第六章(4)

「私たちも、行かなきゃ……」

「待って。本田さん……八島さんが扉を開けるまで待とう。何か胸騒ぎがするんだ……」

 そんなやりとりをしている間にも八島さんは廊下を進み、扉にたどり着き、パネルを操作していた。

途端、ヴゥーイ、ヴゥーイと警告が鳴り響く。

「なんだとっ!? 俺は8を入力したのに。嘘だ、嘘だ。ふざけるなあああああああああああああ!」

 廊下にあったレーザーガンからレーザーが放たれ、その全てが八島さんを貫く。

「答えが違う?」

「ねぇ……どうするの?」

「ちょっとさっきの場所まで戻ってみよう」

 僕は引き返して、途中に書かれていた問題を見つめる。

『8÷8+8-8=□ 6÷9×4+4=2

 2-2+2-2=0  4+6-4-5=2

 4÷6÷4×9=2  3+4+5×6=1』

「あっ……」

 そして僕は気づく。

「どうしたの?」

「ここ、ここだけ答えが違ってる」

 4+6-4-5=2と書かれた場所を触れて僕は言う。

 前の答えは4+6-4-5=1だったはずだ。

「じゃあ、答えが変わってるってこと?」

「うん。でも、考え方は変わってないはずだ」

 僕はじっくりと見る。

 レーザーガンが襲ってこないだけ、思考は冷静だった。

「よし。分かった」

 考え方が変わってなければ、茶番のようなものだ。すぐに答えが分かる。

「行こう」

 僕は本田さんと手をつなぎ、レーザーの走るなかを疾走する。

 疾走、とは言うけれど、実のところ、レーザーガンから射出されたレーザーを見計らって避ける、というのを繰り返していた。

 扉の前にたどり着き、僕はパネルに『0』を入力する。

 するとレーザーガンが天井へと消えていき、扉が開いた。

「なんであの答えが0なの?」

「少し考えてみれば分かるよ」

 僕はそうとだけ言って、開いた扉の先へと進んでいく。

 やがて、光が見えてくる。

「外だ……、行こう」

 僕は本田さんに手を差し伸べると、本田さんは手を握り締める。

 僕たちは駆け出す。

 迎えたのは、朝日だった。

「これからどうするの、二江くん」

「何も変わらないよ。今までと」

 僕はそう答えた。

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