第7話空上刑罰ー1

 「ソラ、こっちだ!」


 切羽詰まったようなカイトの叫びを聞き、ソラも走る。


 現在、ソラとカイトの兄弟は突然現れた戦艦からの集中砲火から建物を使いながら逃げ回っているところだった。


 「くそ、折角装備が手に入ったのに、あんな奴が相手じゃ何も出来ない……!」

 「白仮面から奪ったあの飛行機があれば乗り込んで何とか出来たかも知れないけど……これは不味いよね」


 二人には打てる手は何も残されていなかった。一時期、戦闘用飛行機を保持していたがそれは撃ち落とされ、道中で出会った機械兵が乗る飛行機もアドバンテージがあちらにあり、たやすく倒せないことから極力戦闘を避けて移動してきた付けが回ってしまった。空を飛ぶ何かか、あの戦艦ごと破壊する強力な兵器でも無い限り、攻撃することすら叶わない。今、二人は絶対絶命のピンチに陥っていた。


 「どうしよう兄さん?」

 「まともにやり合って勝てないなら、やり過ごしていなくなるのを待つしか無い。空が駄目なら地下だ。地下逃げれば相手の視界から逃れられるはずだ」


 そう言ってカイト達は近くのマンホールに向かって走る。この辺りは戦争後から改築されていないのか、戦争前の状態のままマンホールが残っていた。砲撃で建物が次々と壊れる中、期待を込めてソラと二人でその蓋を開ける。


 「よし! 潰れてない。まだ生きているぞ! この地下水道!」

 「もう建物が持たないよ!」

 「分かった。行くぞソラ!」


 二人は地下通路へと飛び込んだ。


☆☆☆


 「思ったより広いな」

 「でも暗いね」


 地下通路を二人は駆けて行く、地上では地下ごと崩落させようかと考えているのか引っ切りなしに攻撃が行われる音が響き、それと同時に地下が揺れ、崩壊していく。


 その時、カイトは不思議に思った。なぜ、自分たちの居場所がこんなにも的確に攻撃されているのだろうかと、そして気づくまさか何かに付けられている……!?


 「はい、後ろ」


 その時、声が聞こえた。それと同時に機械が叩き潰されたような音が響く、ソラとカイトは瞬時に振り返り、身構える。そしてじっくりと相手を見て驚愕の表情を浮かべた。


 「まったく、動物型の監視装置に気づかないなんて抜けてるよ」

 「そ、そんな、何で……」

 「ふふふ、そう驚いて貰えるとうれしいよ。待ちわびたかいがあった。……やっと来たね、我らが救世主」

 「人間……いや、地球人!?」


 短い耳を持ち、ソラと同じような特徴を持つもの。それは紛れもなく、飛ばされる前の世界。地球に住む人々の特徴だった。


☆☆☆


 「何だぁ? 急に映像が途切れたぞ!?」


 ルーカスは今まで見えていた映像が地下に入ったすぐ後に見えなくなったことに驚き声を上げた。

 「っち、もしかして地上の攻撃による崩落に巻き込まれちまったか? まあいい、どうせ遠くには行っていまい、後は地上でひたすら撃っていればいつの間にか死ぬだろう」


 そう考え、ルーカスは攻撃を再開した。


☆☆☆


 「馬鹿な、敵の罠だ、幻覚だ!」


 異次元ワープで飛ばされた遠い星に地球人がいるなんてあり得ない。そう考えたカイトはこれは敵が仕掛けた何かの策だと思い武器を構える。


 「残念だが、罠でも、幻覚でも無い。現実だよ。これは。とても残酷な、君たちに取って未来の……ね」

 「未来?」

 「そう未来だ、救世主殿、取り敢えずそちらの方に武器を下ろすように言って欲しいんだが…」


 それを聞いたソラは呆れたような目になりながらも言った。


 「その救世主っての、もしかして僕のこと? ……なんか止めてくれない? それと兄さん武器を下ろそう」

 「な!? だが、ソラ!」

 「今はもう何も打つ手が無い状態でしょ。折角手がかりになりそうな手が見つかったんだから、乗ってみるのもありだと思うんだ」

 「……そうだな、分かった」


 ソラが言うことにも一理あると思ったカイトは武器を下ろした。それを見て、目の前にいる男はほっとした顔をする。そしてソラがカイトを兄さんと呼んだことに気づき、驚きの表情を見せる。


 「救世主、ああ、昔の呼び方でいいか、リーダー。そちらのお兄さんというのは戦争中に戦死したっていう、あのお兄さん?」

 「俺が……戦死した? 何をふざけたことを」


 再び武器を構えそうになっているカイトの剣呑な雰囲気を見た男は、折角纏まったのにほじくり返しても仕方ないと直ぐさま会話を切り止めた。


 「まあいい。話しは後だ。ここはいつ崩れるか分からないからね。取り敢えず僕たちの拠点に移動しよう」


 カイトとソラは男の誘導に従い歩き始めた。


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