社畜アラサー1人飯

赤猫

第1話 油揚げは最強

東京の郊外で一人暮らしを始めてはや数年。

気がつけば、貯金が全然たまらない。


私の職場は、別に実家からでも通える距離なので、実家に暮らしていれば今の家賃分位は丸々貯蓄に回せるのだが、いかんせん今の住まいが都心に向かう電車の始発駅から徒歩数分という最強の立地環境なので、実家に戻るという決断には至らなかった。


そこで、私が下した決断はこうだ。


とりあえず、食費を削ろう。


幸いにも私は料理が好きだ。

料理だけはどんなに忙しい時でも唯一苦痛にならない家事なのだ。

むしろ、料理がストレス解消になるくらい好きなのだ。


しかし、私の職業は

世間一般では、過酷な勤務時間でブラック職業というイメージが浸透している、システムエンジニアで、世間一般のご想像通りに、平日は帰宅が遅い。

時間が無いのだ。

だから、とにかく時間をかけないで美味しい料理を作ろうと思う。


帰宅が遅いのならば、夕飯など食べずにさっさと寝たらよいと思われるかもしれないが、それが22時、23時帰宅とかならそれも有りだろうが、中途半端に20時とか21時帰宅の場合はどうだろう。

そのまま寝るにしても少し早すぎる。


まさに今日、そんな中途半端な時間の20時過ぎに帰宅したのだが、私は冷蔵庫の中にある油揚げで、手間をかけずに、手軽に食べられるお気に入りメニューを作ることにした。


作り方は至って簡単だ。


フライパンに油揚げを一枚、乗っけて加熱する。


油揚げは油まみれなので、フライパンに油はひかず、そのままで油揚げを焼くのだ。

途中、焦げすぎないように様子を見ながら両面をこんがり焼くのだが、基本数分間放置でいい。その間に別の作業が出来て効率が良いのも、この料理の利点だ。


そもそもこれが料理と呼べるかも怪しいが、兎に角、油揚げをフライパンで素焼きしている横で、玉ねぎのスライスを同時進行で量産する作業に取り掛かる。

食べる分量はその人の好みで調節すれば良いと思うが、私の場合は、油揚げ1枚に対して、大体4分の1の量の玉ねぎをスライスする。生で食べる玉ねぎなので、可能な限り、薄く、薄くスライスする。

玉ねぎには当たり外れがあって、生で食べると辛いものが中には存在しているのだが、可能な限り薄くスライスする事で、その辛味もまぁ誤魔化せるというのだ。


また、この玉ねぎをスライスする作業と同時進行で、ご飯を温めるという作業も行わなくてはならない。

このご飯を温めるという作業のメインターゲットとなるご飯とは、パックライス又は、休みの日に大量に炊いておいて小分けして冷凍して置いたご飯を指している。どちらのご飯を使ったとしても、電子レンジに放り込んで、数分間待つだけの簡単な作業なので、


油揚げをフライパンで焼く

玉ねぎを薄くスライスする


という既に行っている2つの作業と同時に行うことは難しく無い。


玉ねぎのスライスが出来上がり、ご飯が温まる頃には、油揚げも丁度良い焼き加減に仕上がっていることだろう。


温まったご飯を丼に盛り、その上にスライスした玉ねぎを敷き詰める。

更に、焼き上がった油揚げを縦に半分に切ってから、5mm〜1cm程度の好みの大きさに切り揃えて玉ねぎの上にばら撒くのだ。

仕上げに好みの分量でポン酢をかけて完成だ。


油揚げがポン酢を吸い込んでいて、噛むと じわぁっ と口の中で味が広がりこれが最高にご飯が進むのだ。

また、油揚げだけではちょっと油っぽくなってしまうが、さっぱりとした玉ねぎのスライスと一緒に食べることで、丼一杯分位はサラリと食べられてしまう上に、何より、生の野菜を食べることで何となく、健康的に良いだろうという満足感も得られるのだ。


油揚げも玉ねぎも、兎に角安い。

このご飯一人前を作るのに30円もかかってないのではないだろうか。

30円でこんな幸せな味が楽しめるのだから、貧乏飯も捨てたものじゃない。


油揚げは80円位で5枚も買える上に、食べきれなかった分は冷凍しておけるので、倹約したい一人暮らし飯にとっては本当に必要不可欠な存在である。

そんな事を改めて痛感しながら、ポン酢の染み込んだ油揚げと玉ねぎスライスを一口分のご飯と一緒につまみ上げ、口の中で広がる程よい酸味を堪能したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社畜アラサー1人飯 赤猫 @s_rayja

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ