こんなにも危険!異世界!

秋月イネア

こんなにも危険!異世界転移!~自分から神とか言っちゃってる奴はたいていが痛いやつだ~

 彼が―トラックに轢かれた―そう思った瞬間、やたら高そうな調度品のある部屋に居た。

 

 濃紺の文様のある赤い絨毯。高価そうな調度品。

 やたら高価そうなシャンデリア。ただし蝋燭ではなく電装だろう。

 まるでダンスホールを思わせる広さの何もない絨毯だけの空間。天井も2階分はある。しかし不思議な事に出入り口は無かった。

 

 そんな空間に学生服を着用した少年ぽっと出現した。

 少年の主観では、いきなり転移した。

 そんなイメージだ。

 

「白い…空間じゃないのか。死んだのかな僕は」

 

 つい思わず口から言葉が漏れた。

 

「よっと、こんにちは」


 唐突に真正面から声が掛かる。今まで居なかったはずの空間に12~3くらいの金髪の外人?が居た。

 

(トラック転移、白じゃ無いけど特別な空間。ここから導き出される結論は…)


「もしかして、神様…ですか?」

「ちがうよ?」


 ワンテンポも置かず返された。

 

「え、違うの?」


(神と呼ばず、管理者とかそういう奴かな?)


 少年は考えたが答えは出ない。とりあえず尋ねるしかなかろうか。

 

「ふむ…私はそうだなーなんだろうね?」


 自分でも分かっていないようだ。

 

「あーでも分かることは一つあるよ。自分から神とか言っちゃってる奴はたいていが痛いやつだ。」

「あーいや、でも人智を超えた力やら叡智を持った存在はやはり神とか言われちゃうじゃないかな。」


 少年は内心同意したが、神という存在自体を否定したくなかったので、フォローしてみた。


「あ、でもネットで見たことある!」


「テンプレか!」

 

 少年は思わずツッコミを入れてしまった。そのツッコミに対して少女?はニヤリとする。


「まーまーツカミはOKってことで、本題行こうか。」


 一体どこの漫才なのかと少年は思ったがそれは口に出さなかった。

 

「まず、君はトラックで轢かれてーその条件で異世界転移する対象を探してた奴に転移かけられたわけよ。」


 トラック異世界転移テンプレかと少年は高揚しながら言葉を挟む。


「じゃあ僕はこれから異世界に転移を?チート貰えるのかな?」


「まーまーまー。最後まで聞いてよ。」

 

 それもそうだと思って少年は先を促した。

 

「で、まー私の知覚範囲内めのまえで転移が発生したものだから、強制割り込みをかけてこの部屋にとりあえず送り込んだわけ。」


(えっ、つまり無関係者?いやこの世界の土地神様か管理者なのかな?)


「そういう訳で、割り込みを解除すると、恐らくテンプレな白い空間に呼び出されるか、問答無用で異世界転移になってしまうわけだけど。」


(異世界に行くとなれば、この方からも餞別でチートとか加護とかスキルとか貰えたりするのかな。)

 少年が異世界の冒険に思いを馳せた。

 

「まー今なら転移をキャンセルできるわけで、元の世界に戻れるけど。どうする?」


(む、戻れるのか。いやしかしトラックに轢かれた世界に戻ってどうするというのか。)


「それ、戻ったら死んじゃうんじゃ…」


「まー、お目覚めは病院のベッドだろうけど全治1~2日の軽症ってとこだよ。」


 それなら問題は無さそうだなと少年は思った。

 

(つまり、僕の判断次第で元の世界か―または異世界かが決まるわけか。)


 やや考えこんだ後、少年は答えた。

 

 

 

「冒険してみたい。いや異世界に行ってみたい!」

 

 どうせチートを貰えるだろうという目論見もあって異世界行きを決めた。

 

「ふむ…君がどうしてもと言うなら仕方ないね。餞別に―」


(キターーテンプレチート!)


「予習をしてみよう」


 ガクっと少年は体制を崩した。

 

「ちょ、そこはチートとか加護じゃないですか?」


「なんでそんなもの上げないといけないのさ。」

 

 御尤もな話だ。彼女はおせっかいにも元の世界に戻れるように配慮してくれたというのに、厚かましくもチートを期待したのだ。

 

「あーうん。すいません。」


 

 彼女はコホンと咳払いをすると、何処からともなくホワイトボードを取り出した。

 

「さて予習をしようじゃないか。」


 そう言うとホワイトボードにこう書いた。

 

 

 

『こんなにも危険!異世界転移!』

 

 

1.異世界に転移した人が異世界で死亡する確率は99%

2.異世界に転移した人が将来200年以内に死亡する確率は95%

3.転移した人の20%は異世界転移しなければ死ぬことはなかったと言っている。

4.凶悪犯が異世界転移する確率は、人口の犯罪者比率に比例する。

5.25年間白い空間に居た人が異世界転移すると、だいたい発狂している。

6.健康な成年男性にカップラーメンを1つだけ与えて異世界転移すると98%の確率で死亡する。

7.米国ではトラックでの異世界転移をs


「ちょちょちょ待った!」

 ここまで書いてようやく少年がツッコミを入れた。

「え?何?」

 

「色々おかしいでしょう!」

「どこが?」

 

「ま、まず1!1%は異世界から帰還してるってことだけどそうだよね?」

「まあ、そうだね。」


「次に2! 5%の人は200年経っても生きてるのかよ!!」

「普通に寿命が伸びた奴や、まぁ石化が死亡じゃないって事にしてるから、ソレも含む。」

「ちょ石化!」


「転移した人の20%って死んだのにアンケートに答えてるの!?」

「まーアンデット化しちゃったり、ゴーストになったりした人の回答で、普通は無回答だからねぇ」

「死んだら答えらんねーよ!!てか他もツッコミどころ満載つかコピペじゃねーか!」


「異世界転移のコピペは無かったよ!」

「そっちじゃネーヨ!!」


「まーまーまー。さて冗談はさておき」

 少女はホワイトボードの内容を一旦消した。

「冗談だったんか!」

 少年はツッコミ体質に変えられてしまったようだ。

 

「じゃ改めて…」

 キュキュと黒字で記載する。

『1.誰が転移させるのか

 2.何のために転移させるか


「まず誰が転移させるか―だけど、コレはどんな存在でもどうでもいい話で」

 「良いのかよ…」

「うん、どうでもいいよ。問題は善良かどうか―だよ。」


「善良?」

「そう、君にとって最良の結果になるように取り計らってくれるのか、それとも転移先の世界にとって最良の結果になるのか。という違いはあるけどそういう事よ」

「ふむ」


「まぁ、善良な可能性はほぼ0だけどね。」

「えっ!?」


 驚きの確率に少年は思わず声が出た。

 

「ソイツの都合で、無関係な奴を転移する…どこに善良な要素が?ただの拉致案件っしょコレ」

「で、でもほら『やっちまったお詫び』とか」


「あ~。アリ一匹潰した程度で、何をお詫びするというのか。」

「え、アリ?」

「自称神だかが人間と対等だとでも思ってたの?丁度君がアリを潰して、そのアリに土下座して謝る?無いでしょう?

 ソレと同じ。ましてや、お詫びにチート貰うとか。それって本当にお詫びだと思ってたの?」

「え…違うの?」

「アリ如きになんで謝った上にチートをあげないといけない?」

「あーうー」

「つまりチートをあげたいっていう意思があって、それを、さも受け取っていただく風にしなきゃいけないときにそんな態度を取るんだよ。」

「えっえっ?」


「そうだな。君と転移させる奴との関係を、簡単説明するとだ、

 アリをそれぞれの虫カゴで飼っていて、それをピンセットか何かで捕まえて、隣の虫かごに移す。

 この時のアリが君で、ピンセットを使ってるのが転移させようとしてる奴だ。」


「うわ~」

「ちなみに、力関係で言えば君と私も同じようなもん。」

「げっ」


 少年は絶句した。つまり彼女は、その気になれば少年を捻り潰す事など容易という事だ。それもアリを潰す程度の労力なのだろう。


「で、2の何のために転移させるか、だけどコレもどうでもいい。愉快犯だろうが目的があろうが依頼されようがね。転移させられるのには変わりないからね。」

「確かに。っつかどうでもいい話というのはわかった。」

 

「次、

『3.何処に転移させられるか、

  3-1 どんな世界?

  3-2 その世界の何処?』」

  

(何かの授業みたいだ、ノートほしいな。)

 そんな益体のない事を考える。

(あれ?)

「こういう場合って、剣と魔法の世界なんじゃないの?」

 

 だいたいテンプレだとそうだろうから、そのように考えるのも無理は無い。

 

「それ、誰が決めたの?」

「あっ…」


 そうである。剣と魔法の世界だとか、スキルがあるとかレベルがあるとか。そんなものはこの段階では決まっていない。


「そうだね。まあ剣と魔法の世界だったり、神話の世界、原始時代もあれば元の世界みたいな情報化社会に近未来や宇宙時代の世界。物語の世界が具現化したような世界。植物だけで動物は居ない世界。核戦争後の世界。電脳仮想世界。色いろあるね。」

 

「えっ…まじ」

 

 剣と魔法だけだと思っていたらしい。

 

「そもそも。魔法が使える世界というのが私には気に入らないねぇ」

「え?なんで、なんというかすごそうで面白そうじゃないか。」


「んーというか魔法って何だい?」

「魔法は、魔法じゃないか。火とか水とかで攻撃したり回復したり。」


「んー~~~エネルギー源は?」

「えーと、魔力というかマナというかそういうのじゃないの?」


「科学文明な君に説明すると、定義されていないエネルギーを仮にマナとかオドとか魔力とか仮定しているのよ。」

「え…いやだって不可思議な効果を引き出す力なら、そう云うんじゃ。」


「ほら君が今言ったとおり。『不可思議』な力なんだよ。つまり

 『なんだか良くわからない力』を使って『原理はなんだか良くわからない』けど『分かりやすい効果』を得る方法。

 って事だね。」

「いや、それを体系づけたのが剣と魔法の世界なのでは?」

「だから、その世界の人も『なんだかよくわからない』から魔法って言ってるのよ。

 あー悪魔とか魔族を基にした力も魔法って言うけどね。まあ定義の問題かな。」


 その説明を聞いても、やはりなんだかよくわからなかった。

 

「でもなんかほら、面白そうじゃない?」

「逆に気になって仕方がないよ。」


 考えている感覚が違う。恐らく感性の違いなのだろうと少年は思った。

(あれ?じゃあ今この世界とかい世界転移を割り込んだとか、どういう力なんだろう。)

 流石に今聞く気にはなれないので後で聞こうと思った。

 

「ともあれ、どこの世界か、何の為かは変更できないだろうから、ほとんど博打だね。怖い怖い。」

「うーー怖いこと言わないでよ」

 

「次は重要だよ重要。」

「うん?確か『その世界の何処?』だっけ。確かにラストダンジョンの中とか、砂漠の真ん中は勘弁してほしいね。」


「はーヌルい。ヌルいねぇ」

 少女は呆れたように言った。

「何がヌルいっていうのさ!」


「例えば、転移先世界で死んでもらいたいだけ。っていう理由ならば、溶岩の中、1万メートル上空。土の中、海の中、海洋のどまんなか、雪山、竜の目の前ーなどなど危険極まりない場所はいっぱいあるよ」

「転移直後に即死!?」

 

 

 

「そんな馬鹿なとは思うだろうけど、この先白い世界?とやらで自称神と話すなら、出来る限り街の側にしてもらうんだねぇ」

「そうする…」

「間違っても、王様の上とか処刑台の上とか、異性のお風呂場とかトイレの中とかじゃないように念を押すんだよ」

「なんでそんな悲観的な場所ばっかり言うのさ!!」

「そこに転移しない保証は?」


「くっ無いのか。保証」

「だからせいぜい、自称神様にお願いするんだね。」

「ぬぐぐぐ」


「次は、

 『4.異世界異文化交流

  4-1 翻訳について

  4-2 病気について』」

  

「ん?言葉が違うから翻訳というか異世界言語については必要だと思うけど、病気って何?」

「御存知の通り言語はまあいいね。

 病気か、そうねぇ~

 イギリスの映画で異星人。これも異世界交流ね、で、地球が異星人に侵略されるわけだけど、何かが異星人に起こって撃退できたわけだけど、その何かって言うのが風邪なわけだ。」

 

「はっ?風邪?」

「全く抗体の無い未知のウイルス。しかも繁殖力の高いインフルエンザなんてもんが異世界で蔓延したらもう…どうなるか。」

「そ、それは…」

「逆もあるわけ、異世界特有のよくある病気にあっさり感染する可能性もあるわ。

 抗体というのは、誕生したての赤子のうちは母親からの抗体が生きているし、その後徐々に自分の抗体を増やしていくわけだけど

 そんなウイルス抗体の歴史をまったく継承せずに転移なんてしたら

 即感染デスネ!」

「うひゃーーー。抗体!異世界の抗体をください!!!」

「神様にお願いする項目が増えたわね。」


「異世界転移めんどくせえ!」

「今とは異なる世界だからねぇ仕方ないね。」


「次、『5.耐性』」

「耐性?」


「あーね…例えばさ、当然のごとく1G状況下だと思ってるけどさー

 1.2Gとか0.9Gとかならまだ誤差の範囲よね。」

「Gって重力か!」


「うん、そう。これがさ10Gやら100Gだったら…どうする?」

「どうって死ぬしか無いじゃない」


「ちゃんと1G状況下でお願いしようね。」

「神さまへのお願いごとが増えてしまった。」


「でも重要だから気をつけてね。」

「うん。怖いな異世界。」


「で、耐性の続き。気圧やら酸素濃度と大気の構成。ちゃんと生きてられる範囲内じゃないとね。」

「酸素濃度…?大気?」


「たとえば主成分がヘリウムとかだったりしたら大変でしょう?」

「酸素とは重さが違うような…」


「まーまーまー例えばの話よ。気圧も大気比率も生存環境かどうかもお願いしようね。」

「怖すぎる!」


「ちなみに世界の構成が反物質でできてましたーって言ったら転移した直後終わるからね?」

「反物質!?なんぞ?え、どうなるの?」

「たぶん…太陽系が吹き飛ぶレベルの崩壊?やったこと無いしわからない。」

「ぬおぉ…」


「一応構成要素も聞きましょうね。とはいえ、嘘つかれてたら終わりだけど。」

「そっか嘘もあるのか。」


「『6.現地社会について』」

「現地の社会ってそれはあんまり気にしちゃダメなんじゃ」


「黒髪黒目は悪魔の証ですとか言われてたらどーするよ」

「え…」


「男は夜外を出歩いてはならない社会だったりしたら?市民権が無いなら即刻奴隷落ちだったら?」

「え、なにそれ…おにちく?」


「通常の異世界コミュニケーションと違って、郷にいれば郷に従え的展開になるのは仕方ない。やってほしいことが文明的刺激ならその辺対応して送り込むとは思うけど、君が不幸になる様が観たいとか、そういう事もあるからね。」

「異世界ってだけで、すんげえハードル高いんだな。」


「はい、自称神様へのお願い事項。公序良俗に反しない格好や身分。だね。」

「異世界ェ~」



「『7.子孫繁栄』」

「えっ…」


「地球上だとさ、普通にハーフできるけど、それはやはり人間同士だからなわけよ。」

「うんうん」


「異なる進化を遂げてきた人間によく似た種族が居たとしても、それはやはり他の種族なんですよね。同じ世界でも犬と人間じゃ子供作れないでしょう?究極的にはDNAという形式をとっているかも怪しいし。」

「え、マジで…」


「だから、もし、もし子供が出来るようなことがあったら」

 「ごくり」

「それはつまり現地の人間の祖先は地球からの転移者って事になる。」

「え、つまり純異世界人類とは、どうやっても子供が出来ない?」


「まー何らかの手段はあるかも知れん。魔法的な。つまりなんだかよくわからない手段で。」

「曖昧すぎる…」



「『8.帰還方法』」

「ん?帰れるの?」


「あ き ら め ろ」

「…」


「いや期待するなよと言うこと。」

「なるほどね。片道切符なわけだ。」


「さて、私が思いつく限りの事は言ったが。あと何があるかねぇ。」

「チートについても考えてみたかったけど、まぁいいや。」


「ふむチートか。ほれ言ってみろ。『ぼくのかんがえたさいきょうのちーと』を」

「酷い言い方だ!」


「インスタント最強なんて、どう考えてもオカシイぞ。」

「インスタント!?」

「お湯をかけて3分経ったら最強のできあがり。ハイ!」

「うわー」


「それでハーレム!サイコー!無双バンザーイ!蹂躙蹂躙!ってやるんでしょ?」

「身も蓋もないな。」


「でも楽して強くなりたいからチートなんて欲しがるんでしょう?」

「なんという否定できなさ加減。」


「まあ、私からなにが出来るものはないよ。自称神様と相談するんだね。」

「うん。」


「さて、予習も終わったし、自称神へのお願い事項を纏めてみようか。」


1.転移先は街のすぐ近く(※必須)

2.言語について融通はありますか?

3.異世界の抗体をください!(※必須)

4.1G状況下でかつ気圧と大気成分が地球相当の世界でお願いします。(※要確認)

5.公序良俗に反しない格好や身分(※必須)


「こんな所かな。まああとは契約料は何かくらいは入れても良いね。」

「う、うん。」


「さて、予習も終わったしこれでお別れかな。君の異世界冒険に幸あれって奴だ。がんばってね」

「あ、あの…」


「なんだい?」

「いややっぱ異世界行き、無かったことにできませんか?」

「え?」


「酷いですよ!さんざん脅かして!!」

「いや、そんなつもりは無かったんだけど。」


「もう怖すぎて異世界なんか行けないよ!」

「あーうん。そうだね。」


「ほんとにもーー安易に冒険したいとか思ってすいませんでした!!!!」

「あ、ハイ…」


「じゃあ、元の世界に戻すよ?」

「お願いします!」


 少年は強く強くお辞儀した。

 

「あ、そうだ…貴女から見て、アリレベルの僕を、なんで助けてくれるのですか?」

「あーそうだね。

 目の前で子猫が轢かれそうになっていた。

 私には余裕で助けを入れられるし危険もない。

 そんな時、深くは考えないよ。咄嗟に助けに入ったんだ。」

「そうなのですか。」

「なんだい?自分がなにか特別な人間だとでも思ったのかい?」

「いえ、そうじゃなくてその…ありがとうございました!」


 少年は、そういえば助けて貰ってありがとう。は言わなかったなぁと思った。

 

「いえいえ、どう致しまして。まートラックには気をつけなよ。」

「はい!」


「じゃあお別れだが。あー元の世界だと、私もそのへん歩いて回ってるから見かける事もあるだろうけどね。」

「見つけたら声をかけさせてもらいます。」

「うむ、良きに計らえ。」


 その言葉と共に少年はその部屋から掻き消えた。

 

「ふーー」


 彼女はポリポリと頭をかいたあと、その部屋から出た。

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


異世界転移実践編


△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 かの金髪の少女は、白い部屋に来た。

 

「ようこそ…うん?」

 成年男性と思われる荘厳そうな衣服を着た者が、想定の人物が来なかったことで首を傾げた。

 何か手違いでもあったのかと。

 

「貴方は誰?」

 人間の心など見通せるはずの自分が、その少女の心を読むことが出来なかった。

「私は皆から神と呼ばれている存在です。」

 

 特に抑揚なく答えた。

 

「そうか、なら死ね。」

 

「え…」

 男はソレ以降答えられなかった。

 否、考えることすらできなかった。

 

 少女が突然動いたと思うと自称神の頭を握りつぶし、体も小さくまとめ上げ直径3cmくらいの玉になるまで粘土のように叩いて圧縮したのだ。

 そしてソレをぱくっと食べた。

 

 自称神は喰われて消滅した。

 

「あ、しまった。チェーンソーを使うべきだったか。」


 そう独り言を呟いてから転移先世界を見る。

 

 少年の言う「剣と魔法の世界」だった。

 面白く無さそうだったので、魔力?なるものを一年で1割りづつ減少するように調整をして元の世界に帰っていった。

 将来魔法が使えなくなるほど魔力が減少するだろう。

 しかしソレはその世界のお話であり、元の世界には関係なかった。

 こうして異世界からの干渉問題が一件終了した。

 

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