第16話Break Down World(大切な過去)-4
「くそ、どこだ、どのデータだ。異次元ワープさえあれば。俺は! エルデンに戻って! こんなくそみたいな生活じゃない! 本当の生活を始められる……! くそ、くそ! 見つからねぇ……!」
エルロイドがひたすら何かの機械を弄っている。ソラは遠くからそれを眺めていた。
(明らかに何か特別な機械みたいだ……ということはあれがもしかして噂の制御装置なのか……?)
ごくりと息をのむソラ。この戦いで全てが決まると考えると緊張してきてしまったのだ。その緊張が危機を生む。ふと、後ろに下がったその時、ソラは機材に体をぶつけてしまった。それにより音が鳴る。
「しま……」
「誰だ!?」
「もういい、行くしかない!」
そう言ってソラはそのエルロイドの前に出る。ソラの姿を見たエルロイド……ゼスタは驚きで目を見開き、額の傷を押さえ始めた。
「ソラ・アオヌマ……!なぜ、お前がここに! いや、この際どうでもいい。傷が疼く。あの時、お前に無様にも付けられたこの傷が! 惨めな気持ちになると疼く! お前を殺せとささやいている!」
「何を……」
「ははは、俺は幸運だ。エルデンに帰る前に、お前を殺す機会に出会えるなんて! なぁ、ソラァア!!!!」
すると、ゼスタは右手にショットガン。左手にランスを持ち、銃をソラに向けて放つ。ソラはそれを機材の裏に飛び込んで回避する。
「なんか、よく分からないけど……、やるしかない!」
ずっと続いていた銃撃が突然止まる。ソラがゼスタの方をのぞき見るとそこにゼスタの姿はなかった。その時、一瞬、暗くなった事に気付いたソラが上を見上げるとゼスタが飛び降りながら突き刺すようにランスを下ろしてきているところだった。
ソラはそれを転ぶように横に移動することで躱す。地面にランスを突き刺したゼスタは右手の銃で再びソラを狙う。
ソラはそれから逃れるために別の場所に移動しようとするが、空間を上手く把握したゼスタの攻撃に次第に追い詰められていく。
(まずい、このままじゃ。倒される。……エルロイドがこんなに強いなんて思わなかった。そう言えば僕は、兄さんに守られてばっかしでまだ、まともに戦ったこともなかった……)
ソラは今までまともに戦わなかった自分を後悔していた。だが、悔やんでいても何にもならない。ソラは自分に気合いを入れ直す。
「でも、それで怯んでちゃ駄目だ。何かを始めなきゃ、きっと何も出来ない。どうすれば彼奴を倒せる? 正攻法じゃ、きっと駄目だ。経験が違う……なら……」
ちらりとソラはゼスタが弄っていた機械を見つめた。
(さっき彼奴は、あれを必死になって操作していた。あれは彼奴にとっても大切なもののはずだ。あれを利用すれば隙を作れるかも知れない。……あれが制御装置の可能性もある。だけど、ここで博打を打たなきゃ、やられて終わるだけだ)
「守ってよ……!」
ソラはそう祈りながら、装置に向かって銃を撃った。それを見たゼスタは過剰に反応する。
「待て、それは……!」
走り込み、無理な体勢でその銃弾を弾くゼスタ。その隙を見たソラは一気に駆け寄った。
「っち……!」
だが、大戦を生き残っただけあって、ゼスタもそれに上手く反応する。だが、接近戦の中、ソラが再び装置に銃口を向けたことでゼスタは、それを止めるためにソラへの攻撃を止める。それが、決定打となった。ソラは銃を撃つと見せかけて、ゼスタに斬りかかる。ゼスタはとっさに腕でガードするものの左腕切り取られた、ソラは近接武器の無くなったゼスタに向かって至近距離で銃弾を撃ち続ける。
「がぁ……」
その銃弾の直撃を受けたゼスタは腹に風穴を開けられ、血を流す。そしてそのまま倒れた動かなくなった。
「……やったのか……?」
ソラはゼスタを足で蹴って、その生死を確認する。そして確実に終わった事が分かるとその場に座り込んだ。
「あっという間だった……。戦いって、こんなに呆気なく決まっちゃうものなんだね……」
倒したという実感が湧かない勝利にソラは複雑な思いをしながらも立ち上がる。装置を確認してみるがどうやらゼスタがしっかりと守ったおかげで破壊されていないようだ。
「……結局、この人が何だったのか分からなかったな。僕のこと知っていたみたいだけど、過去に戻ったら分かるのだろうか」
相手には何か因縁があったのかも知れないが、ソラから見れば全く知らない相手だ。よく分からず恨まれて、何も聞く事無く終わった事に、少しもやもやとした気持ちを覚えながらもソラは装置に向かう。
「えーと、使い方が分からない。取り敢えず、適当に叩いて……」
ソラは装置を弄り始めた。
☆☆☆
「嘘だ……だって、ジェスター・スライだと! それに俺は死んだはずじゃ!」
「ああ、拷問部屋でジュードから聞いたんだったな。……この名は親父から奪って名乗ったものだ、ジュードが言っていただろう成り代わった、と。統率官になるためにはどうしてもエルロイドの参加者の立場が必要だった。だから、この星で侵略をせずに隠れ住むつもりで偽装の兵器を持ち込んでいた、ジェスター・スライの存在は、私にとって都合が良かった。ジェスター・スライを確保していたオルトスの元に向かい。協力を取り付けて、その全てを頂いたのだ。そして、用済みとなったジェスター・スライは私の身代わりとして死体になって貰った。ソラとはジェスター・スライも血は繋がっている。私が死んだと誤認させるのに、さほど苦労はしなかったよ」
微笑を浮かべながら平然とそんなことを言う白仮面にカイトは思わず恐怖で目を見開く、何をしたらこのようになってしまうのか、カイトの中はその気持ちで一杯だった。
「お前、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「ああ、当たり前だ。当然だろう。なんだ? 自分自身の言葉が信じられないか?」
「お前は! 俺じゃない!」
そう言ってカイトは白仮面を突き飛ばす。そして武器を構えた。
「くくく、威勢が良いじゃないか。二回、戦った時も思っていたが、良いものだな、希望にすがっていられる時間というのは。見ていて微笑ましくなってくるよ」
「うるさい! 黙れ!」
「黙らないさ、お前はここで全ての真実を聞かないといけないんだ。昔の私が、聞いたように」
「うぉおお!!」
カイトは乱暴に武器を振り回す。それを白仮面は冷静に捌いていく。
「過去と未来は繰り返す。……この世界に来たのは偶然だと思うか? 私よ」
「知るか!」
「ふふふ、最初の一回は偶然だったのかもしれないな。このループの一番最初。始まりの私は全てを失ったものだった」
白仮面がカイトの武器を吹き飛ばす、白仮面はわざとカイトを殺さないようにビームセイバーの柄でカイトを叩くと、直ぐさま離れる。カイトは新たな武器を取り出し、白仮面に向かっていく。
「その世界では私も含め、全てのものがエルロイドに抗った。だが、結局全てのエルロイドを倒しきることが出来ず、圧倒的な物量によって、地球人類は敗北した。唯一、地球人の中で生き残ったのは、親から最後に偽装装置を渡されていた私だけだった。私は最後の地球人となったのだ。ソラも流花も無残に殺された、英雄となっていたソラは捕らえられ、エルロイドの技術で何度も回復させながら、拷問を受け続けた。私が最後に見たソラは、全てを失い、廃人のようになっていたらしい。老人のような見た目をした、外界の刺激に何も反応できない。そんな廃人に。……そして流花はルーカスに捕らえられ、お前が見た少女達以上のことをされた。その時の統率官は私じゃないからな、歯止めがきかなかったのだろう。私が見つけたのはゴミ処理施設の中から見つけた、流花に渡した指輪を付けた左腕だけだったそうだ。……そう、私は生き残りながら、何もすることが出来なかった。ただ、ただ、黙って終わりを見届けた。そしてエルロイドとして、永遠の時を怯えながら生きた……これが最初の私だ。だが、そんな私に奇跡が起きた」
カイトの攻撃を白仮面は受け止める。
「諦めきれずに行っていた実験。その成果が出たのだ。私は過去から私自身と偶然にもソラを呼び出すことに成功した。最初の世界の私は、二人に事情を話し、過去に行くための研究を行った。だが、私自身が過去に行くことは出来なかった。そこで気付いた。過去から未来に人を送ることは出来ても、未来の人間を過去に送ることは出来ないのではないかっと。これで未来の兵器を持って過去の戦争の結果を変えるという事は不可能になった。だが、希望はまだあった。少なくとも過去から未来への転送は成功できる。私はこれを利用して未来で過去の出来事を教えることで、過去を変えようと考えた、そして過去の私の手帳に詳細な時間転移の技術と、その時の歴史を記し、過去の私とソラを元の世界に戻した。これが最初の私の物語の終わりだ。こうして元の世界に戻った過去の私によって、未来で新たな私が生まれ、過去の私を呼び出し、幾度も無く、世界を救うための長い長い旅は受け継がれ、続いてきた」
白仮面とカイトの戦いは激化する。白仮面はまるでカイトを指導するように、カイトはそれに抗うように戦い続ける。
「だが、何度やっても。地球人が勝利すると言う結果は得られなかった。必ず最後には破れ、最初の世界の私と同じように、ただ一人生き残った私が、希望を託すために過去の私を呼び出すという結果になる。……少し、正解からそれただけで未来はたやすく滅ぶ。何度も何度も模索し、可能性を一つずつ虱潰しに潰し、私は答えを探し続けた。そうしていく中で私はついに理解した。勝つことは不可能だと」
「諦めたのか!」
「違う、受け入れたのだ! 世の中に絶対はある。もはや、地球人がエルロイドに勝てないという前提条件は崩せない。ならば、その上で道を考えるしかない。抗い続け、同じ事を繰り返すくらいなら、結果を受け入れ、その上で最善を探す。……その考えがブレイクスルーとなって新たな可能性が生まれた!」
カイトを再び弾き飛ばした白仮面は両手を広げて高らかに宣言する。
「言わなくても分かるな、そう、この(・・)尊い白い世界! この世界、この展開! そのテンプレートが出来上がったのだ! 人が唯一、エルロイドに勝つことができる! この理想の結末が!」
カイトに攻撃され続けていた白仮面が反撃に移る。カイトはそれを必死の思いで防いでいく。
「そこからは簡単に事が進んだ。もちろん、何度もやり直し、挑むことにはなったが、少なくとも以前ほど不可能な話しではない。私が統率官となり、未来の世界でわざと負けるように動く……ただそれだけの話しなのだからな。何度も何度も繰り返していく内に今の最適解とも呼べる展開が決まった」
白仮面はカイトを蹴り飛ばすとまた戦いを仕切り直す。
「分かるか、私! これは長い長い時間をかけて、幾人ものお前の犠牲で! やっと成立した世界だ! お前はなぜ、この結末に抗う? お前は何が不満なんだ? これ以上の結末がお前にはあると言うのか!」
「これ以上の結末……?」
「そうだ! ここにはソラが居て、流花が居て、そしてエルロイドは滅ぶ。それで充分じゃないか。別に私の知らない地球人がどうなろうが知ったことではない。私はただ、その二人だけを救えればいい! 違うか!?」
「お、俺、は……」
カイトの手が緩む、白仮面の言うことは事実だった。カイトはソラのように世界を救いたいなんて大層な野望は持っていない。ただ、自分の親しい人物が救われればそれでいいと思っている。確かにエルロイドの行いはむかつくが、それもソラ達に危険が及ぶ可能性があるからだ。もし、テレビの前でエルロイドの蛮行が報道されても、カイトは怒りを覚えたとしても、行動に移すことはなかっただろう。そう言う人間だカイトは。それをカイト自身(・・・・・)である白仮面はよく理解していた。
だが、まだ、カイトはそれを認めたくなくて、必死の思いで反論する。
「……お前は、それでいいのか。ネズミとジュードは、お前にとって親しい相手じゃなかったのか! 流花との約束は! ソラの思いは! そう言ったもの全てを切り捨てて、それで良いと思っているのか!」
その反論に白仮面は一瞬、悲痛な表情を浮かべ、口ごもるも、直ぐにその表情を消した。そして怒りを露わにする。
「……お前に何がわかる! まだ、何もしていないお前なんかに! オルトスは私の理想を知り、共にそのために死ぬことを受け入れてくれた。ジュードは何も知らないが、最後は安らかに死ぬことができた! 既に世界を滅ぼした我らが! エルロイド側である私たちが! 今更救われるなんてこと出来るはずないだろう! 結局は、私たちを救うか、ソラ達を救うか、どちらかを選ぶことしか出来ない! 世界は残酷なんだ! 私たちに全てを救う選択肢などない! 約束や思いなど! いつしか消える! 私に必要なのは、消して消えない、ただ目の前にある事実だけだ!」
「そんな生き方、どうして選べるんだ、だって、つらすぎるだろうが……! 世界を裏切って、自分の手で守るべきもの全てを壊して、最後に報いを受けて死ねと。お前は俺にそうしろと言うのか!」
「報いを受けるのが怖いか、自分の幸せが壊れるのが怖いか、私よ! だが、私にはそれ以上に怖いものがあるのだ! 自分の気持ちを優先していたら、最後にやってくるのは絶望だ! 何も守れないくらいなら、私は私の幸せを捨てる! 私にしか世界を変えることは出来ないのだ! だからこそ、しろではない、するのだ。お前も、私のように!」
そう言うと白仮面は大きくカイトを弾き飛ばした。地面に落ちたカイトは、力なく項垂れる。それを見た白仮面は薄く笑う。
「くくく、どうしても私が殺せないか」
「……」
「気持ちは分かるぞ、私よ。私が死ぬことはお前が私になると言うことだ。もう引き返せない。本当は理解しているのだろう。私は、自分で言うのも何だが、現実主義者だからな。どれだけ感情で否定していてもそれが最良の世界であることは否定出来ない」
「くっ……」
「……それでも感情が邪魔をして、最初の引き金を引けないと言うのなら、私が引いてやろう」
「なんだと!?」
驚くカイトの前で白仮面は腰から新たな兵器を取り出す。
「どれだけ、辛くても、残酷でも、あらゆる可能性を潰し、生まれたただ一つの道を、違わないように辿らなければ、この最良の結末にはたどり着けない。お前には出来るか?私には……」
そう言いながら、白仮面は口元をにやけさせながら自身の胸元にその兵器を押し当てる。
「出来たぞ」
そう、言い終わった瞬間、白仮面の持つ兵器が爆発した。体のすぐ近くで爆発した爆弾は白仮面という存在全てを破壊し、飛び散った様々なものがカイトに吹き付けられる。
カイトに付いた大量の血液は、まるでカイトに染みこむように広がりながら垂れていった。カイトが呆然としていると、玉座の奥の扉が開く。カイトはふらふらと、その中に入っていった。一歩一歩自分であることを確かめるように。
進んでいった先、そこにあったのは標本体のような保存装置で眠るソラと、自分が過去から持ってきた一冊の手帳、そして過去に帰還するための装置だった。
カイトはその手帳を取り、中を調べていく。そこには白仮面によって様々な情報が書き足されていた。それを読み進めていく内にカイトは笑い出す。
「ははは、あはははは! 何だよこれ、何なんだよ! 何でだ、何で、地球はエルデンに勝てないんだ……」
それさえ出来れば、全て解決出来るのに。時間移動が出来て、何度だって繰り返しているのに、どうしてそれが見つからない。白仮面が書き写した手帳には、歴代の白仮面達が書き足していった。その無念さと思念が籠もっていた。
それでも、何か無いか、何か無いかと必死で読み進める。だが、何も見つからない。……他人が言った言葉なら良かった。きっと嘘扱いにして、気にせず希望に縋れただろう。だが、これは他でもない自分自身が書いたことだ。これ以上に世の中で信用できるものはない。
「創作の世界なら、きっと全てを救う方法が見つかるのに、こんな創作染みたふざけたことが出来るのに、何もすることが出来ない……いや、そうじゃないか。これが救った世界か、そうだよな。俺以外は全て救われている。なんてことない。最良の未来じゃないか……くくく、ははは!」
ひとしきり笑うと、カイトはソラの装置の前に立った。そのソラを微笑ましく見ると装置を弄り、解放しようと動き出す。
「ああ、分かったよ白仮面。引き継いでやるさ、お前の人生を。迷わず辿ってやる、お前の道を。俺が……私が世界を救ってやる」
☆☆☆
「クラック大丈夫!?」
「問題ない、くそ、攻撃してもすぐ再生しやがる。どうなってやがるんだ!」
「永遠とやらの効果のおかげでしょう。ですが、ものには限度があるはずです。このまま、じりじりと攻撃を続けます!」
「だけど、早く終わらせないと、襲撃を受けている仲間が!」
「ここで此奴を通す方が不味い! 集中しろ流花!」
流花達は今だオルトスとの戦いを続けていた。既に基地に別のエルロイド達が侵入したことは知っている。かなり内部まで進行されているが、オルトスの攻撃が激しく、助けにいけない状況が続いていた。
「ア……?」
すると突然オルトスが止まった。不思議そうに自身の腕を見ている。流花達も警戒しながらオルトスが見ている手を見ると、その手はまるで塩になるように少しずつ粉となって消えて行っていた。
それを見ていたオルトスが感慨深げに喋る。
「ソウデスカ、オワリマシタカ。コレデタドリツイタ。リソウノセカイニ。イマ、ワタシモ、ソチラニイキマス。シロカメンサマ……イエ、カイ……」
そこまで行ったところでオルトスは全身を塩とかし消えた。
「何が起こったの?」
「再生限界? いやこれは!」
ノーマは気付いた、自分の武器が使用できなくなっていることに。きっと同じようにオルトスの永遠も効果が切れたのだ。ということは。
「リーダーがやったんだ! 全てのエルロイドの兵器が停止している! 俺たちの勝ちだ!」
その瞬間、その場に居た全員の歓声が沸き上がった。
☆☆☆
「急に兵器が! なぜ、あ、来るな劣等種族が! あー!!」
「くけけ、白仮面が死んだのか、ジュードとゼスタは何をやっていた! ああ、狩られる。この俺が! 狩られる!」
内部に進行したエルロイドとレジスタンスの立場は逆転していた。突然、エルロイドの武器が使えなくなったエルロイド達は、地下深くまで潜り込んでいた為、逃げ出すことが出来ず、次々と狩られていく。
「くそ、領地に戻れば私だけの兵器があるのに、あれを使えば。ぎゃあ!」
「やれ、逃がすな。絶対にここで全員殺せ! 殺したと思っても攻撃を止めるな! 今までの恨みを込めて、奴らをこの世から影も形もないように消せ!!」
執拗な攻撃でエルロイド達は駆逐されていく。程なく全てのエルロイドが死亡し、地球人類は革命を成功させ、自由を獲得した。
☆☆☆
「止まった。みたい」
装置を操作していたソラは、エルロイドの兵器が止まったことを知り、自分の役目を果たせたと安堵のため息を吐く。
「良かった~。後は兄さんを探すだけか」
そう言ってソラは画面に映る。皇の柱の全体図を見る。
「白仮面の部屋はたぶんこの最上階だよね。白仮面の武器も使えなくなってるはずだし、白仮面を倒して兄さんの居場所を聞きだそう」
ソラはそう言うと白仮面が居ると思う最上階に向かった。
☆☆☆
「兄さん!」
「……ソラか」
白仮面が居ると思って向かった最上階、そこに居たのはカイトだった。ソラはちらりと爆発によって見る影も無くなった、敵と思われるものの残骸に目を向ける。
「これは?」
「白仮面だ。俺が倒した。もっとも最後は俺の手にかかるのが嫌だったのか、自爆したがな」
「そうだったんだ。さすが、兄さんだね!」
ソラは自分が戦っている間に、五人掛かりでも倒せなかった白仮面を倒した兄に素直な賞賛の声を上げる。カイトはそれに対して何も答えず、一つの装置を取り出した。
「……これは?」
「過去に戻るための装置だ。見つけておいた」
そう言うとカイトはソラをつれてテラスに向かう、そこからはエルロイドを駆逐し、喜び回るレジスタンスの姿が見えた。
「……俺たちは、この時代の人間じゃない。とどまり続けるわけには行かないだろう。この未来もそれにより変わってしまうかもしれないしな。だから早く戻ろう」
「え、……でも、流花さんとの挨拶は……」
「行っただろ?エルロイドを倒し、世界を救うと。だから大丈夫だ」
「……まあ、兄さんがそう言うなら良いんだけど」
ソラは不服そうにしながらも渋々納得する。それを見たカイトは装置のスイッチを押した。
「さあ、行こう。俺たちに取っては、ここからが本当の始まりだ」
そう言ってカイト達はこの時代から姿を消した。
☆☆☆
機械が停止する音がする。それと同時に、大量の液体と共にソラは外に放り出された。
「ゴホ、ゴホ」
液体の影響で思わず咳き込むソラ。だが、そんなことも気にせず。ソラは眠り開けの弱った体を酷使して走り出した。今ならまだ間に合うかも知れない。そんな小さな希望を持って。
扉を開け、ソラは叫ぶ。
「兄さん!」
だが、そこにあったのは物言わぬ人であった残骸だけだ。
……あの時は、ただの敵だと思っていた。だが、今なら分かる。あれが何よりも大切な、自分の兄だと言うことが
「ああ、ぁああ……」
ソラは頭を抱えながら、そこで膝を突いた。目の前には兄だったものが散らばっている。
「うぁああああああ!!!」
ソラは、ただ、ただ、泣いた。もう、終わってしまったのだ。大切だったものは、ソラの過去はもう戻ってこない。兄の居ない、何も知らずに作られた、この幻想のような幸せな世界で生きていくしかないのだ。
「ソラ、どうしたの?ってあれ?成長してる……もしかして今のソラ? 昔のソラとソラのお兄さんは?」
そこにレジスタンスがやってきた。彼らは次々と声をかけてくる。
「もう、戻ったのではないでしょうか? 無事、革命も成功してますしね」
「そうなのかな? それなら一言ぐらい声をかけてからでもいいのに……」
「どうした、ソラ。泣いているのか、うれし泣きか、俺も嬉しくて涙が出ているところだ。これで全ては救われた!」
こうして未来の世界に平和は戻った。多くの思いを犠牲にして、その事実だけが残った。
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