こんなにも危険!不老不死!~凡人+不老不死では地獄を味わう~
俺は平凡な高校生だった…
俺はテンプレ的に異世界に移動した。
その時、神を名乗る女にチートを1つ貰う事になったのだが、貰えるものリストに『不老不死』があったので、それを選択する。
そして、なんかオマケで『精神異常無効化』を貰った。
+向こうの世界の言語知識貰った。
不老不死は秦の始皇帝も求めた人類の夢だ。ものすごくワクワクした。
だいたい、長く生き過ぎて苦痛になるとか、そんなの想像に過ぎないだろうに。辞めたほうが良いとか、お話ではよく見る話だが、俺はそうは思わない。
それに、なってみなきゃ分からないだろうに。まあ、オマケがあれば多分苦痛とやらには見舞われない気がした。
さーて俺の不死身無双が始まるぜ!
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最初の村で思い知った。
村で世間話をしてたら盗賊が襲ってきたわけだ。
結論から言うと死ぬと滅茶苦茶痛い。いや分かってたけど分かってなかったよ。
あと凡人な俺はあくまでも凡人+不死身なだけだった。
何度も死にながら盗賊を殺したが、村人からは普通にドン引きされた。
だから居た堪れなくなって村から出た。
いいさ、どうせ餓死はしないんだ。
気楽に行こう。
強さに関しては、仕方ない。凡人だもの。
そこは努力して努力して努力すればいいさ。
どうせその努力は消えてなくならない。
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で、どっか町へ行こうとしたら奴隷商人に襲われた。
すげえ拘束された。
幸いな事に強制はされないっぽい。
…いや死ぬまで奴隷とか超勘弁して欲しいんだが。
何度か逃げ出そうとしたが、どうにもならん。
クソが…
死なないように手加減もされるし…傷はすぐ治るがコレはきつい。
こうなったら売られた先で脱走するしか無いか。
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うへえ…
奴隷の調教とかマジ勘弁してほしい。
我慢我慢。
くっそ、憶えてやがれ。
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あーあー
なんかさ、剣持ってさ、盾持ってさ、なんか戦場に移動しているワケですが。
そうかコレ逃げれるかも知れないな。
あ、そうそう…純潔は守れなかったよ…ホモどもめ!
で、戦場。
最前線で後ろに弓持った督戦隊アリ。
クックック。督戦隊とか無意味なことを教えてやろう!
俺は逃げるぞ!あばよ!
乱戦の最中、死んだふりとかしつつゆっくり移動。
森とかに行ければ助かるだろう。
弓とかめっちゃ刺さってるけどな。
森の中へ逃亡成功。
ふう、俺は自由だ!!コンチクショー!
なんちゃら聖王国とやら覚えてろーー!!
さて、死体から武器とか鎧とか入手して俺は不眠不休で山越え。
とりあえず水さえあればいいので、武術の訓練と開始する。
盗賊とかと刺し違えたりして資金を得て、街の情報を付近の村で情報収集しつつ
鍛えている。
随分と死んだし、随分と殺した。
凡人な俺でももう、人を殺すのにためらわなくなるとか、異世界ヤバイ。
あーそうだ。森とか山には猛獣に魔物がウヨウヨ居て何度か食事になったっけなハッハッハ!
で、山で暮らすこと10年存分に力を蓄えたし、これから俺の成り上がりが始まる!
なんちゃら聖王国の敵国であるヴォルイン王国に潜入。
傭兵を開始する。
あ?冒険者?
そんなもん無いよ!
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戦場を駆ける事115度。
マジこの戦争終わらねえ。一進一退を繰り返し、朝仲良く飯食った奴が夕方には冷たくなってるなんてザラだった。
だが俺の働きが認められたらしく、傭兵を取りまとめる役目を与えられたりした。
それに幾多の戦場で色々学んだし強くもなっただろう。
奇襲を受けることもあれば、奇襲をすることもあった。
そして、俺の働きもあってか、遂に聖王国は敗北を続け戦争に勝利した!
俺は働きを認められ、騎士にとりたてられた…
だがソレは罠だった。
戦っている最中、不死身なのを良い事に傷をうけつつも戦った、、不死身な事を露出しすぎたんだろうか。
百人近い兵士に天才型剣士。それに王子が目の前に居る。
「死なぬ化物め。貴様のような魔物は王国に要らぬ!」
そんな事を言っていた…処刑したとしても死なない俺をどうするつもりなのだろうか。
引っ張って連れてこられたのは山の中腹。
硫黄の臭がする。煙から温泉の源泉でもある感じだがどうするというのか。
洞窟の中には鉄の鎖に
凄く、嫌な予感がした。
「お前をこの中に封印し、熱湯の中に沈める。そして熱の泉と岩で貴様を封印する!二度と出てくれると思うなよ!化物が!!」
なんという事だ!
俺が一体何をしたというのか!
目一杯抵抗したが無駄だった。
おれは
クソ!クソ!クソが!!
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基本的にコレの繰り返し。
どうやっても出れない針で一杯の鉄の棺桶から身じろぎもできない。
血は再生する。
痛い…
熱い…
息もできない…
死に逃げれない。
痛みで考えるのを辞めれない。
『精神異常無効化』で狂う事すらできない!
なんという地獄!
針山地獄と灼熱地獄を同時に味わうなど…
一体なんの罪を犯したというのか!
生身で現世で地獄を味わう事になるとは!
おのれ…おのれ!
許さん!
許さんぞ!!!!
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どれだけ時間が経ったのだろうか。
何度も心が折れた。何度も救いを求めた。
何度も恨んだ。何度も死に逃げれない事を悔いた。
何度も何度もだ。
気がついたら、例の洞窟で横になっていた。
「たすかった・・・?」
息が吸えた。
熱くも無かった。
痛くも無かった。
ああ、繰り返し死なない事のなんと素晴らしいことか!
「気がついたのね?」
そこには金髪の少女が立っていた。
本能的に、そいつが人間ではないと分かったが、そんな事はどうでもいい。
「あ、あり…ありがどうございばす!」
涙と鼻水で最後までちゃんと言えなかった。
きっとこの方が助けてくれたのだ。感謝!
感謝しかない!
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「さて、落ち着いたかな?」
「はい。」
落ち着いたが、感謝と畏敬の念は最高潮のままだ。
どうすればこの感激を伝えられるのだろうか。
「ここからが本編だ。お待たせしました。」
「???」
「まず私は貴方と同じ世界のものです。」
「なんと!」
「先ほど転移させられた方が居たので、追いかけて戻してあげたのですが、他にもいらっしゃったみたいですので来てみました。」
「ついででも、大助かりでした。」
「いやあ、まさかあんな風になっているとは驚きです。不死か何かチートもらいました?」
「不老不死を貰いました。あと精神異常無効を…」
「うわ…ソレであの状況に?拷問ってか地獄じゃない?」
「正に地獄でした。
貴女は言うならば、地獄に仏という感じです。」
「大変だったわねぇ。
まあ地獄も終わり。一応帰せるけど…どうする?」
「ここに来てから10年修行して10年戦った。そして何年か分からないけど封印された。
帰った所で居場所は無いんでしょうね。」
「まあ、難しいわね。」
「俺は今。この世界でやりたいことがあるんですよ。」
「へぇ、何かしら?」
「復讐です。」
「ふむ。」
「復讐は虚しいとか言わないでくださいよ。
せめて俺の味わった地獄の百万分の一は味わって貰わないと割に合わない。
一体俺が何の罪を犯したというのか。」
「不老不死というのは罪なのですが、まあ置いておきましょう。」
「…なるほど、不老不死の罰だったのか」
「では、帰らないという事ですね。」
「おう。どうせ帰ったら不老不死無くなるんだろう?」
「まあそうね。」
「なら、復讐だ。やった奴もそうだが国自体にもする。民に罪はないとか、そんな綺麗事は良い。俺の恨みはそんなレベルじゃないんだ。」
「人類の敵になる感じですね?すごい選択です。」
「精神異常無効とか言っても、たいしたことは無いみたいだ。正常なまま俺は狂ったらしい。」
「わお」
「何が悪かったのは朧気に分かるんだが、不死身の俺がなぜ此処まで酷いことになるのか分からん。できれば教えて貰えないだろうか。」
「良いでしょう。説明しよう!」
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『不死身なのに地獄を味わった件について』
「1.弱い。弱すぎる!」
「ぐっ・・・」
「不死身だろうがなんだろうが、振りかかる災厄を跳ね除けるだけの力が無い。ならおとなしくしておくべき。」
「10年鍛えたんだがなぁ」
「はっ!たかが10年。貴方くらいの才能ならそうね…1000年は必要じゃないかしら?まあ、最低でも100年ね。」
「100年…」
「2.デッドロック対策がない。」
「デッドロック?」
「コンピューター用語にもあるけど、この場合はまあ私の造語になるかな。まあ状況は似てるか。
要するに先程までの貴方ですよ。」
「さっきまでの?」
「継続的に死の状況に追いやられる事ね。復活と死を繰り返し他の行動ができなくなる。」
「なるほど、確かに…」
「このデッドロック対策は幾つかあって、可能であれば『リスポーン』地点の設定、次点で復活時の本体設定変更、できなければ復活時間延長ですかね。」
「え、なにそれ。」
「リスポーンは要するに、復活できる安全な地点を設定しておくと、死んだ時はそこで復活するというモノです。」
「おお、すごい!」
「設定できます?」
「???どうやるんです?」
「・・・」
「・・・」
「設定でき無さそうですね、。無理と…」
「なんてこった。」
「次に復活時の本体設定。」
「それはどういうこと?」
「首を跳ね飛ばされた時、胴体と頭…どっちが本体なの?」
「え?……
どっちだろう。」
「まあ、例えば真っ二つに割ったとして、復活できるのは一方だけですね。」
「はい、そうですね。」
「復活時の本体…例えば手だけ切り離しておいて、手から復活とかね。」
「おお!」
「究極は、予め復活したい地点に髪の毛を用意しておいて、死んだら髪の毛から復活とかね。」
「なるほど…あれ?
それさ、全て合わせて溶岩か何かに落ちたらどうなるの?
完全死亡?」
「それこそ、死んだ地点のみでの復活になりますねぇ」
「それって永遠に溶岩に落ち続けるようになる?」
「まあ、そういう事もありますかね。」
「こわっ!怖すぎ!」
「で、できるの?」
「どうやるの?」
「…まあ気合でがんばってみて。」
「がんばる……がんばる」
「あーあと復活時間延長は?」
「そのまんまですよ。死んだ直後に復活するから不死身だと思われるのです。しばらく死体のフリでもしてなさいな。」
「死んだふりくらいならなんとかなるか。」
「できるなら、ちゃんと延長してね。」
「がんばる。」
「本当にがんばってくださいね。例えばコンクリに詰められて日本海溝真っ逆さまとかされると、私も救いようはないですから。」
「な、なんでそんな事思いつくんだよ。怖いよ…」
「次、3.目立ちすぎ。」
「ぐはっ…」
「不死身なんて、もう人間じゃないと言う事を自覚なさい。既に人間は異種族なのです。」
「そうか…そうだよな。」
「目立たない。表に立たないのは基本中の基本よ。もっと身の程を知りなさい。」
「わかりました。」
「4は無し。終わり!」
「死は無しか。」
「ギャグのつもり?」
「あ、すいません。つい。
でもまあ、すごく良いアドバイスでした。ありがとうございます!」
「うんうん。まあ、後はちゃんと訓練したまえ。」
「あーそれでですね。ご相談が」
「なあに?復讐に手は貸さないわよ?」
「いえ、そんな厚かましいことは…」
「それで?」
「俺は100年も修行なんてしてられません。できれば今すぐに復讐したい。
何か方法はありませんか?」
「…直接乗り込むなんてダメすぎるわよね。どう復讐したいかによるけど?」
「ちなみに、貴女が復讐するとしたらどうします?」
「復讐しようと考えた時には、すでに焦土ができていた。そんな感じ」
「ぱねえ…
が、参考にならない。」
「で、どんな風な復讐なの?」
「まず、王族と貴族は絶対です。国が相手なので民に影響が及んでも大丈夫です。皆殺しでも構いません。宜しくお願いします。」
「ふうん…本当に正気のまま狂ってるわけね。ならそうねぇ、貴方薬師になりなさい。」
「薬師?何故?」
「何故、人を助けるような事を?」
「薬は確かに病や怪我を治すのだけど、要するに人体に効率よく作用すると言う事。
言い換えれば、人体に影響する物質のスペシャリストね。」
「ほうほう」
「こうとも言うわ。毒を薄めたものが薬なのだ。と」
「つまり、毒を使えということですか。」
「考えても見なさい。自分を中心に自爆的な薬物の散布をした所で自分は死なないのだから一方的かつ無差別な攻撃になるでしょう?」
「・・・確かに!」
「また病に詳しいということは、病を蔓延させる方法にも精通するということ。」
「病すらばらまくのか!」
「それは人の病だけではないわ。例えば麦とか植物だって病になる、収穫量が落ちればそれだけ餓死者が増えるわけよ。」
「素晴らしい。了解しました。私は薬師を目指します。」
「そお?まあ、またこの世界に来ることもあるかもしれないから、その時また寄らせてもらうわ」
「はい、その時には成果をお見せ出来ると良いのですが」
「復讐の成果ってなによ」
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こうして、かの不死身の化物が復讐を開始した。
最初は薬師として。
村々を訪問し、民を安んじていくその姿は貴族からも肯定的に見られた。
国内の隅から隅まで調べつくし、薬草となるものの便覧を作成することで、その名声が高まる。
が、翌年穀類の凶作、イナゴの大発生、家畜の疫病が発生。大飢饉が発生した。
大量の餓死者を出しつつも、他国から輸入することでなんとか餓死者を減らす。
人口の実に30%の死者が出たがそれは始まりでしかなかった。
疫病である。
家畜の疫病から変化したソレは街を襲い、多くの命を奪った。
それでも必死に延命を図ろうとしていた所で一揆…農民反乱が発生する。
民が飢え死にするという極限の状況下で、通常通りの税を課したのだ。
やがてそれは反乱に発展する。
旧聖王国を中心に国土の4割を反乱軍に取られるに至り、一つの報告がもたらされた。
「陛下、かの不死身の化物の封印が解けてございます。」
ついに封印が解けた事が発覚する。
だが反乱軍より優先するものではなかった。
遂に国軍が首都から出陣する。
かの王子を総大将に国軍は軍を発した。
一ヶ月後、反乱軍と激突しこれを破って反乱を平定した。
後始末を含め、三ヶ月で王都に帰還すると王都は静まり返っていた。
おかしい。
誰もがそう思う中、嫌な予感がしたので王城に先触れを出す。
王城も静まり返っていた。
「一体何が起こっているのだ」
王子はわからないまま城の中を探索する。すると味方の騎士から報告があった。
「王子。何者か謁見の間に居ります。」
「わかった。手がかりはそいつしかいないだろう。行こう。」
謁見の間にぞろぞろと集まると怪しげな仮面を付けたローブの男が其処に居た。
「何者だ!」
王子の隣りにいた騎士が誰何する。
「何やら有名になった薬師でございます。」
「その薬師がなぜこのような所に?」
「逆にお尋ねします。この顔に見覚えは?」
「な、それは!!5年前封じた不死身の化物!?」
「そうさ、復讐に来たんだ。よくも…よくもよくもよくも!
俺を封印してくれたな!」
「くっ、どうやって出てきたかは知らないが…はっ!まさか!
この城の有様はきさまのせいか!」
「その通り、この城、この都市は死の都と化した!」
「な、なにをしたというのだ!!!」
「文字通りさ、死んでもらったのだ。都に住まう全ての人間は!」
「なんだと…」
「お前の父も、母も、妻も、子供も、家臣も、民もすべてだ!」
「な、なんだとおおおおおおおお!
貴様許さん。許さん!
我が父母に妻に子…罪のない者たちをよくも殺したものだな!化物!
今度という今度は存分に嬲ってから
二度と復活できぬように四肢を分断してから封印してくれるわ!」
「許さない?それはこちらのセリフだ。
罪のない俺をよくも生き地獄に送ってくれた。
おかげでこんな復讐鬼ができたぞ。
すべておまえのせいだ!」
「化物が戯れ言を!もはや問答は無用だ。こいつは不死身の化物殺さぬように捕らえよ!」
騎士達はローブを羽織った怪物を取り囲み、捕縛を試みる…しかし。一人また一人と崩れ落ちた。
その化物はただ佇んでいるだけだというのに。
「な、何が…ごふっ」
王子も吐血する。訳がわからなかった。
「私の下から致死性の煙が炊かれている。吸えば死ぬさ。ククク」
「き、貴様…こんな、もので…」
「無論俺も死ぬ。死ぬが蘇る。不死身の化物故にな。」
「こ、これを王都で炊いたのか。」
「別のものだが、まあ死ぬのは変わりないか。そうさ毒だ。」
「ひ、卑怯者め…悪魔め!」
「そうだ。だがこの悪魔はお前が作ったのだ。せいぜい悔やみながら死ね!」
「お、おの…れ……」
こうして俺を封印した王子も死に。ヴォルイン王国も滅んだ。
罪のない民も大勢死んだ。
だからどうした。
死に逃げれる奴のなんと幸せな事か。
さて、この後はどう暮らそうか。
俺は目標を失ったが、人生はその後も永遠に続いていく。
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