こんなにも危険!異世界転生!~神はお詫びしない~

 男が血だまりの中に沈んでいる。

 いきなり後ろから刃物でめった刺しにされたのだ。

 痛みはすでに無い。意識はだんだんと黒く沈んでいく。

「俺が何をしたってんだよ…」

 それが彼の最期の言葉だった。

 

 

 男は死んだと思った後、ふと気が付くと白い世界に居た。

「ここは…」

 

 キョロキョロと見回すが一面白白白。だ

 

「この度は大変申し訳ございませんでした!」

 白い世界に新たな人物が追加される。

 女神

 

 彼女の第一印象はソレだった。

 

 銀髪で白いドレス白い肌。

 神々しい雰囲気。

 

「えっと…」

「本来なら貴方は死ぬ筈ではなかったのですが私がミスをしてしまい、死んでしまったのです。」

「そんな!」


「生き返すことはできないのですが、転生することはできます。」

「転生かぁ。…そうかぁ死んじゃったのか。」


「所で貴女は?」

「人間からは神と呼ばれている存在です。」

 

 やはり女神かと彼は思った。


「それで、できれば日本に転生してもらいたいのだが」

「す、すいませんすいません!

 実は転生できるのは、別の世界でして。私がE-106と呼んでる世界なのですが。」


(うーん、70億は居る人類の中の1億の子供として生まれるには、単純な計算で1/70。そのまま放流されても厳しいな。)

「別の世界に転生して頂く代わりにですね、色々特典を用意させていただきますので、何卒!」


(うーん。特典かぁ。コレはもしやチートって奴かな?確か優位になれるチートがあったはずだ。)


「まあ、それであるならまあ、異世界?のE-106とはどんな世界ですか?」

「それはですね、一言でまとめてしまうと剣と魔法の世界ということになります。」


「私の加護と共に、何かスキルだとか要望があればお付けいたしますが。」

「えーと、記憶の継続と鑑定!鑑定能力を!あとできればナデポをください。」


「記憶の継続に鑑定ですね、余裕です。えーとナデポとは何ですか?」

「ナデナデすると、ポッと惚れてしまう系」


「接触型精神操作系スキルですね。解りました入れておきましょう。」

「精神操作…まあいいや。」


「あ、あとステータス隠蔽もください。」

「うーん、ギリギリかな。ではその3点でお付けいたしますね。」


(いいぞいいぞ、これで新しい世界でウハウハの最強ハーレムが築けるというものだ。)


「では、準備が整いました。転生して宜しいですか?」

「…はい、お願いします。」

「では、次の人生では幸せでありますように。」


 こうして男性は転生を開始し、白い世界から消え去った…

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 次に男は、何故か死んだ時の姿のまま、やたら高そうな調度品のある部屋に居た。

 

 濃紺の文様のある赤い絨毯。高価そうな調度品。

 やたら高価そうなシャンデリア。ただし蝋燭ではなく電装だろう。

 まるでダンスホールを思わせる広さの何もない絨毯だけの空間。天井も2階分はある。しかし不思議な事に出入り口は無かった。


「ここは?」


「はぁ~い」


 正面に居たのは金髪の13~14くらいの少女だった。

 先ほどの女神と違い、神々しさはない。

 しかしこの部屋は先程の白い部屋と違って目に優しい気がする。

 

「ここは?」

「えーとね、今貴方は、とある自称神から転生処理をかけられたと思うのだど、

 その自称神の間と転生世界の合間の世界です。」


「ハァ…つまり転生間際って事ですね。」


(しかし女神を、自称神とはどいう奴なんだこいつ。)


「さて…貴方は選択肢無く転生する感じになったと思いますけど、今は転生処理に割り込みかけて止めてるトコです。」

「ハァ?」


(何がしたいのだろうかと彼は思ったが、先ずは神とかそれに類するような者だと考えた。)


「まあ私にできるのは転生詐欺にご注意ください。という注意喚起ですね。」

「え?転生詐欺?」


「そーよー」

「し、しかし僕は死んでしまったし、女神様は色々便宜を図ってくれたみたいだけど。」

「ふむ、ではちょっとこれから説明させてもらいますね。」

「う、うん。」


 そして、少女はホワイトボードを出して書き始める。

 

 

『こんなにも危険!異世界転生!』


1.異世界転生した人のうち、異世界で死亡する人の確率は100%

2.異世界転生した人が将来、200年以内に死亡する確率は83%

3.転移した人が同じ世界に転移する確率は150%転生してからアンデット化して、それから転生するという意味。

4.乳幼児時期に恥辱に塗れる可能性は70%

5.異世界転生は中毒になる。異世界転生したあと、パンと水だけを与え続けると、3日で再度転生を開始する。

6.TSしてしまう可能性は50%

7.異世界転生者のチート率は225%。チートを2~3個持ってるのがデフォr


「ちょまっ!まった!」

「え?何?」


「コレ…マジ?ってかネタ多くない?」

「否定はしない」


「1は良いとして、2は200年以上生きる奴がいるのか!」

「そりゃー、人間さんだけじゃないからね、転生先。」

「あー」

「てかコピペかよ、いきなりネタだなぁ」


(あ、そうだ…鑑定使えるかな?)

 彼は、ふと、チートという単語に反応して今使えるかどうか気になったので使ってみた。


--------------------------------

【失敗】データが見つかりません。

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(なんだと?)


「さて、ツカミはOKってことで、本題行こうかね。」

「ここは漫才部屋か何かなのか。」


『1.どこの異世界なのか』


「この1についてから説明していこうかな。」

「あ、始まるんですね。」


「えーと行く世界は分かってる?」

「確かE106です。」


「えっ…あそこ?」

「ご存知なのですか?」


「ご存知も何も…ねぇ。」

(何か、ねぇ。なんだよ)


「まず、E106というかEシリーズは小規模試験用世界。という位置づけなのですよ。」

「ハァ?」

「世界の規模が小さいので、ほぼ惑星のみで恒星は代用品使ってる。」

「それ大丈夫なのか…」

「つまり宇宙世紀までは保たないって事。」

「宇宙そうなのか。」


「そもそも可能性の誤差を使用して、母世界に対してオーバーライトできるかっていう試験を行ってる集団があるんだけど、その可能性世界の一つがE106。てか106だけに干渉してもなんにもならないんだが…ふむ。」


 幾ばくか悩んだ後、

「まぁ世界のことは後で考えよう。」

 前向きに放置したようだ。

 

「次!

 『2.記憶を持ったまま転生するけど大丈夫?』」

 

「え、記憶を持ったままじゃダメなのかい?」

「人生終了後、継続してやるのは不自然だよぉ。」


「不自然だろうがなんだろうが、一度目の人生の死後、その続きができるんだから良いじゃないか。」

「他の皆はそんなことしてないのに、自分だけ継続ねぇ。まあそれでも良いけど、そうなると君の親は一体どっちなの?」


「えっ」

「転生した後の新しい親に対して、宜しくって感じでやるんだろうけど、それってどうなんだい?」


「それは…」

「だいぶ失礼な話だがまぁ良いよ。問題はそれで君の精神が耐えられるかということ。」


「それは…どういうことだ?」

「決まっている。転生したとはいえ、前の記憶を持っているということは、実はアンデットみたいなものだよ。」


「アンデット!?」

「精神はやがて腐り落ちるが体は元気。腐敗した精神が削げ落ち、魂は真っ更になるだろうね、真っ黒だろうけど。」

「そんな…」


「そうやって堕ちた魂を核にして悪魔が生まれるわけだ。だからまぁ転生で記憶継続はオススメしないよ。」

「ぬうううう」



「さてさて、『3.チートってどうなの?』」

「チートにも、何かあるのか?」


「えーと何貰った?」

「鑑定と、ナデポと、ステータス隠蔽だ」


「なるほどね。テンプレだね。」

「テンプレの何が悪い…」


「いやあ悪いとは言ってないよ。で、私を鑑定した結果はどうだった?」

「……お見通しか。失敗だったよ。」


「まあ、そうだろうね。」

「やはり上位存在には効果ないのか。」


「違うよ、管理下にない者だからだよ。」

「管理下?」

「そう、ステータス管理をすると、自称神が管理下の人に対して強さをコントロールできるようになる。だから管理下の人同士でのスキル使用は有効なんだが、管理下に無い者だとコントロール不可になるわけだ。」

「はぁ。」


「で、チートだけど、自称神が人の魂を操作するためのものだから、使えば使うほどに自称神に依存していくわけだ。」

「い、依存するとどうなるんです?」


「100%依存になった時点で、その魂は自称神のモノだ。」

「なっ!」


「こうして魂の所有権が自称神のモノになったら、そいつは魂を加工して、何か作ってるらしい。良くわからないから今度調べるかなぁ。」

「か、加工!?だ、だいたい魂を支配だって!?魂を取られるって事か!?」


「そーだよー。まあ記憶継続で真っ黒になった支配された魂が欲しいって事なんだろうね。流石は女神様だね!」

「そんな馬鹿な。そんなの嘘だ!」


「嘘といえばあれだ。まず、死亡したら問答無用で転生処理が行われます。おかしくないですか?」

「え?」


「死んだら、自称神とやらが対応する間もなく転生が開始されるわけよ。で、そのカミサマは何て言ったの?」

「ミスをして死なせてしまったと…だから転生させると謝って来ました。」


「おーお詫び転生か。前にほかの人にも言ったんだけどね。

 『神はお詫びしない』んだよ?」

 

「え?」

「例えば神とやらが居たとしよう。神でなくてもいいけど、自称神で人から見て格上な存在なわけだ。」

「は、はい。」


「つまり人間から見て、羽虫くらいの存在にしか感じてないわけよ。

 で、人間は羽虫を潰したからって、大仰に謝るわけ?」

「え?え?え?」


「ミスをしたとはいえ、何故羽虫ごときに謝らなくてはならないの?」

「それは…それはなんなんだ?」


「要するに、君の魂が欲しいが為に謝ったと言う事だよ。」

「なんだそれ…魂を奪うだなんて…まるで悪魔じゃないかっ!!!」


「あとついでに言うと、今さっき調べ終わったんだけどね。君まだ生きてるよ?」

「な、なに!?」


「言ったよね。死亡したら問答無用で転生処理が行われるって。そうなれば自称神が割り込んで転生させるなんて出来ない。」

「ほ、本当に、僕は死んで…無いんですか?」


「ええ、滅多刺しだったけど全て骨に当たっただけで重要器官の損傷はあんまりない。」

「なんてこった!」


「まあ背中は酷い傷跡になるね。全治何ヶ月になるかはお医者さんに聞いてください。」

「騙されたのか!僕は!!!」

「そーだよー」


「いや、君…君が嘘をついている可能性もあるのか。」

「私がするのは、元の世界に戻すことだけだよ?契約は破棄させるけどさ」


「それで君は何を得るのか。」

「何も得られないよ。」


「じゃあ、何故僕を助ける?」

「んー道路の反対側のパーラーで、パフェ食べてたんだけどね。いきなり刺傷事件があってさ。

 うわー気分よく食べてるのに無いわー。って思ってたらだね、君の魂ひっぺがして、持ってく奴が居たわけよ。

 んで気分が悪くなったので、パフェ食べた後追いかけた訳。

 いやあ、パフェ食べ終わるのが遅かったら転生完了しちゃってたね。危ない危ない。」

 

「え、っと、理由は『気分が悪くなったから』って事?」

「そう」

「え?何その適当な理由。」


「例えるならアレよ。橋を渡ってたら、なんか目の端にダンボール箱に入った子犬が流れてきたってそんな感じ。

 で、君そんな子犬見てさ、助けようかなって思わない?

 思わない方の人?」

「川で流れてる子犬相当の理由で助けられるのか。」



「まーあれよ。チート外して記憶継承抜いて転生も出来るよ?」

「元の世界に戻してください。お願いします!!」



「うむ宜しい。まーもしかしたら、その辺歩いてたら見かけるかもだけど、そんときは宜しくね。」

「はい、有難う御座いました!」


 こうして、彼はこの広間から元の世界へと帰っていった。

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽





「さーてと~ワーム付けて、アレつけてコレ付けて…人工霊魂完成っと!

 ふっふっふ。でこの魂を回収したら、加工して一体化させるんだろうなぁ~


 で、一体化させたら強☆制☆転☆生!

 一体化させなくても、周囲に感染して強制転生!

 一体何人分の魂を合わせた超人が生まれるんだろう。た~の~し~み~♪」



 数十年後、加工した魂が全て強制転生されて絶叫する自称神が居たとか居ないとか


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