第3話

陸部3人が猛ダッシュすると、どうなるか…


長距離の茂は見回りの先生にぶつかり…

(ラグビーじゃないぞっ)

長距離のエイさんは部屋の手前で先生にタックル掛けては一緒に転んだり…

(ラグビーじゃないぞっ)


俺はと言うと、短距離だぞ。

短距離はダッシュをかけると長距離よりも速いのだ。

しかも、幅跳びもしてるし。

障害もなんのその。

先生を飛び越えては、そのまま自分の部屋までスライダーをかけ、無事に到着。


これで、今夜の練習も終わったぜ。

ルン♪


備品も壊さず満悦気分でいた俺は顔を洗い、パジャマに着替えて布団に潜り込んだ。

そしたら、ドアが開き・・・

「日下夏生、出てこい!」

と、先生から呼び出しをくらった。

 

先生の後を追いながら広間に行くと、茂とエイさんだけでなく、他にも5人ほど居た。

「貴様ら8人とも、この広間と全ての廊下の掃除をすること。」

どうしてか、理由を聞かなくても分かるだろ。

2人ペアでやってもらうからな。


…えっ! 

もしかして、先生を飛び越えたからなのか?

すると、エイさんが俺の側に来て一言。

「自分は、この人とペアを組む。そしたら、残りは自由に組めるだろ。」

俺は皆から煙たがれてるんだから、あんたと組む。良いよな。


まぁ、俺は誰と組んでも文句は言わないよ。


という事で、先にやりますね。

「奥の廊下にするか。」と、エイさんが言ってきたのに対し、

「どっちでもいいよ。」と、俺は返事した。


廊下の掃除と言えば、雑巾がけ。

濡れ雑巾で拭いた上を、乾いた雑巾で拭いていく。

という二度拭きを、俺はエイさんと一緒にしていく。


広くて長い廊下を雑巾がけ。

先に俺が濡れ雑巾で、エイさんは乾いた雑巾で拭いていく。

どれぐらいの時間が経ったのだろう。

足腰の運動になって良いかも?的な思いが出来るようになってきた。

時々、掃除の見回りにくる先生が声を掛けてくる。

起きてるか、ちゃんとしてるか、寝てないか等と。


2人とも、ちゃんとやってますよ。

そのうちに、終わりましたと報告できてはOKを貰うことができた。

とっとと寝ろよ、という先生の言葉に2人して返した。

「お休みなさい。」


廊下に出ると、A校の顧問が居たのには驚いた。

「珍しい事があるもんだな。おりこうさんのお前が、コレをやってたとはね…」

はは、ははは…。


先生、俺すっごく眠いの。お仕置きも終わったし、寝てもいいでしょ?

顧問は、お疲れと言ってくれただけで済んだ。


すると、誰かが俺に向かってボトルを投げてよこした。

そちらを見ると、エイさんだ。

お疲れと言いながら、ソレ飲めと言ってくる。

ありがと、ごちそうになります。


その場で飲みきり、ボトルをボトル捨てに入れて、部屋に戻る。

「疲れたー」と俺がボツリと呟いたら

「全くだな、振り切れたと思ってたのに」と、エイさんは返してきた。

「タックルかけてたでしょ。あれで振り切れるとは思えない。」と俺は切り返した。


「でも、良い思い出になったよ。」と苦笑気味に言ったら、

「たしかに。」と、エイさんも返してくれた。


「エイさんって、何年生?」

「ん。2年生」

「そうなんだ、どおりで俺とは違うと思ったよ。」


俺の部屋に向かう廊下で、俺はこっちだからと言ってバイバイした。

すると、エイさんが付いてくる。

どしたの?

送ってく。

俺、男だけど…

俺も男だ。


……。


部屋に着く手前の角で、俺はエイさんに「おやすみ」を言おうと思った。

そしたら、首に何かが当たる気配がした。

ん? 

振り向くと、エイさんの唇が、俺の唇と重なった。

俺はビックリして何も言えなかった。


エイさんは、「おやすみ。ごちそうさまでした。」と言いながら部屋に戻って行った。

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