ああバブルは遠くになりにけり。
自分のような幼少期にバブルをうっすら知っている程度の世代や、バブルを懐かしむもっと上の世代の人達もいるでしょう。
ただ、もはや時代は21世紀を十年半ばと過ぎ、今の十代二十代の若者達にとってはバブル時代は遠い昔の話。
言ってしまえば「歴史上の話」になりつつある。
お笑い芸人でバブルネタでブレイクする人なんかも最近現れたように、時の流れと共に、バブル時代当時やその崩壊後によく語られた「バブルは異常な時代だった」とか「ディスコで踊り狂っていた若者達のなんと退廃的なことか」といった評価も一段落し、むしろ今はあの時代を懐かしむ時代になってきたのかもしれません。
今の私や若い世代の多くは、羽振りの良かった時代を知りません。
失われた十年、二十年という時代に育ち、何一つ希望に満ちた日本を見ていない。
そんな私達にとっては、バブルはいわば「狂っていたかもしれないが、嘘みたいに華やかな日本」という、バカにしつつもちょっぴり魅力的にも思える時代なのかもしれません。
さて、そんなバブル時代が21世紀の現代まで続いていたら?
というお話がこの作品。
(以下 本文より)
原材料数十円が、どこかのブランドの作ならばあっと言う間に数万円。それでもこの「日本」では安価な流行りものと、人気が更にあがる。すると、人気ブランドなどは品不足で値段が上がる。また、ブランド達が競う微妙な差異の中に希少性のある物が出て来ると、また値がつり上がり……
人々は——この手の六本木で酔いつぶれるような連中ならなおさらに——それを求め流行はさらに加速する。皮肉を込めて、かつてのオランダの先例を引いて、チューリップバブルとよばれているこのブーム——経済。
この「日本」に相応しい、実質の無い、経済の為の経済であった。
……とまあ、こんな世界の日本なのです。
良いですね。実にバブリーでw
ただ、作風は非常に硬派で大人びており、バブル知らない世代のラノベ層にはとっつき難さがあるかもしれません。
きっちり完結しているので、じっくり読んでみたい方向け。