2章
第1話
四月一日
僕らの偉大なる雇用主、三太社長からお前は阿呆だ、間抜けだ、馬鹿だ、若造だ、知恵が無い学問が無い、少しは書物を読め、文才がないから失敗ばかりなのだ。なので日記を書けと言われたので今日からPCで綴ることにしました。之で少しは大人になれれば僕は万々歳ですが、世の中簡単には行かないのでコツコツと頑張ります。
申し遅れました僕の名前は鹿角コメットです。
彼是十数年前に日本に渡来して、しっかりと根を下ろしました。三太さんが妹のロロさんに悪戯をして逆鱗に触れてしまったので追い出されたのです。一寸言いにくいのですが僕の記憶が正しいのなら結婚するのを認めたくなくて、些細な口喧嘩が事の発端でした。それを日誌に書き付けるのは僕の信念に反するので此処では語りませんので悪しからず。
そうそう僕の家族構成を書き付けます。僕は鹿角家族の末弟です。日本では彼是と面倒なのでハーフで通しています。兄弟は僕を入れ全部で七人です。お父さんのダッシャーは少々と申しますか大分変てこな人です。ダンサーお母さんに頭が上がらず常にあーたそれだから三太さんに頭が上がらないんザマスのよ。と常に苛められては喜んでいます。現今の僕じゃ登るにはまだ早い段階の階段なので、喧嘩を止める一歩を踏み込めません。
ヴィクセン姉さんは何を考えているのか分からない節があるので、子供の僕にはワカリマセンが花の金曜日には常に朝帰りしてきます。血の匂いがぷんぷんとしますが子供の僕には大人って理解の範疇を超えています。
プランサー兄さんは益々分かりません。二番目に産まれた長男のルドルフ兄さんが七年前に失踪してから女装するようになりました……ですが僕は知っています。昔から女装壁が有った事を。あれは冷たい雪降りしきる寒波の日でした。ロロさんの花嫁衣裳を嬉しそうに身を通していたことを。兄さんは日本に来てから高段階な魂の階段を一歩登れたようです。ルドルフ兄さんの失踪を気に葛藤の箍が外れたからなのか、常に緑色の変な胃薬を手放しません。ぷりぷりと緑色の便が出てきて悩んでは又胃薬を飲み又若草色の便が排出されます。薬を止めればいいのですが中々止められない体質になっている御様子です。
ドゥンダー兄さんは僕を一番馬鹿にします。常に接待だと言っては家に寄り付かない日が多いです。が、機嫌の良い日はゴルフ自慢をしてくれます。正直どうでもいい話なので適当に相槌して逃げ出しますが、追いかけてきては大事な鞄の中身を見せてくれます。中身は古い外国の何かが書かれている本一冊だけです。大変有難い御利益のある代物らしいのですが僕は読めませんでした。何でも昔僕ら一家が住んでいた国の文字みたいらしいのですが、僕は子供だったので覚えていません。
――非常に残念です。
ブリッツエン兄さんは僕に一番優しいです。だから僕は一番好きですが常に問題ばかり引き起こすので事後処理が大変です。こないだなんか酔った勢いで相手を見ないでボクサー相手に喧嘩を売り僕が大立ち回り。酔狂も好いのですが大人の判別をしてくれればと思います。釣りや薬草に詳しく料理も上手です。正直母さんの調理はしょっぱいので大助かりです。調理の基本さみっしょが苦手みたいで母さんは出汁の出る鍋しか作りませんから。最近判明したのですが、緑色の薬剤を作ってはプランサー兄さんに渡してます。一体何が入っているのでしょうか?
キューピッド姉さんはドゥンダー兄さんと犬猿の仲で、常にあの額の黒子をエレベーターのボタンみたいに押したい! とふうふうと息継ぎしながら汗拭きつつ愚痴ります。大人って兄妹って大変ですね。そうそう先日は玩具作りのはずが爆弾に変身して大爆発して何かと大変でした。お願いですから爆弾だけは勘弁してください。
そして失踪したルドルフ兄さん。一番の常識人で真っ当な人間で誰よりも思いやりがあり頼りがいがありました。三太さんが逆らえない人物の一人でもあります。ルドルフ兄さんがこうと言えば、むにゃむにゃと語尾を濁らせますから。でも日本に移住するなり数年で失踪してしまいました。日本の気候や風土に文化が肌に合わなかったのでしょうか? でも完全に文化に溶け込み馴染んでいたので、思い当たることが一つも無いので皆目見当がつきません。兎にも角にも原因はワカリマセンが、失踪前日お風呂上りに楽しみに待っていた兄さんの好物ティラミスをうっかりと食したのが原因でしょうか?
そして僕らの雇い主三太さん。偉大で尊大自尊自大なる我らが雇い主です。眼福する眼が僕には存在しないのではなく、我のことを呼ぶときは敬へ傅け崇めよと言います。そうしないと怒ります。……厄介な上司ですね。ですが老人の戯言だと思って付き合えば案外忍耐力がつくので重畳しますよ。それになんと言ってもサンタクロースですからその魔力たるや他を抜きん出ています。魔道の王者たる方ですから。吸血鬼、人狼、半腐敗機械混合人間と並び超有名人ですからね、その分力が凄まじいです。三太さんが蛙にしちゃると、怒ればそうなります、僕らには震えて脅えながら待つしかありません。とは申せども普段のあの人から想像もできないと思いますが。んー当初は何を書き記せば分かりませんでしたが、案外文字が埋まるもんですね。本日は季節外れの春一番が吹き荒れる大嵐。他大雨に裏手から響く工事音。鳩の鳥獣害の後片付けと、三太さんが鳩に脅えて僕にしがみ付くのを引っぺがすのが大変でした。早くルドルフ兄さんを見つけないと。
とまぁ長くなりましたが、僕の日常を赤裸々に綴ることを心掛けていきます。
――コメット
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