第5話城下決闘ー2
「うーん。もう動きそうにないね…」
「まさか、空域を哨戒している飛行機があるとはな、どうせお得意の機会兵(ドロイド)達だとは思うが、油断して先手を取られたのが不味かったか」
現在、カイトとソラの兄弟は地上に降りていた。理由は簡単だ。順調に航海を続けていたところ、哨戒中だった敵のフェザーシップに見つかり、攻撃を受けてしまったのだ。
なんとか反撃し、哨戒機は倒したものの、機体の高度を維持することが出来なくなり、墜落してしまった。墜落直前に飛び降りたので怪我は無かったが、まだ皇の柱と言われる塔まで距離があり、ここでそこまで行くための足を失ったことはいたかった。
「まあでも兄さん。最低限、白仮面が用意していた武器は持ち出せたし、なんとかなるよ」
そう言ってソラは手元の袋の中身を取り出し、地面に置いていく。これはおそらく白仮面が予備の武器として自身の戦闘機に常備していたものだ。
「手榴弾っぽいのが三つ。閃光弾っぽいのが二つ。後はレーションと水筒か。必要最低限のものって感じだな」
「僕たちを退治しに来たわけだし、強力そうな武器とか必要な奴は持ち歩いてやってくるよね……」
「文句を言っても仕方ないか、それに……」
カイトは壊れたフェザーシップに近づき、弄くり始める。
「兄さん、危ないよ」
「見てろって……よっと」
カイトはフェザーシップから長い棒のような形状の部品を取り出した。
「こいつとかも使えるだろう。ただの部品だが、あの飛行機は戦闘機としての役割もある。なら、ある程度はエルロイドの兵器に対する強度を持っているはずだ。これを使えば、打ち合うことは無理でも戦うことは出来るようになる」
そういうとフェザーシップから離れる。そのとき、部品が外されたことが原因かフェザーシップが大きな音を立てて爆発した。
「うお!」
「わっ!」
完全に炎上し始めたフェザーシップを見て、ソラはジト目でカイトを見る。
「もー。だから言ったじゃん兄さん。あと少し遅れていたら死んでたよ。危ない真似は止めてよね」
「無事だったんだから良いだろう。それよりここを離れよう、他の機会兵(ドロイド)達がやってくるかも知れないし。……侵略が完了したせいか、今まで哨戒している兵もほとんどいなかったが、どうやらこの周囲にはまだ少し残っているみたいだからな」
無理矢理話しを反らしたカイトに不満な表情をソラは見せるものの、言っていることは真っ当なので黙って頷き、動き出そうとする。
『この星に現れた侵入者たちよ』
「なんだ、どこから……」
「兄さん、空を見て、なんか浮かんでる!」
ソラの言葉に従い、空を見るとそこには大きな画面のようなものが投影されていた。そしてそこには一人のエルロイドが映っている。エルロイドは不老だ。故に彼は青年のような姿をしているが、その物腰から長い年月をかけて己を鍛えた、老練な気配をかもし出している。
彼は恐らくこの放送を見ているであろう二人の侵入者達に対して宣言する。
『私の名はエルデン王国軍第十三師団副団長ボルト・マーセナリーだ。王国軍の将たる私の手によってお前達は冥府に送られる。だが、もし、投降するのであれば命だけは助けてやろう。その気になったのならこの建物にやってこい。……連絡は以上だ。逃げられるとは思わないことだ』
画面には地図と建物が映し出される。今の現在地は分からないが行こうと思えば地形と照らし合わせて行くことは出来そうだ。だが……
「いくわけないよね。命だけはってたぶん本当に命だけか、あるいはそう言ってだまし討ちにするつもりだろうし」
「まあな、しかし一体どうして連絡なんてしたんだ? あの様子を見ると俺たちがこの場にいるのがわかってそうだが、なら機械兵(ドロイド)を差し向ければ良いだけだ……いや、そうじゃないのか」
そこまで考えたところでカイトはある可能性に気づいた。
「どうしたの兄さん?」
「もしかしたら彼奴ら、俺たちの居場所が分かっていないのか……? よくよく考えてみればあり得ない話しでも無い。ここは既に完全に侵略が完了された星だ。白仮面も原住民は全て始末したと言っていた。つまり襲いかかってくる敵がいなかったんだ。自分の家の中に防犯機器を付ける奴はいないのと同じに、きっと奴らは侵略し、平和になったこの世界では兵器自体は開発していても、こういう監視装置は開発しなかったんじゃないだろうか。いや、正確には、開発はしていても取り付けはしなかったということか」
「でも、それはおかしくない? 白仮面は僕たちを見つけて襲いかかってきたし、あのボルトもここに僕たちがいることに気づいているみたいだよ?」
「……白仮面はともかく、ボルトの方は説明が付く。俺たちが撃ち落とした飛行機、その信号がロストしたことで俺たちがここにやってきたことに気づいたんだ。そして正確な場所が分からないから、全てを知っていると見せかけて放送を行った。あれで俺たちの心が折れてあの建物にやってくれば探す手間が省ける。もし無視して移動してもそれはそれで元の作戦通り新たに捜索の手を広げればいい。彼奴には損のない手だ」
それを聞いたソラは難しそうな顔をしながら言う。
「うーん。でも、結局僕たちが出来るのは無視して逃げるくらいだよね。ならそんなに深く考えても意味が無いんじゃ?」
その言葉を聞いたカイトは少し考え、にやりと笑った。
「いや、意味はある。これで俺たちの選択肢は増えた」
「選択肢が増えた?」
「そうだ、あのままなら俺たちは逃げることになっていただろう。機械兵の数も分からない以上、どこかで見つかって一気に機械兵達に襲われる可能性があった。武器のない俺たちではそうなったら終わりだ。だが、奴が放送したことによって一つ分かったことがある。それはあの建物に行けば罠がある。何かが待ち構えている。自分たちがやられるとは思わないエルロイドのことだ。きっとあの場所に奴はいる。で、あるならばこれはチャンスだ。お互いの状況が分かっていないこの状況。もっとも有利なのは、相手の位置を知り、先制攻撃を仕掛けられる方だ。そしてその状況に俺らはいる。必ず逃げ切れるとは限らない。それならいっそリスクを犯してでも奴を倒し、追われる可能性を消す。奴の庭であるこの城下で、正々堂々と決闘してやるんだ」
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