第12話 頑張れ麻生! 絶対零度の気温でも!
「うぐぐぐぐぐぐぐ………ギギギギギ……ハッ!」
洋明は目を覚ました。
「ハァ……ハァ……オ、オレは一体………」
酷い頭痛がする。おそらく、夢の内容が彼女関係のものだったに違いない。南極だというのに汗が吹きだし、目は血の涙が流れたような痛みが走っている。
「そういえば……なぜこの場所で倒れたのだろう……」
少し状況を整理しようと考える。起き上がり、ドッカリと氷に座って現在の状況を整理する。
まずヒラガマツを追ったのは勘違いであり、物凄いショックで気が狂いそうになったが、すぐに鉄仮面は南極にいるとわかった。なぜならヤツはマントを着ていたからだ。
マントを着ているのはマントを着るぐらい寒い場所にヤツが住んでいるからである。この考えに間違いは無い。
それからすぐに南極へと旅立ち無事到着した。海を泳ぎ切り南極の大地に立った瞬間急激な寒さを感じたが、厚着になるといつ始まるかわからない鉄仮面との戦闘の邪魔になるってしまう。なので服について考えるのはやめた。
南極大陸を走り回り鉄仮面を探していたが歩いている途中滑ってしまい持っていた鏡の欠片が何処かにいってしまった。ブリザードの中探すのは非常に困難で見つける事はできなかったのが悔やまれる。
その後は覚えていない。なにやらアザラシが頭に浮かぶが別に関係ないだろう。
だが、このおぼろげに浮かぶ記憶には誰かがいたような気がする。
「二人……だったよな……」
そうだ、たしかいた。発作を止めるために氷を見て名前を呟いて……旅の疲れでそのまま倒れてしまった時に声を聞いたのだ。
「たしか、なんとか博士と言っていたような……他にはオーラ……怨念……人を超える……マッドサイエンティスト……」
そこで洋明はピンと来た。ピンときてしまった。
あの博士と呼ばれていた誰か、ヤツはまさか――――
「まさか――――鉄仮面の手下か!?」
洋明は確信した。
「こんな南極の地でオレに興味を持つ者など限られている……そう、オレが復讐を誓っている鉄仮面以外は!」
洋明の拳がワナワナと震え、血の流れに憤怒が入り混じっていく。
「オレの復讐についに気がついたというワケか! 命が狙われている事を知ればオレを調べようとするのは必然! そのために偵察用のザコを派遣したというワケだ!」
麻生はあの日からずっと鉄仮面の行方を追っている。もう長い間追っているので、向こうもこちらの存在に気がついたのだ。鉄仮面は自分に迫る危険を察知できない程バカでは無いようだった。
「特にマッドサイエンティストという単語……反吐しか出ない悪である鉄仮面の部下が口にするにはピッタリ――――すぎる!」
だから手を打った。
敵である洋明の情報を集め己に迫る前に葬ってやろうと、姑息な手段を打とうとしている。
「ハッ! そうはいかんぞ鉄仮面!」
この考えが妄想の可能性が高い事は洋明は承知している。だが、これらは十分にありえる事だ。考えすぎでは無い。鉄仮面が麻生洋明に対して何もしてこない方が不自然なのだから。
「お前の姑息を致命傷に変えてやる!」
それにこれはチャンスなのだ。
あの時会話していたのが鉄仮面の偵察員ならばソイツは確実に鉄仮面と繋がっている。
「……ふ……ふふふ……ククク……クハハハハハ!」
鉄仮面の居場所を知る千載一遇のチャンス。博士とやらから一気に鉄仮面の元へたどり着けるかもしれないのだ。
そう思えば笑いがこみ上げるのも無理はない。
「ははははははははははは! ふははははははははは!」
洋明は左手の平を額に当てて身体を反らし大いに笑った。
これは余裕ではない。油断でもない。
鉄仮面に――――――追いつける。
それを確信した人を超えし者の雄叫びだった。
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