第3話

四月五日


 本日は一寸と晩い春一番の影響で、西高東低のどんよりとした雲低が果てしなく広がる一日なり。

 初春の柔らかい陽光が早々に懐かしき日々にただ思いを馳せるだけ。

 早くも筆不精将軍になるところであった。


 我も会社経営に、老年の紳士が嗜みとして足繁く通う、顔馴染みの店巡り、巡業に、色々と大変な日々であった。

 何しろ、寄った先から帰さない、と嬉しい悲鳴をあげられるものだから、ついつい日誌を書くのが億劫になっていたのではないぞ。

 断じて違うなり。


 むっ、いかんな、酔いが回り始めて、あろう事か日誌に接吻して、口紅が付着してしまった。ティッシュは何処だ?

 今日は疲れた明日にでも新しい出来事を書き付けよう。

 ――三太黒須桃源郷巡り


 追伸。


 もう二度とコメットの奴は連れて行かん! 

 なーにぃがぁあ、可愛い顔の坊やだ!

 明日苛めてやろう。之まさしく天誅なり。


 我の怒りを受け止めろ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る