第11話復路一路ー2


 休息時間となった後、カイトは地下を出て外の建物から星を見ていた。


 「ソラのお兄さん! 星を見ているの?」

 「まあな、いつか星が無くなっているが、存外変わらないものだ。あれ一つ一つがエルデンみたいなのだと考えると頭が痛くなるな」

 「……ロマンのかけらも無いこというのね~。ムードを読んでよソラのお兄さん」

 「俺がムードを読む前に、いい加減に名前で呼んでくれよ」

 「だ・め。この呼び方は私だけの特別……なんだから」


 そう言うと流花はカイトの隣に腰掛ける。ちらっとカイトに目を向けると胸に手を当て、握りしめる。


 「ずっと言いたかったけど、会えなかったから言えてないことがあるの。この先の戦いがどうなるのか、詳しいことはわからないわ。だから今、伝えておきたくて」


 カイトが振り向いて流花の方を見ると、流花は意思の込めた瞳でカイトを見返した。


 「助けてくれてありがとう。あの時の私は、貴方に助けて貰えなかったらあのエルロイドに何をされていたか分からなかった。きっとあの戦艦の複製体の少女のように世界を恨みながら死ぬことになっていたと思う。そんな私がこうやって希望を持って戦えるのも貴方のおかげ、みんなにとっての救世主はソラだけど、私にとっての救世主はソラのお兄さん。貴方だわ。いや、救世主ってより、その…白馬の…王子様……ともかく!」


 最後の方をごにょごにょ言っていた、切り上げると話しを続ける。


 「私は、貴方に救われた時から、貴方のことが好きなの! ずっとずっと決めてたの。それはあの時から何年、何十年、何百年たった未来の世界でも、貴方が私のことを知らない、昔の貴方でも変わらないわ! だから、私と…つ、付き合ってください!!」


 真っ赤な顔をしながら頭を下げて、右手を延ばす流花。それを見て、カイトは心を動かされていた。ソラ以外に家族を知らない、カイトには、初めて寄せられた、純粋な、直球な、好意はとても好ましいものに映っていた。生まれて時から戦乱で異性との経験が無いカイトは少し照れながらもその手を握ろうとして……直前で止めた。


 「その気持ちはうれしいけど。その手は握れない」

 「え……?」


 流花は唖然とした表情でカイトを見る。


 「お前を救ったカイトは、俺であって、俺じゃない。まだ、俺は君を救ってない。だから、これを握るのはとても不誠実なことだと思う」

 「それは、そうかもしれないけど。私は」

 「だからこそ!」


 流花が何かを言う前にカイトがそれを遮り話しを続ける。


 「……だからこそ、俺が君を救った後に、もう一度、同じことを言ってくれないか」

 「え?」

 「俺はこの世界から元の世界に戻ろうんだろう。なら変えてやるさ、こんな世界にならないように、生き残ってやるさ、また会えるように。エルロイド達を倒して、成し遂げてみせる。…だから! その時にもう一度、同じことを言って欲しい」


 真剣な表情でそう語りかけるカイト。それを見た流花はうれしいような悔しいような、悲しいような、様々な表情が入り交じった顔で答えを返す。


 「あ~。振られちゃったかな? その時の私は今の私とは違うかも知れないのに。…でも、待ってるね。その時を、きっとそれが違う私であっても気持ちは変わらないと思うから。でもやっぱり、ちょっぴり自分で自分がうらやましいかな?」


 ウィンクをして笑顔を見せる流花。すると左手を差し出したが「あ……」と言って戻そうとする。それを見てカイトが聞く。


 「どうしたんだ?」

 「約束、しようと思ったんだけど左手がこれだから」

 「約束?」

 「そう約束。昔、ソラのお兄さんに救われた時にしたの、いつかまた会えるようにって。小指と小指を合わせてこの左手で、そう言う風習が日本にはあるのよ? だからまた同じように約束したかったんだけど、白仮面に左腕を落とされちゃったから」

 「別にいいよ。手がなくたって、ちゃんと気持ちは見えてる」


 そう言うとカイトは流花の手が元通りなら小指があったであろう位置に小指を寄せる。


 「元の世界に戻って、流花を助けて、そして生き抜いてまた出会うことを」

 「元の世界でも救われて、また貴方のことを好きになって、そしてもう一度告白すること」


 「「約束します」」


 「じゃ、じゃあ、私はもう行くね!」


 急に恥ずかしくなったのか、手を振りながら顔を真っ赤にした流花が部屋を飛び出していく、カイトはしばらく自分の左小指を見つめた後、歩き出した。


 「へー。兄さんもやるね~」


 部屋を出るとそこにはにやにやした顔のソラが居た。


 「ソラ! お前、いつの間にここに!」

 「最初っからだよ、僕が兄さんの行動を読めないとでも思ったの」

 「まじか……」


 声も出ないと言った表情のカイト。唯一の身内にしっかりと目撃されていたことが恥ずかしくて仕方が無い。ソラはにやにやとした表情を崩さないが何処か安心した顔をしていた。


 「でも、良かった。僕以外にも兄さんのことをしっかりと見てくれる人が居て。だからこそしっかりと大切にしなきゃね!」


 ソラは振り向きながら、笑顔で言った。


 「頑張って世界を変えようね! 兄さん!」


☆☆☆


 その頃、白仮面は一人、黄昏れながら酒を飲んでいた。すると彼の元に一本の電話が入る。電話の相手は白仮面が放ったネズミだ。


 『白仮面様、ご報告いたします。侵入者達……いえ、レジスタンスは、予定通り、今日アリアドネに向けて動き出すことになりました』

 「そうか。いつもご苦労だな。ーーー。……しかし良いんだな。その選択で、もう戻れないぞ?」

 『もとよりこの命、あなた様の為に捨てると決めておりました。忠誠を誓った、あの日から私の心は変わりません』

 「そうか、わかった。お前の忠誠に感謝する。……全てはあの(・・)尊い白い世界の為に」

 『尊き白い世界の為に…』


☆☆☆


 時が経ち、深夜。


 カイト達は休息を済ませ、アリアドネがある地下に通じるための入り口を目指して歩いていた。


 「暗いからね、みんな離れないように、こんな時間にエルロイド達も動かないと思うが慎重に行こう!」


 ノーマのかけ声に従いながら黙々と目的地を目指して歩く一行。飛行機を使えば早いが、さすがに戦艦を落とした後に飛び立つのは目立つため置いてきた。


 「まだ着かないのか?」

 「もうちょっと歩くね」


 するとノーマが時計を気にしながら言う。


 「おかしい、もうすぐのはずなのに」


 それを見た、クラックがノーマに近づいた。


 「ノーマどうした? 何かあったのか?」

 「いや、なんでもない」


 直ぐさま歩き出すノーマ。クラックは首をかしげながらも再び歩き始める。


 「あと少しだ」

 「あれだぞ!」


 見えてきた建物を見てクラックが声を上げる。それを聞いて、カイト達は気を緩めた。


 ……その時。


 「さあ、始めようか」

 「……!?」


 その言葉と同時に、周囲の電灯が一気に光り始めた。そして建物の上から何者かが飛び降りてくる。光に照らされ、露わになるその姿。忘れるはずも無い白い仮面。一目見ただけでその人物が誰か、その場にいた全員が理解した。


 「白仮面…! どうしてここが」

 「知れたこと、それを私に伝えた人物がいる。…それだけの話しだ」

 「伝えた人物……?」


 <血族認証……確認、エルロイド。ビームセイバーの使用を許可します>

 <血族認証……確認、エルロイド。ビームセイバーの使用を許可します>


 カイトが白仮面の言葉を受け、思わず呟く。だが、腰から二つのビームセイバーを取り出し、構える白仮面を見たカイトは、その疑問を後回しにし、武器を構える。他のメンバーも同じように武器を構えた。


 「レジスタンス共よ。愉快な反乱者ごっこはもう終わりだ。お前達に残された路は一つしか無い。全員纏まってかかってこい」

 「舐めやがって、五対一で勝てると思っているのか!」

 「逆に聞こう、五対一で何故、勝てると思った?」

 「こいつ……」


 カイトはちらりとクラックを見た、クラックは同じくカイトを目で見て、お互いの意思を伝え合う。


 (こんな時のために、連携用のフォーメーションは考えてある。俺とクラックが前衛、流花とソラが中衛、ノーマが後衛だ。ひとまずは二人がかりで彼奴の足を止める)


 「いくぞ!」

 「おう!」


 そのかけ声と共に、クラックとカイトが白仮面に向かって襲いかかる。クラックのビームアックスが白仮面を狙う。白仮面はそれを横に飛び、軽く躱すとビームアックスを蹴り上げる。すると白仮面の足に装備された兵器の力により、ビームアックスはかなりの勢いで蹴り上げられ、それにより、クラックが横に吹き飛ばされる。


 「ぬぅ……」


 飛びかかり追撃しようとする白仮面、だが、カイトがそれを止める。滑り込むように白仮面の背後を取ったカイトはビームセーバーを白仮面に向ける。クラックが大きく態勢を崩しに言って、そこを埋めるようにカイトが斬りかかる。想定通りの連携だ。しかし、その攻撃は白仮面には届かない。白仮面は後ろを見ることも無く、前に向かって飛び込むように縦回転しながら飛んだ。


 見ることも無く攻撃を躱された。そのことにカイトが驚いていると、白仮面の持つ武器がいつの間にか変化していた。左手に持つ武器が銃に変わっている。


 「しまっ……」


 <血族認証……確認、エルロイド。ビームショットガンの使用を許可します>


 カイトがとっさに右に避けた瞬間、その頬を銃弾状に固められたビームが掠める。判断が一瞬でも遅れていたら、今ので死んでいた……。カイトがそう肝を冷やした時、中衛と後衛から銃撃が白仮面に向かって放たれる。


 「遅いな」


 白仮面はその攻撃を認識した瞬間、左手で銃を撃った。白仮面が撃った銃弾がソラが撃った銃弾にぶつかり、お互いが押し合うように射線を逸らす。そしてそれた白仮面とソラ、二つの銃弾が流花、ノーマの放った銃弾とぶつかり、全ての銃撃が、その場にただ立っていた白仮面に当たる事無く周囲に命中し、爆炎を上げた。


 「馬鹿な、たった一発で三人の攻撃を!」

 「どうした? こんなものか?」

 「まだだ!」


 その言葉と共にクラックが横向きにビームアックスを振るう。白仮面はビームセイバーの向きを変えるとそれを受け止めた。クラックのパワーにより、白仮面は吹き飛ばされるが、何事も無かったのかのように、態勢を整えるとビームセイバーとビームショットガンを上空に投げ、腰から別の兵器を取り出す。


 <血族認証……確認、エルロイド。仮想義眼の使用を許可します>

<血族認証……確認、エルロイド。閃光弾の使用を許可します>


 「閃光弾だ! 目を逸らせ!」


 一度、白仮面のフェザーシップから盗み出し、使用したカイトには白仮面が取り出したものが何か理解出来た。視界をやられ、全滅しないようにカイトは全員に聞こえるように叫ぶ。その直後、白仮面が閃光弾を地面にぶつけた、あふれ出た光が周囲を焼く。


 「くっそ、白仮面は?」


 光が晴れてすぐ、カイトは周囲を確認する。だが、白仮面の姿が見えない。


 (あの中で動けたのか? 一人だけ……そうか、あのエルロイドが使っていた目の代わりになるやつを彼奴も……!)


 「ぐぁああ!!」

 「クラック!」

 「まずは一人」


 叫び声が聞こえ、そちらを振り向くとクラックの肩にビームセイバーが突き刺さっていた。白仮面は兵器によって強化された筋力でビームセイバーごとクラックを持ち上げる。そしてクラックを盾にするようにノーマの方へと突撃を開始する。


 「くっ!」


 クラックが射線に入り、ノーマは手を出すことが出来ない。それを見た、カイトは白仮面を止めるために白仮面に向かい走り出す。


 <血族認証……確認、エルロイド。ビームランスの使用を許可します>


 こちらを認識し、ビームショットガンで撃ち抜いてくる白仮面。カイトはその弾をビームセイバーで弾きながら、ビームランスで突き刺そうとする。

 カイトを止めきれないと悟った白仮面はクラックを蹴飛ばした。兵器で強化された脚力によってクラックは吹き飛ばされ、ノーマと衝突する。クラックの巨体にぶつけられたノーマは「うっ!」と短い声を出して倒れる。

 だが、これにより射線が開いた、流花とソラは白仮面を中心に対局の位置に移動し、挟み込むように銃撃を行う。カイトはそれに合わせて一歩後ろに引いた。白仮面はまたしても弾を見ることもせず、二本のビームセイバーで弾き返す。


 「がっ!」

 「きゃ!」


 弾き返された弾は、エルロイドの技術で作られている、防弾加工がされた服に当たる。それにより、死ぬことはなかったものの、弾の直撃を受けた二人は吹き飛ばされ、意識を失った。


 「これで、残り一人だ。さて、どうする? 大人しく捕まるというのなら、命だけは助けてやろう。命だけはな、……言っている意味は分かるだろう?」

 「く、まだだ、まだ終わっていない!」


 確かに状況は不利だ。既に戦闘を継続できるものは自分一人しかいない。もはや、負けたと言い切っても良い状況だろう。五人掛かりで、かすり傷一つ付けられない相手をたった一人で向かい討たなければならないのだから。

 だが、カイトは同時に思っていた。


 (まだ、希望はある。俺が時間を持たせている間に、他の奴らが意識を取り戻せば、また五対一で戦える、そうすれば、まだ、勝つ可能性は……!)


 そのカイトの表情を見た、白仮面はふっと嘲笑うように笑う。


 「残酷なものだな。希望があるからこそ、立ち止まることすら出来ない。まだいける、まだいけると、それが、どれだけ己を、周りを、傷つけても、前に進み続けてしまう。まるで光を追い求める亡者のようだ」


 そう言うと白仮面は倒れていたクラックとノーマに目を向ける。二人は意識を取り戻し、起き上がっている所だった。


 「希望を持った者はいい。あのように何度だって立ち上がって、立ち向かえるのだろう。そして終わるときも、きっと、自分に出来る最善のことをした、と愚かにも考えて、満足して死ねるだろう……だが、その希望はどうなる? 」


 再び、白仮面はカイトに目を向けた。


 「多くの何かを傷つけて、諦めずに前に進み続けて、結局果たされることなく、終わったその希望。それは一体どこに行く? 誰かに引き継がれるのか? 他の誰かがその希望を持って、再び立ち向かえるようになるのか? 否、引き継がれなどしない。 引き継がれるのは、無残にも希望は散った、その事実と、残った誰もが傷つき、全てが終わった、その現実だけだ。……本当は何をすべきなのか、お前には分かっているのだろう? アオヌマ・カイト(・・・・・・・・)。何が最善か、お前の前には既に解が示されているはずだ」


 何かを促すように言う白仮面。それを聞いてカイトは思った。


 (……悔しいけど、今の俺たちじゃ、白仮面を倒すのは不可能だ。五人掛かりでも歯が立たない……確かにそれが現実だ)


 カイトは手に持ったライトセイバーを握りながらも考える。これからどうすれば良いのか。


 (……ここで、このまま全員で挑めば勝てるという希望にすがって、挑み続けることはできる。だが、本当にそれで良いのか? もし、勝つことが出来なかったら……。レジスタンス達の革命が失敗するだけではない。ソラも、白仮面に捕らえられ、標本体にされてしまう。そうなれば、もう全てが終わりだ。助けてくれる人なんてもういない。一生、標本体のままだ……。そんな危険を冒すくらいなら……)


 ちらりとカイトはソラを見た。


 (勝利のためには皇の柱に、俺か、ソラか、どちらかがたどり着かなければならない。逆を言えばどちらかがたどり着ければ良い。……このまま全滅するくらいなら、いっそのこと……)


 カイトは意思の込めた目でノーマを見た。ノーマが自身を見たことを確かめると、アリアドネの入り口に視線を向ける。それを見た、ノーマは全てを理解し、クラックにそれを伝える。


 「一つ、聞いてもいいか?」

 「何だ?」

 

 カイトは白仮面の注意を逸らすために話しかけた、白仮面は律儀にそれに答える。


 「どうして、そんなことを俺に教える? そもそもあんたはこの戦いで、いつでもここにいる全員を殺せたはずだ。なのに何故殺さない? わざわざここには、俺たちを倒すために来たんだろう? お前の目的は一体何だ!?」

 「私の目的か? 私の目的は、あの(・・)尊い白い世界だ。そしてそこに至るための道を辿っている。違える事無く、確実に、同じ道を進んでいるのだ」

 「白い世界? 辿っている? 何を訳の分からないことを……」


 そう会話をしている間にもノーマとクラックが動く、クラックは不服そうだがしっかりと動き、二人はそれぞれソラと流花に近づく。


 「ふふふ、いずれ分かるさ、お前にもな……」


 そう言うと白仮面は手に持っていたビームセイバーをソラと流花をそれぞれ背負った、ノーマとクラックの前に投げた。それは行く手を遮るように地面に刺さる。


 「……これで足止めができた、などとは思ってはいないよな?」

 「気づいていたのか」

 「当たり前だ、気付かないわけないだろう。……言ったはずだ。理想の未来を掴むには可能性を排除するしかないと、これではまだ、足りないな」


 そう言うと白仮面は腰から武器を取り出す。


 <血族認証……確認、エルロイド。ビームランスの使用を許可します>


 ビームランスを構える白仮面。狙いはソラだ。白仮面は駆け出し、ノーマごとソラを貫こうとする。


 「させるかよ!!」


 その攻撃をカイトが間に入ることで止める、そして白仮面を押し出すようにソラ達から距離を離そうと動く、だが、白仮面もそう上手くは動かされない。ビームランスとビームランスがぶつかり、徐々にカイトの傷が増えていく。


 「うぉおおお!!」

 「ふっ」


 何度も何度も叫びながらひたすら攻撃を続けるカイト。武器が吹き飛ばされても新たな武器を取り出し、纏わり付くように白仮面を逃がさない。だが、白仮面は余力を見せながら、その攻撃を全て捌いていく。カイトは焦り始めていた。


 (止めることすらままならない! このままじゃ、例え、ソラ達をアリアドネに逃がしたとしても直ぐに追いつかれてしまう……。それに例え逃げ切れたとしても、意識を取り戻したソラが俺を助けにここに戻ってきてしまう可能性がある……)


 「くっそ!」


 カイトはアリアドネの入り口を見た。ちょうどノーマとクラックが中に入っていった所だ。それを見たカイトは覚悟を決め、手榴弾を取り出す。そしてそれを入り口に向かって投げた。

 爆発により、建物が崩れ落ち、入り口が押しつぶされる。


 「ほう、良い判断だ、入り口を壊すことで私による追跡の可能性と、ソラが自身を助けに戻ってきてしまう可能性を消した。これで彼らの生存率は大きく上がっただろう……だが、代わりにお前は逃げることが出来なくなった」

 「……ただで、やられるかよ……せめて腕一本! 道連れにしてやる!」


 カイトは再び、ビームセイバーを取り出して白仮面に斬りかかる。白仮面は打ち合いを演じていた先ほどとは打って変わり、それを易々と躱すとカイトの腹に膝蹴りを行う。


 「がぁ!?」

 「安心しろ。お前には」


 白仮面は肘を下に落とし、膝蹴りでくの字に折れ曲がったカイトを地面に叩きつける。


 「まだ、やらなければらないことがある。だから、殺しはしないさ」


 カイトが最後に見たのは、そう言いながらカイトをのぞき込む、白仮面の底の見えない闇のような眼だった。

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