苛まれる。それこそなんでも食べる。木や土、そして人間すらも。 なのでアルフレッドは自分を吸血鬼と呼ぶ。


「それよりもようやく調べ終えた」

「おお、すげーな。データが残ってたのか」

「俺たちよりも前世代のものだからな。軍部もそこまでこの情報を壊してしまおうなんて考えなかったんだろう」


デイビッドはアルフレッドのパソコンに近づき画面を見る。


「つーか、お前やっぱり汗臭いぞ。シャワーだけでも浴びろよ」

「うっさいわ、ボケ。これが終わったらお前のスーツの調整が待っている。そんな暇はねえ」

「……すまんな」


スーツの調整も情報を調べることもデイビッドは得意ではなかった。前にパソコンに触って煙が出してからアルフレッドはパソコンを使わせてくれなくなった。


「お前が自分から謝ってくるのは珍しいな。まあいい。これを見ろ」


画面には自分達を襲ったロボットの設計図が映っていた。


「こいつか」

「ああ、人神戦争の初期に設計、製造された第一世代の対神兵器。通称『クライマーズ』」

「くらいまーず?」

「犯罪者たちって意味だ。魔力源に犯罪者の心臓を用いたことからきているらしい。戦闘の中では天使とは同等に戦えたが、神相手では一度も勝った記録がない」

「あいつそんなに弱かったけ!?」


デイビッドは驚く。戦ってみた感じでは第二世代以上だと推測していたのだ。


「情報によると機体によって力のバラツキがかなりあったらしくて安定した生産ができなかったらしい。一機ごとの汎用性が乏しくそれぞれが役割ごとに動き、数で戦う戦法をとっていたらしい。ただ、生産性にかなり富んでいたから最後まで大量生産されたらしい。さらに……」

「おいおい、さっきからずっとらしいばっか言ってるぞ」

「仕方ないだろ!いくら軍の情報だからって不確かな情報なんだかららしいってつけてもいいだろ!お前は俺の話を黙って聞いていればいいんだよ!」

「あ〜〜!言いやがったな!やっぱそれ貸せ、俺が調べる!」


森でのリベンジとまた貸せ、貸さないの物取り合戦が始まった。

すると、コンコンとドアを叩く音がする。


「はい!開いてるんでどうぞ!」


キーッと立て付けの悪い音がしてドアが開く。入ってきたのは杖をついた老人だった。


「……お楽しみのところ失礼した」


キーッ


「おい、クソジジィ何勘違いしてんだよぅ……」

「いや、人の考えを否定する程に俺は頭が固くないんだよ。大丈夫、あと一時間程したら帰ってくるからその間イチャイチャしまくればいい」

「やっぱ勘違いしてんじゃないか!おい、デイビッド!何かお前も言ってやれ!」

「一時間で終わるわけないだろ!」

「そっちじゃねえよ!」


はあはあとアルフレッドが息を整え、ソファーでは老人とデイビッドが握手をして仲良くなっていた。


「若いの、中々の腕を持ってるな」

「爺さんこそいいセンスをしてやがる」

「……で爺さんは何しにきたんだよ」


当然の質問をアルフレッドが老人にすると、老人は表情を暗くする。


「挨拶が遅れた。俺の名前はジョンソン。この町で医者をしていた」

「で、そのジョンソンさんが俺たちに何の用なんだ?」

「町でお前らがあの森でロボットに会ったという噂を聞いたんだが、本当か?」

「「あーー……」」


確かに二人は食事をしていた時に、ロボットに負けたことに腹を立ててあのロボット次見つけたらボッコボコにしてやるだの不意を打たれたから殺されたのだのと大声で話していた。

相変わらず二人にはデリカシーのかけらもない。女性からの依頼が少ないのもこの為だ。


「本当だよ。で、それが?」


噂が本当だと確認したジョンソンは二人に近づいて質問をぶつけた。


「お前らあのロボットに勝てるか?」

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