第六章(2)

「どうして……?」

 三国くんが言う。

「キミをかばった、というのは白々しいね。ただ僕は考える時間が欲しかった。自分が助かるために」

 僕は騙した後ろめたさに、心情を吐露する。

「人殺し……っ! 人殺しぃ!」

 東尾さんが叫ぶ。

「なんで、そんなことができるのよ。なんで嘘の答えを教えたのよっ!」

「そうしないとみんなを救えないからだっ!」

「でも、ハジメを殺したっ!」

「仕方なかった、で済むとは思ってない。だから意地でも謎を解く」

「関係ない。そんなの関係ない。人殺しっ!」

「――もうやめて!」

 本田さんが僕と東尾さんの言い争いに終止符を打つ。

「ここから、みんなで協力しよ。それに、言い争っても、あれは止まらないよ」

 そう言ってレーザーガンを本田さんは一瞥する。

「うるさい、黙れっ! あんたもあんたよ――」

 叫ぶ東尾さんに向かってレーザーガンがレーザーを放つ。

「危ないッス!」

 四谷くんが東尾さんを押しのけて、レーザーに身体を貫かれる。

「いやああああああああああっ!」

 四谷くんの死が東尾さんの眼に焼きつく。

「もう、いやあああああああああっ!」

 東尾さんは立ち上がって、パネルに『2』を打ち込む。

 ヴゥーイ、ヴゥーイと音が鳴り、レーザーが東尾さんを貫く。死体のピラミッドがパネルの近くにできていく。

 もう四人が死んだ。八人いたのに、あっと言う間に半分になった。

「答えはまだ分からないのか、明応」

 今まで黙って動向を見守っていた八島さんが僕に問いかける。

「分かりません。でも絶対に解いてみせます」

「とはいえ、あのレーザーガンは答えを入力しなくても撃ってくるんだ」

「それも分かってます。だから少し黙っていてください」

 僕は苛立っていた。

 ヴゥーイ、ヴゥーイと音が鳴り響く。

 焦り、焦り、焦り。

「早くしないと」

 三国くんの取り乱した声が聞こえる。

「なんとかならないの、二江くん」

 本田さんが心配そうな声を出す。

「ダメだ、手の打ちようがない」

 八島さんの諦めたような声が聞こえる。

 レーザーガンが近づいてくる。

 狙いが誰なのか、なんて考えているヒマはなかった。

 誰かが死ぬ、誰かが。

 そのとき、僕に一瞬のひらめき。

 極限に追い込まれて、僕は答えを見出す。

 はずれたらどうする? なんて思わない。

 この答えはきっと合っている。

 『8』

 僕がパネルに入力すると扉が開く。

 正解だ! 喜びを噛み締める間もなく、

「入って!」

 僕は叫ぶ。けれど同時にレーザーは放たれていた。

 僕が扉の奥へと入り、本田さんが入り、そして八島さんが入ってくる。

 けれど三国くんがやってくることはなかった。

 三国くんはレーザーに貫かれて死んでいた。

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