終章「真実」
「人間って複雑だ……」
「そうかな、私は意外と単純だと思うよ」
二江くんの言葉にそう答える。
私は二江くんが好きだった。高校のときから好きだった。
けど、二江くんはササガワリョウコが好きだった。
ササガワリョウコが死ねば、私がものにできるんじゃないかって思った。
だからササガワリョウコが付き合っていた零次くんを好きだった、七瀬さんをそそのかした。
効果はてきめんだった。
七瀬さんが当時付き合っていた海藤くんをけしかけて、ササガワリョウコをレイプした。
でも誤算だったのはササガワリョウコが死んでしまったことだ。
それから海藤くんは実は首謀者が私だったと知って、脅しをかけてきた。
だから私は色仕掛けをして、海藤くんの口を封じた。
零次くんが復讐を目論んでいるというのは分かっていた。
だから零次くんに接触して、ずっと微量の毒を飲ませ続けた。
長い時間をかけて、零次くんを殺して、零次くんの復讐を二江くんに引き継がせた。
そして手紙を送った。私を含む、ササガワリョウコの殺人にかかわった全ての人物の名前を書いた手紙を。
それを見た二江くんは復讐を計画した。
案の定、私はそれに巻き込まれた。当然、死ぬ可能性はあった。
でも二江くんになら殺されてもいいし、殺されない自信もあった。
二江くんは事実を知りたがっている。それを知るまでは誰も殺さない。推測でしかないけれど確信はあった。
そして二江くんは事実を知り、罪を自白したものたちを殺していった。
もちろん、自白が事実かどうかの判断は二江くんがしていたのだけど、私は二江くんに共感して、同じ罪を抱いているということを吐露して、自白を逃れた。
二江くんが謎を全て解けたのも、二江くんが全て問題を用意していたからだ。問題を作った人は当然答えも知っている。解けて当然だった。
だから私は生き残れた。
復讐を終えた二江くんが、まだササガワリョウコをひきずっているのは分かってる。
二江くんの一番にはなれない。けどそれでもいい。
二江くんが恋してくれなくても、愛してくれなくても、私は傍にずっといれるだけで、それでいい。
「今日はどこに行くの?」
私は満ち足りた思いで二江くんにたずねる。
「今日はどこにも行かない。お別れだ、本田」
二江くんはそう言って私にナイフを突き刺した。
「な……ん……で?」
「海藤の部屋から、ボイスレコーダーが見つかった。それにはあんたが東尾さんが唆してリョウコをレイプさせたって録音されていた」
「そっか……そうなんだ……」
できれば、少しでも長く二江くんと一緒にいたかったけど、でも仕方ないよね。
「なんで、そんなことをしたんだ?」
「言ったでしょ、単純だって……。私はあなたと一緒にいたかった、ただそれだけだよ」
ナゾの館 大友 鎬 @sinogi_ohtomo
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