第5話

翌朝、目が覚めると視線を感じ身体を起こした。

すると、皆が俺を囲んでいたのには驚いた。

びっくりしたぁ…


「おにい…部長、あれからどうなったのですか?」

難しい表情をしてる部長は、口を開いてきた。

「お前は賭けの事を知っておきながら、俺には何も言わなかったな。」

賭け?

「ナツキを落としモノにしたら1万円。」

あっ、そういえば茂から聞いたんだっけ。

「でも、お前は彼女を振った。そこまでは良い。

どうして俺に言わなかった?

あの女は、俺を狙ってたのだろ。」

A校短距離のナツキを。

「ごめんなさい…」

俺はそれしか言えなかった。


俺は日下夏生(なつお)。

でも、部長であるお兄ちゃんは、日下奈胤(なつき)だ。


「はいはい、そこまで。

でも、問題はすべて解決したから大丈夫だよ。」

「そうそう。ナツキもね、弟のことになるとマジになるからなぁ。」

ブラコン兄さん、家に帰ってから喧嘩してよね。

「あ、そうだ。昨日の服ね、洗って干してるから。乾くまで待っててね。」

「まぁ、午前の練習が終われば、乾いてるな。」

やだよねー、あんな女子。

男漁りのために、合宿来てるんだってさ。

練習頑張るために来てる女子もいるのにねー。

お前達も、悪い女に引っかかるなよ。

「はい!」

と、返事をしたのは1、2年生だ。


朝食後、全体ミーティングをした後は午前の練習。

その後は、部屋の掃除&荷造りだ。

そして、1時間強ほどの自由時間。


ひと息ついた俺は、初めての合宿を振り返った。

キスだけだったけど、嬉しかったな。

あんなに気持ちが良いモノだとは思わなかった。

エイさんとは、これで終わりかあ。

良い思い出になったよな。


ダッシュをかけて先生を飛び越えて、部屋に戻った事。

あとで、しっかりとお仕置きをされた事。

エイさんと出会い、キスをされた事。

服を剥ぎ取られてマッパにされた事。

ん・・・

ふ、服。


あー!

服を忘れてたぁ…

洗濯場に急いで行き、自分の服を確保した。


忘れるとこだったよ。

すると、誰かの笑い声が聞こえてきた。

む、茂か?

いや違った、エイさんだ。


くっくっく…

笑いながら、俺に言ってきた。

「夏生君は、楽しいねぇ。飽きんわ。

言っとくけど、俺は女には興味ないからな。」

分かってるよな。


え、それって男に興味あるってこと?

すると、エイさんに言い切られた。

「それをホモと言う。つまり、お前も、りっぱなホモだよ。」って。


自由時間、どうするつもりだ?

ん…

まだ何も考えてない。

と素直に言うと、こっち来いと手招きを受け行く。

キスされるかなと思った俺は目をとじる。

期待に応えてあげよう、と言いながらキスしてきたエイさん。


でも、キスはキスでも俺の胸にも腹にもキスしてきた。

「あっ… ふ…」

「声、出さないで」と、俺の唇に掌を当ててくる。

だけど、何かを感じる。

「っ… … …」


あぁ、気持ちいい。


ぺちぺちと優しく叩かれる音が聞こえてくる。

仕方ないね、ゴメンネという言葉が、微かに聞こえてくる。

「っつ!」

いったーい、人の胸を噛むな!

胸ではない、乳首だ。

うぅ…。

中々起きてこないんだから、こうするしか無いだろ。


それよりも、集合時間まで10分程だぞ。

えっ、ヤバイ…俺、この服持って帰らないと…。


「あ、そうだ。」

「なに?」

「夏生君のメルアド教えて。」

「え?」

「番号は要らない。だって、声聞いたら会いたくなるでしょ。」

会えば、俺ヤっちゃいそうで…


それを聞いてると、俺は真っ赤になった。

赤外線で、自分のプロフを送った。

赤外線で受け取ったエイさんのプロフを見ると、名前が書いてあった。


「笹田瑛」


やっぱり、エイさんとは違うバスだった。

しばらくすると、メールが来た。

「お疲れさんでした。一応、書いとく。

俺の名前は笹田英と書いて、ささだ ひかり だ。

間違えるなよ。」



ええー!

ささだひかり?

エイじゃなかったのか…

早速送り返した俺は、

「ゴメンナサイ。思いっきり間違えてしまいました。」

その文面に返信がきた。

「罰として、今月23日の土曜は俺に抱かれること。

思いっきり喘がせてやるから、覚悟しとけ。

-追伸-

23日は俺の誕生日だ。土日と泊まる用意しとけよ。」



え、誕生日?

プレゼント何にしよ。


待てよ、その前に難関が…

お兄ちゃんを突破しないと、だな…。





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