第23話領域封鎖-1
その後、ソラ達、三軍は、奪ったエルロイドの武器で各地で活躍した。突然現れ、エルロイドの武器を使ってエルロイド達を打ち倒す集団……その名声はエルロイド側にも轟いていた……。
隠れ家の一室でカイトとジュードはポータルを開いていた。それを離れた位置で、画面に映らないようにオルトスが見ている。通信が始まると、現在、エルロイドの中でもっとも偉い人物が画面に映し出された。
『やあ、親愛なる同志諸君。ご機嫌よう。ぼくはエルデン王国軍第十三師団団長【マルタ・ルイール】だよ? まあ、ほとんどの人が知っていることだと思うけどね。今回は定例集会に集まってもらってご苦労様だね。じゃあ、今日の議題について話そうか、ボルト君、後はよろしく~!』
この人物こそ、エルデン軍の最高責任者にして、現在、もっとも統率官に近い男だ。彼はルマール辺境伯家の次男であり、エルデン軍の上層部を握る貴族派の中で最も地位が高い。それ故、エルデン軍貴族派のリーダー的存在である。
『は、承知いたしました。では、ここから先はエルデン王国軍第十三師団副団長ボルト・マーセナリーが進行を勤めさせて頂く』
続いて現れたのは事実上の軍の最高責任者であるボルトだ。ボルトはエルデン本国から派遣されてきた将官の一人だ。本来は彼が団長となるべきなのだが、エルデン本国の意向で貴族派のトップであるマルタが名ばかりの団長となり、ボルトがそれを支える立場となっている。
堅実で実直な性格で軍人全てから慕われているエルデン軍軍属派のリーダー的存在だ。
『今回の議題は、最近、我らエルロイドの軍勢を倒して回っている、我々の武器を使う謎の部隊。通称アンノウンについての対策だ』
アンノウンの話しを始めたことでざわめくエルロイド達、その存在は謎に包まれ、現在エルロイド達に取って唯一の脅威として、恐怖されている。
ボルトはこの程度でざわめく、貴族派や移住派のエルロイド達を情けなく思いながらも淡々と話しを続けていく。
『アンノウンは神出鬼没だ。それでいて、かなり腕が立つ。不利だと思われる戦況に参加しては、その戦場で戦果を上げ、我々の進行を阻んでいる。目撃情報は沢山上がっているが、近づくと倒されてしまうため詳細な情報が手に入らないことと。加えて、そもそも我々に取って劣等種族など全て同じ存在。違いが分からないっといった問題もあり。その正体を掴むことが出来ていない』
『ソラだ。あのソラ・アオヌマだぁ……』
怒りに満ちた声で顔に傷を負ったエルロイド、ゼスタが呟く。それを見た、他のエルロイドが嘲笑いながらゼスタを見る。
『おい、あれが噂の貴族さんか?』
『そうだぜ、アンノウンに最初に襲われて、呆気なく物資を奪われてしまった能無し。彼奴らが使っている武器も、そこから取られたものらしい。つまり、この事態を招いた張本人って奴だな』
『そう、それが原因で降格させられたんだよな。全く、お堅く決まった貴族達が! いい気味だぜ!』
わざと聞こえるように喋られたその内容を聞き、ゼスタは拳を強く握り、怒りを露わにする。
『お前達、調子になるなよ……?』
ドスを利かせた声でそう言うゼスタ。だが、それを見て、彼の元取り巻きが鼻で笑う。
『ゼスタに今更何が出来るんですか? 実家からも失態で見捨てられた癖に、今の貴方は我々、平民と何の代わりもありませんよ』
『……っ!』
『はは~。言われちまったな。ゼスタさんよ。此奴らもお前の取り巻きをしてるより、俺の子分をしてる方がずっと楽しいってよ。お前、貴族なのに人望もないんだなぁ~。その辺どう思ってるの?能無しゼスタさん』
『ルーカスてめぇ! スラム落ちした平民の癖に俺を嘲笑うか!』
それを聞いていたジュードがその名前に反応する。
「ルーカス? もしかして」
「知っているのか、ジュード?」
「うん、話しには聞いたことがあるよ。【ルーカス・リッチマン】。通称スラムの王。彼奴は元々、エルデンのそれなりの地位がある、兵器開発を行っている豪商の長男だったんだけど。異常に権力欲の強い男らしくてね。自らスラムに落ちると、実家から持ち込んだ資材を使って、あっという間にエルデンの東スラムをまとめ上げて、その頂点に座った。いわば、この戦争に参加しているスラム派のリーダー的存在だね。……それにしてもいくら権力欲が強いとは言え、この侵略戦争に参加するなんて、あの噂は本当だったのかな……」
「噂?」
「何でも実家の技術力を使って開発した兵器が、エルロイドにも使用可能な危険なもので本国の政府に目を付けられていたって話しだよ。だから、本国の追求から逃れるために子分全てを引き連れてこの戦争に参加しようとしているって聞いたことがある。……本国も厄介払いしたかったのか、ルーカスの部下だって名乗れば無条件で参加者に入れたみたいだね。そのせいでスラム派の人数が増えて、今回の軍の中でスラム派の影響力が強くなったって話しだよ」
「なるほどな……」
(危険な兵器ってのは奴隷化(スレイブ)のことか、あれは本国でも問題視されていたんだな……)
カイトは未来での光景を思い出し、手を握る。そしてある可能性に気づき、ジュードに聞いた。
「ジュード。お前、スラムに居たと言っていたな? ルーカスとは関わりがあったのか?」
それを聞いたジュードはぶんぶんと手を横に振って否定する。
「ないよ、関わりは。ルーカスが纏めていたのは東スラム。私が居たのは西スラム。話しには聞いたことがあったけど、あったこともないし、関わり合いになったこともないよ」
「そうか、良かった。じゃあ、その危険な兵器というのを使われた可能性はないんだな」
その言葉を聞いたジュードがうれしさで顔をほころばせる。
「あ、心配してくれたんだ。さすが私の白仮面様。大丈夫、問題ないよ。どうしても確かめたいなら見て貰えばいいし、その兵器ってのは効果を発動させるために胸に付ける必要があって、裸になれば見つけられるって話しだよ。埋め込み型だって話しもあるけど、それなら触って確かめればいいだけだしね。……だ、だからね。後で一緒に裸になってお互いに色々確認し合わない……?」
顔を赤らめながら上目遣いでそう言うジュード。それを聞いたカイトは呆れた表情をする。
「そういうのは止めろと、あの時に言っただろう」
「また、そう流して。あーあ! 何であの時、私はあんなことしちゃったんだろう! こんだけアプローチしてるのに! あの時のことが原因で全部流されちゃうよ~。私の馬鹿ぁ~!」
頭を抱え、転げ回るジュードを横目にしながら、カイトは通信に目を戻す。いつの間にかルーカスとゼスタの争いはボルトが仲介したことで終わっていたようだ。
『……これらのことから、私はある作戦を提案する。それはこれだ』
そう言うと通信装置のディスプレイにある拠点の映像が映し出される。
『この基地は、奴ら劣等種族に取って重要な拠点らしい。その場所を、この軍の投入可能な兵力、全てを投入して、強襲することを提案する』
『……? それとアンノウンとどういう関係が?』
一人のエルロイドの兵士がボルトにそう聞く。ボルトは詳細な理由を説明し始める。
『相手は神出鬼没。こちらから探そうと思っても探せるものでは無い。だからこそ、相手から出てきて貰うのだ。これまでの傾向から、奴らは不利になった味方を見捨てられない。それがより多くの味方が駐留する。重要な拠点であればあるほどその傾向は強くなるだろう。つまり、ここを全力で攻撃すれば、奴らは絶対にここにやってくる。後はのこのことやってきたものを叩けばいい』
『なるほど、罠にかけるってわけだね。さっすがボルト君。やるな~』
『お褒めにあずかり光栄です。マルタ閣下』
そう言ってボルトが頭を下げる。それを見た貴族派は優越感に満ちた顔をし、軍属派は苦々しい顔をする。
(思ったより、双方の溝は深そうだな……)
カイトがそう思っているとマルタが突然呟いた。
『しかし、なぜ奴らがエルロイドの武器を使えるんだろうね』
その言葉に場が騒然とする。誰もが考えていたことだ。そして誰もがある可能性を疑っていた。それを見たカイトはいい機会だと思い、マルタに向かって話しかける。
「閣下。発言を許可して頂けますか?」
『ん? 君は確か……』
「ジェスター・スライです。今は白仮面と呼んで頂ければ幸いです」
『ああ、そうか白仮面。ははは、なかなか面白い奴がいるなって目を付けてたんだよ。白仮面って、ははは!』
それと同時に周りのエルロイドも笑い出す。それにジュードがいらいらしているが、手で何もしないように促す。
『確か、結構な活躍みたいじゃない。この間の都市攻めでも、一番の戦功だったって聞くよ? まあ、何か言いたいことがあるなら自由に言っちゃってよ』
「お褒めにあずかり光栄です。……では、遠慮なく。劣等種族共が我々の武器を使う理由。至極簡単な回答があります」
それを聞いたマルタがにやりと笑う。
『へえ。っで、その簡単な回答って言うのは?』
「我々の中に、劣等種族に協力するものがいると言うことです」
その言葉を聞いたエルロイド達が次々と怒りを露わにする。
『お前は、何を言っているか分かっているのか! 我々の中で汚い劣等種族に力を貸すものなどいるはずあるまい!』
『そうだ、そうだ。ふざけるのも大概にしろ!』
次々と罵声が飛ぶが、カイトはそれを平然と受け流しながら言う。
「しかし、それ以外、どのような可能性が考えられますか? 本当は皆様も気付いているのでは? 私と同じ結論に」
『……っ!?』
その一言に全てのエルロイドが黙った。頃合いだと考え、カイトはさらにたたみかける。
「私も、我々エルロイドを負けさせるために、私たちを裏切っている者が居るとは言っていません。私たちが勝つことは必然。それ故に、劣等種族を使うという発想が出てくる。……単純な話しです。侵略後の主導権争い。劣等種族を使い、今のうちに邪魔なものを消しておこうと考える者が出ても不思議ではありません」
そう言ってカイトはエルロイド達を見回した。カイトの言葉を受け、全てのエルロイドが警戒の色を表しながら周囲のエルロイドを見ている。そんな中、マルタがカイトに語りかける。
「確かに、可能性としてはあるね。……いや、むしろ、ほとんど正解かもしれないと思えるほど高い。でも、君は何でそれを今、この場で言ったのかな? 自身が狙われるかも知れないのに泥を被ってでも言うことかな? それは。黙っていた方が君にとっても都合が良かったんじゃない?」
疑いの目で見てくるマルタ。カイトは淀みなく答える。
「私はエルデンに忠誠を捧げる者です。故に、泥を被ってでも忠言をしなければならないと考えました。私がここで言うことで、そう言った動きを抑制出来るのではないかと考えたのです。我々は侵略の突兵であり、使い潰されるための消耗品に過ぎないのかも知れませんが、それでも生きております。命はここにある私だけのものです。こんなくだらない主導権争いに巻き込まれて使い潰すつもりはありません」
はっきりと言ったカイトを見て、マルタが笑う。
『ははは、こんなくだらないことで死にたくないか! いいじゃないか正直で! 分かったよ。それでいいさ』
そう言うと全てのエルロイドに向かって言う。
『皆の者、何方にしても統率官の地位は僕が居る限り、譲る気はない。だから、白仮面君が言ったようにくだらない争いは止めて、侵略に集中しよう。その代わり、全てが終わった後、僕は公平に戦功を判断し、誰もが満足いくように星を配分することを約束する。……これで全員文句はあるまい。これにて今回の会議は終了する。ボルト達は作戦を纏め、準備を整えるように、以上』
そう言って通信が切れた。だが、新たにマルタからカイトに直通の通信が入る。カイトはそれに出る。
「どうなされましたか?」
『君に頼みたいことがあってね。……会議ではあんなことを言ったが、正直僕の命は危うい状態にあってね』
「どういうことでしょうか?」
『会議中に話していた男が居ただろう? ルーカスという男なんだけど。どうもそいつが自らが統率官になるために僕を消そうとしているらしい。そして奴の持っている兵器が厄介なものでね。今回の敵に協力しているエルロイドは十中八九奴だ。だから、場合によっては本当に殺されてしまうかも知れない。……だけど、いくら軍の司令官という立場であったとしても直接奴を手にかけるわけにはいかないからね。なので、君に連絡を入れたんだ。次の作戦時、君にある程度行動の自由を与えるから、ルーカスを敵の仕業に見せかけて殺してきて欲しい』
にっこりと笑顔を見せながらそう言うマルタ。カイトは神妙な顔をしながら聞き返す。
「なぜ、私にそのようなことを?」
『あの会議で、敵に協力する者について追求した。これは正直に言うとスラム派への牽制でしょ? 加えて言えば、エルデンの忠義を示した君ならば裏切らないと思ったのさ』
(どの口が言うんだか。大方、会議で目立った私に、ルーカスを殺させる方がリスクが少ないと考えたんだろう。もし、暗殺がばれてもルーカスを協力者だから処罰したと言いやすいし、場合によっては私を協力者に仕立て上げることも出来るからな。だが、これは利用できる……)
「なるほど、信頼して頂き。有り難うございます。つきましては計画が成功した時には、もちろんそれなりの対価はあると考えてよろしいのでしょうか?」
『ふふふ、いいね。君は本当に素直だ。それぐらい分かっているよ。後でふさわしい地位でも物でも劣等種族でも、君にあげると約束しよう。これで契約は成立だ』
そう言うとマルタは笑顔で笑う。そして通信の切り際に言った。
『これは僕と君だけの秘密だ。誰にも漏らさないようにね』
「御意」
通信が切れたことを確認すると、カイトは深く息を吐いて深呼吸する。そこにオルトスがやってきた。
「よろしいのですか? ルーカスはまだ役割があるのでは……」
「もちろん、そうだ。奴には動機になって貰わなければならん。だから今、この場で殺すわけにはいかんさ、それでは道から外れることになる。……だから、俺が殺すのは別の奴だ」
そう言うとカイトはにやりと笑った。
「あの会話は私と奴だけの秘密だそうだ。秘密を知る人間が居なくなれば、契約を実行する必要もないだろう。それにちょうど奴を消しておきたい所だったからな」
「それは、また、どうして?」
「ジュード。現在のエルロイドの派閥についてネズミに説明してやってくれ」
「え~。もうネズミは無知でしかないんだから。じゃあ、私がネズミの為にわかりやすく説明してあげるよ! 現在のエルデン軍には四つの派閥が存在するんだ。【貴族派】、【軍属派】、【スラム派】、【移住派】って分かれているんだけど、此奴らはみんな仲が悪い。まあ、当たり前だよね。侵略した星の統率官になれば、永遠にその星の権力が握れる。誰だって自分の仲間が優遇されるようにしたいってことさ」
そう言うとジュードは指を一つ立てた。
「まずは貴族派について説明するよ! 此奴らは名前の通り、エルデン本国で貴族だったものだ。大抵は無能な息子を放逐するためにこの戦争に参加させるから、基本的に質が悪い。場合によっては下級貴族が成り上がるために来たりとか、マルタみたいな責任者として派遣される場合もあるけど、そう言った有能なものは少数だ。此奴らは新しい星に侵略に来たというのに自国の価値観を引きずってる。……だから基本的には自分より、爵位がしたのエルロイドには負けたくないって思いがあるんだ。だからこそ、ことあるごとに口だけを動かして責任を追及してくる。まあ、面倒くさい奴だね。でも、そんなんでも一応貴族だから、統率官への優先権を与えられているんだ。よほどのことがない限り、マルタが統率官になる。それが大半の予想だよ。だからこそ、侵略にもやる気が感じられないし、好き放題やっているだけ。そんな態度だから貴族派以外の連中からめっぽう嫌われている」
そう言うとジュードは二つ目の指を立てる。
「次は軍属派について、軍属派はエルデンの軍部から派遣された者達だ。彼らはこの侵略戦争自体に意義を見いだしている。だからこそ戦争への意欲も高く、質も良い。ただ、それだけに貴族派に顎で使われている現状をよく思っていないみたいだ。実際、今彼らがやっていることはほとんど貴族派の代わりの実働部隊。尻ぬぐいみたいなもんだからね。軍人としての誇りがそう言った状況を許さないんだろう。慕われているボルトが、マルタの下に付いていると言うことも不満に繋がっている。本来ならボルトが団長のはずだったけど、貴族派の意向で無理矢理押し込まれたわけだからね。そんなこんなで貴族派との仲が悪い軍属派だけど、他の派閥とも仲が良いというわけではない。スラム派とはお互いにやり方が気にくわない犬猿の仲同士だし、比較的、友好関係を保っている移住派も、素人が戦争に口出しをしてと心の中では思っているって感じかな」
そう言うとジュードは三つ目の指を立てる。
「スラム派、これが一番厄介な所だ。ここは他のグループとは違い、ルーカスという独裁者の元に集う形でグループが形成されている。それもそのはずだよね。ここに所属している人員はみんなルーカスの子分たちだから。絆というか結束力は一番強い。その上、手段を選ばない。ネズミと同じ、この星の人が酷い目に合うのは大抵、このルーカスが関わっていると言ってもいいレベルだね。自分たちの快楽を追求できるなら、周囲の全てはどうなってもいい利用できるものって感じかな。そんな態度だから、それなりに正々堂々と戦って軍人としての誉れを取りたい軍属派と仲が特に悪く、移住派からもどん引きされている。また、貴族派とはその出自から絶対に相容れないと言っても良いね」
「最後は移住派だね。これは単純な移住を目指すグループだ。特に勢力として集まっているわけではなく、先の三つのグループに属せなかったメンバーが、三つのグループに対抗するために作った互助会のようなものだよ。故に、目的もみんなばらばら。特に統率官を目指そうという意思はないけど、土地とか資源とか、そう言ったものを手に入れる、移住が一応全員の共通目的だから、出せるなら統率官をグループから出して自分たちの取り分を増やしたいって感じだね。そんな雰囲気だから、活躍して土地を奪う。経験では勝てない軍属派を友好関係を保っていてもよく思っていないし、あるべき資源を壊していくスラム派もよく思っていない。何もせずに権利だけ持っていく貴族派には怒りしか湧かないって感じ」
そう言うとジュードは手を開く。
「まあ、簡単に言うとこんな感じだね。これに加えて、私たちのような独立的に動く人が複数グループあって、今のエルデン軍は構成されている。ネズミ、分かった?」
「ええ、わかりやすい説明をありがとうございます」
オルトスがそう言って頷く。どや顔をしているジュードを見て、微笑ましそうな顔をしていた。
カイトはそれをちらっと見た後、自身の計画について語り始める。
「私たちの目的を達成させるためには、この四派閥をお互いにつぶし合わせて、消耗させる必要がある。今回の戦でその種を撒く」
「具体的にはどのような策を?」
「まずは、マルタを殺し、奴らに統率官になれるかもしれないという希望を与える。そして同時にその犯人をお互いの派閥がやったと思わせるように、可能性を与える。こうすれば奴らの一致団結してことに当たると言う可能性を潰し、真犯人である、私に容易にたどり着けないようにすることができる。後は流れるまま、時間に任せれば、自然と目的は達成されていく。優れた策とは一度の計で、その後の手間もいらず自然と達成出来るものだ」
「凄い! さすが! 白仮面様! かっこいい!」
「……ゴホン。……ジュード行くぞ。必要なものを集めに行こう」
ジュードの素直な賞賛に、顔を紅くしながら、カイトは部屋から出て行った。
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